第7話 筋トレの成果

前回のあらすじ


剣術の先生は凄い人だった。


~~~~~~~~


あれから半年。僕は未だに剣術の指導を受けることなく、体作りに励んでいた。前世の筋トレの知識もあり、順調に筋肉を付けることができている。神様からの恩恵の力もあってか、すでにそれなりの体になっていた。同年代の子と会う機会がないので比べられないが、恐らく異常な成長速度だと自分でも思う。これも恩恵の影響なのかな。


今日は、ユラが来る日だ。僕はいつも通りに動きやすい服装で庭に向かう。すると、ユラが素振りをしながら待っていた。


(いつ見ても惚れ惚れするなぁ。)


ユラはこうして、素振りをしながら待っていることが多い。僕はユラの素振りを見るのを密かな楽しみにしている。僕も早く剣を振りたいなぁ。


「お、来たな。」


僕に気付いたユラは素振りをやめ、こちらに歩み寄って来る。


「こんにちは、ユラ。今日もよろしくね!」


「おう!。今日はハクトに朗報があるぞ。」


「朗報?」


「そうだ。ハクトには今日から剣術の初歩を教えていこうと思っている。」


「本当に!?」


「ああ。すでに6歳とは思えない体つきになってるからな。本当に王族はすごいよ。」


いくら王族とはいえ、6歳と半年でこの体つきはおかしいのではと思う。やっぱり恩恵の影響が大きいのだろう。チート万歳!


「それで、初歩って何から教えてくれるの?」


「まずは剣の握り方と振り方。その後には素振りの仕方と型を教えてやる。これからしばらくの間はこれまでのトレーニングに加えて、素振りも取り入れるからな。」


「はい!よろしくお願いします!」


僕が元気よく返事すると、ユラは微笑ましいものを見るような表情で


「ハハハ!ハクトは本当にいい意味で王族らしくないよな。」


「またそれですか!?。僕だって誇り高きリンガル王国の王族なんですよ!。」


「知ってるけどさぁ。普通はそんなに素直に返事したりしないぜ?。大抵の貴族は常に見下すような態度で、イチャモンつけたりするもんだ。」


「なんでそんなことをしないといけないんですか。そんなことしてたら、時間がもったいないのに。」


「本当に変わってるよ、お前は。」


そう言ってユラは吹き出すように笑いだした。僕はいたって真面目なのに。失礼なやつ!


「それじゃあ、実際に剣術の稽古に入るぞ。まずは剣の握り方だ。剣を握る時は、常に力を込めるんじゃなく、斬る瞬間に力を込めるんだ。そうすることで、、、、」


そうして、ユラは剣術の基礎について、丁寧に説明してくれる。それからはあっという間に時間が過ぎていった。気付けば終わりの時間で、最後に実際に素振りをしてみることになった。


「よし、じゃあ今日教えたことを意識しながら素振りしてみろ。といっても初めから上手くやれとは言わん。とにかく剣を振る感覚を知ってくれればいい。」


「はい。やってみます。」


僕は今日ユラに教わったことを思い返す。


(力まず、斬る瞬間に力を込めて、かと言って、抜きすぎると勢いが出ない。目標に対して真っ直ぐ...)


意識を集中していく。


(フゥー。よし、大丈夫だ。いける。)


そうして剣を構えた。そして振り上げ、勢いよく振り下ろした。


カンッッッ!!


剣先が地面を叩く音が庭に鳴り響く。


(は、恥ずかしいぃぃぃぃ)


ユラは大きな声で笑っている。


「ハッハッハ!。最初は誰だってそんなもんさ。よく集中できてたと思うぜ?」


「うーー。もう1回だけ!もう1回だけやらして!!」


「時間がねぇからもう1回だけだぞー。」


「うん!ありがとう。」


僕は改めて集中する。


(なにがダメだったんだろう。ちゃんと意識はできてたんだけどなぁ。ユラみたいに綺麗に振れない。たしかユラはこんな感じで...)


僕は何度も見てきた、ユラの素振りをイメージする。剣を構える、振り上げ、勢いよく振り下ろす。


ブン!!!!


剣は地面を叩くことなく、ピタリと止まる。


(……!!!。こいつは間違いなく化けるな。)


ハクトの見せた、拙いながらも見事な素振りに、ユラは無意識に口角を上げる。


(うーん。さっきよりはマシだけど、ユラの素振りに比べると振れてないのと変わらないな。)


剣を置き、頭を捻っているハクトを見て


(今ので喜ぶでもなく、すでに改善点を考えているのか。こいつぁカイセルのやつをも超える逸材かもな。)


「それじゃあイザミナ、今日は城に戻ろうか。ユラ、今日はありがとう!またね!」


「おう!またな!」


(これは、自主トレーニングの項目が増えるなぁ。)


ハクトはウキウキで帰路に着くのであった。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る