08




 ビーッ!


「つぐちゃん、お疲れ様。残りは脳筋二人組だけだし、サクッと殺っちゃおっ」

「ったく、人使いの荒い奴だよ全く」



 好き好んでそれに振り回されているのだから世話ない、と言えばそれまでだが。紅蓮は双子兄を屠ったナイフにチョークを塗り直すと、次のポイントへと走った。関の事は蒼崎が追跡しているから任せるとして。



「ケンジの居場所、分かりそう?」

「……いや。あの脳筋は、おびきよせた方が楽かもな」


「ん、任す」


 こちらを信頼しきった声に、見えていないのは分かっていても頷きを返す。


「つぐちゃん」

「ん?」


「俺はずっとつぐちゃんと一緒にいられたら、それでいいな」



 いきなり何のことだ、と眉を寄せるが昔からアオにはこう言う所があると紅蓮は思った。たまに蒼崎はどうしようもなく不安定になって、紅蓮の腕に縋って子供みたいに泣く時がある。それは決まって、紅蓮が実戦でかすり傷だの打撲だのを負った時なのであって。お互いにお互いが一番の弱点である事、その危うさを紅蓮は良く知っていた。



「……どんな状況であれ、俺の刃は鈍らない」


 お前を置いて死ぬつもりはない、という意味をこめて言葉を落とす。


「まあ、今日は模擬戦だからラバーナイフだし、刃ないけどねっ!」

「………」



 時折、本気で殺してやろうかと思う時もあるが。



「っと、はんぞーから連絡。召集命令が出たから十分以内に終わらせろってさ」

「楽勝」



 こちらにも相手にも、狙撃手はいない。姿を晒せば、肉弾戦で片を付けるだけ――



「ひゃっほぉおおい!」



 空から降って来た銃口が、陽の光を浴びて黒く美しく輝いた。




 *



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