11話 無礼な試験補佐官を圧倒的実力差で叩きのめす

 ――試験開始。


 アルカは通常の形態(モード)で剣を構え、踏み込み。


 一気に横柄な補佐官との距離を詰める。


「ほえ?」


 補佐官が素っ頓狂な声を上げる。まるで『気が付いたら目の前まで距離を詰められていた』とでも言わんばかりの、すごく真に迫る演技だ。ここへ来てまだ実力を隠すというのか。凄い余裕だ。


 補佐官がとっさに構えた(風に演技している)木刀に、アルカが斬撃を叩き込む。


「ほぎゃあぁーー!!」


 補佐官が、まるで嵐の中の落ち葉の様に、すごい勢いで吹っ飛ばされていく。


 ……なぜか、妙な手応えのなさを感じる。


 あり得ない話だが、アルカが補佐官を圧倒している様だ。もちろん、そんなことがあるわけがない。


 そんなことがあったら、まるで、補佐官が『実力差を全く分かっていない馬鹿』みたいではないか。


 もちろんそんなはずはない。補佐官は僕らよりも上の実力差。決して油断してはいけない。


 ……と思っていたのだが。


 補佐官が、倒れたまま起き上がってこない。というか、泡を吹いて気絶している。


「え? こ、これは一体……?」


「そこまで! この模擬戦、ナット&アルカペアの勝利とする!」


 へ?


「おめでとう。2人の圧勝だ」


 試験監督さんはぱちぱちと手をたたいている。


「で、でもあの人はまだ実力を隠し持っていたんじゃ……?」


「そんなものはない。君たちの方が、あいつより遥かに強い。そしてあいつは君たちの実力を見抜けなかった。それだけだ」


 そうだったのか。


「……あいつは才能だけはそこそこあるんだが、調子に乗りやすい奴でな。いい機会だから、君たちにちょっと懲らしめて貰おうと思ってな」


 と、試験監督さんがウインクしながら補佐官の方を指さす。


 そうか、何度も『くれぐれも全力で行けよ』と念押しされたのはそのためか。

 

「利用して悪かったな。あいつにもいい薬になっただろう。感謝する。そして、君の実力はゴールド級冒険者を遥かに超えている。文句なしに冒険者試験合格だ」


「……やったぞ、アルカ!」


「やりましたね、マスター!」


 僕とアルカはハイタッチを決めて冒険者試験合格の喜びを分かち合ったのだった。

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