いつかの二人の旅物語

とんぼとまと

第零章 彼が夢から覚めるまで

第1話 プロローグ

 大昔の人々は争いが大好きだったという。


 指先一つで命を奪う凶器や、街一つを塵に変える道具を創り出したと言われている。


 更に彼等の好奇心は留まることを知らず、空想の化け物を世界に生み出した。争いは星中に広がって、大勢の命が失われたそうだ。


 彼等は人間の尊厳すら弄んだという。


 魂を歪め、その想いすらも、殺戮の力に変えてしまったと言われている。


 その終末には人の形をした化物を生み出した。恐るべき力を持った化け物達は残った人間を殲滅したそうだ。

 

 けれども、生き残った一握りの人間は希望を失わなかった。世界を旅して、世界をやり直す術を探して、そして最後まで抗った。


 最後の最後に、どうにかして人間は世界をやり直してしまったのだ。


 そんなおとぎ話が今でも残っている、ある種の教訓話だ。どうして、そんな話が今も伝えられているのか。


 残念ながら人々の悪意は今も世界に残っているからだ。


 救いようがない話だが。魔獣と呼ばれる化け物は、今でも確かに、この世界に存在していた。


 

 だから私も魔獣と戦うと決めたんだ。


 その日の戦いは、とても厳しいものになると覚悟もしていた。


 迫り来る魔獣、仲間の危機、逃げるなんて選択肢はない。


「眼前には強大なる敵、ここは生と死の境界」


 私はそう呟いた。

 それが最善だと思っていた。


 けれども、どちらにしても救いようがなくて。どうしようもなく後悔をしてしまった。


 だから忘れられなかった。


 彼女と旅に出るまでは、本当にずっと苦しかった。

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