第7話 当事者

 通院中の西谷大地は主治医と話している。西谷大地の今の言葉に対して、主治医は安心が出来るように答えていく。

「小説の公募に間に合いたいのです」

「西谷さん、あなたは頑張り屋ですね」

「けれども、幻聴がひどいのです」

「焦らず、ゆっくりと行きましょう」

 西谷大地は通院を終えて、自宅に帰ると両親と家族会議となる。

「大地、幻聴を治してからではダメなのか?」父親の言葉。

「お父さん、自分は小説が書きたい」

「大地? 無理をしなくてもいいじゃない?」母親の言葉。

「お父さんとお母さんは何もわかっていない!」

 西谷大地は家族会議を途中で終わらせて自分の部屋に戻った。

 携帯電話にひとつのメッセージが。

「大地、私は大地とまた文学活動をしたい」

 塩田恵の短いメッセージ。

 西谷大地は涙が止まらなくなる。

 幻聴が聞こえ、苦しくても、西谷大地は立ち直りたい。今日一日で色々な言葉に大地は思うのだが、当事者としての苦しみには、いつでも周りの声があった。

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