第42話

「久しぶりにのんびりできたな」

 

そう思い、伸びをしながらエントランスでセツナが帰ってくるのを待つ


すると、肩を叩かれた


「ねぇねぇ、お兄さん。今暇?」

「うわっ、ロリが逆ナンしてきた。すみません、10歳以下お断りです」

「ちゃんと、10歳以上だわっ」


そこにはカリナとシズカがいた


「お前らいつの間に仲良くなったの?」

「シンパシー?」

「はぁ」


あっこれ、一方的なやつだ

前回もそんな感じだったし、そんなすぐに仲良くなるようなものじゃないか


「それでリーダーに相談があるんだけどー」

「ん?なんでも言ってみろ。全部断ってやるから」

「それはひどいよ・・・まぁ、相談があるって言ってもシズカのことなんだけどね」


俺はシズカに目をやると首を縦に振り、事実だと悟る


「聞こうか」

「あ、うん。シズカが仕事辞めたいらしいのね」

「あぁ、却下だ」


俺は即答し、シズカを見る


「俺はお前を手放す気はない。諦めろ」


俺はそう言い放つ

突き放し、絶望させるように


「一応これでもホロ家の人間だ。絶対に逃がさない」


最悪だな

シズカはおそらく心底絶望しているだろう


確か、あいつには夢があった

今度は俺が否定する番になるとはな


その言葉を聞いたシズカは何処かへと走り出してしまった


「はぁ」


ニヤニヤしているカリナをキッと睨みつける


「なんだ?」

「なんでもなーい」

「ほほう?ちょっとお前、訓練付き合え。体鳴らしときたいからな」


カリナはハハンと笑みをまさせる


「自分より小さい子をわからせようとしてるー。変態だー。でも、いいよ。私も体が思ったように動かないところあるし」

「よし、弾は激痛弾でいいな」


注)激痛弾・・・名前の通り、当たると実弾より激痛が走る。しかし貫通はすることがないため死にはしない


「いつも通りだねー」

「体づくりならシズカのがお勧めだぜ?」


寒気と怖気を隠しながら地獄仲間を作ろうとしたが


「嫌。シズカ、鬼畜じゃん」

「お前にだけみたいなところあるけどな」

「やだー。私たち仲良しこよしだよ?心外ー」


俺達は地下訓練場へと消えていったのち、この世のものとは思えないほどの音が鳴り響いていた



俺達は、地下訓練場の売り場で激痛弾を貰い

指定された部屋に入ると、ホログラムが発動した


「荒野を選択したけどこれでいいよな」

「うん。どうせこれからなる狩場はこんな風になるし。私が向こうの壁を触ったら開始ね」


カリナは空気を置いていき駆け抜けて、反対側にある壁まで到達し、


壁を殴り飛ばした


「殴り飛ばす意味あるか?」


本人がいたら、気分と答えるだろう


俺は脳を刺激させ、意識を加速させた

そうしてようやくカリナの姿に銃口を向ける


少しズレたな

俺は修正し、銃口を合わせる


やっぱり昔とは体が違うせいか精度が落ちている


そう思いながら、銃弾を1発も無駄にしないように心がけて距離を近づけようとするカリナに乱射する


しかし、カリナは軽い動きで乱射した銃弾を避ける


銃弾とほぼ同じ速度で動く

頭のおかしいことがカリナにはできる


前回は体作りも良好で、体力が尽きることはなかったが


今回は?


そのことで油断してしまったのか一瞬だけ意識が乱れる


その隙を突き、右手に持っていた拳銃を俺に向ける


俺は紙一重で躱しはしたが、これが魔銃であったのなら俺はすでに負けた


俺はすかさず、弾を乱射する

カリナは百発百中の弾を全て避けるという矛盾こなしながらだんだん近づいてきた


意識を加速させる脳力は手術というリスクを乗り越えて得たものだが、

使いすぎると気絶するというデメリットを除けばかなり使いやすい部類の能力とも呼べる力


しかし、意識をゴリゴリと削られる

脳に負荷がかかり過ぎることもあり、この身体では神経がまだ対応しきれていない


「最近怠ってたしな」

「こっちも体力たりてない」


敵は待ってなどくれない

気づくと近くまで迫っていた


カリナは、岩から上半身を出して小さい体の重心を後ろに回し、持っている二丁拳銃で弾のパレードを起こす


俺は全ての弾を撃ち落とすことに意識を持っていこうとすると、距離を寸前まで詰めようとするカリナの姿を捉えた


「舐めんなよ。カリナ」


俺は銃口をカリナの撃った銃弾ではなく、カリナの頭へと乱射する


カリナは少し驚いた顔をしつつも、その射線を冷静に反応し、身体を捻って躱そうと身を明後日の方向へと投げ出す


俺はカリナの撃った激痛弾を無視して空中にいるカリナに銃の反動を利用して、いつもでは考えられないスピードでカリナに近づいた


カリナは空中にいても攻撃を忘れずに弾を飛ばしてくる


俺は即座に持っている銃をカリナに投げ捨て、しゃがみ地面スレスレを走り


カリナは投げた銃を対処するのに精一杯で俺が勢いのままぶつけた蹴りの対処を怠り、食らってしまう


カリナは痛みに耐えつつ、二丁拳銃をこちらに向けて笑っていた


対処できていないように見えたのはブラフか?!


俺は懐に隠していた激痛弾装填済みの拳銃をカリナに向ける


二人は互いの弾を避けながら、弾を惜しみなく乱射する


俺ら二人は前回、ゲームでいうところの中衛をこなしていた


前衛、フライ ゲート

後衛、シズカ クーシャ


と言った感じだった


カリナは足が速くその上、スラムで培った勘がかなりいいためためサポートや射程管理が上手く、後衛を上げるか前衛に上げるかの判断が得意だった


後衛も前衛もいけるからという理由でなった俺とは全く違う天性の才能があった


この距離管理はかなりきつい


脳を弄られているためなんとか互角には戦える

しかし、決めるはずだったため激痛弾を無視したのがかなり痛い


体を鈍らせる


今すぐに打開が必要


・・・・これでいこう


俺は明後日の方向に走り出す


「え?」


カリナは射程有利を取り戻そうと追いかけてくる


俺の脚ではカリナの脚に対抗することなど不可能

後ろから何度も何度も弾が横切る


カリナの追いかけながらのエイムは酷い

焦りもあるだろうが本当に当たらない


それが前回の記憶


「こんなに正確だったか?!」


俺はギリギリを通る弾に焦りを覚える


「私だって毎日修行してるのよ。あと銃を握ったのが前回よりかなり速いからそのせいかも」

「なるほどなぃーーー!!」


俺はホログラムであるはずの岩を蹴り、カリナの空中を舞う


カリナは即座に二丁拳銃の銃口を俺に向けようとしたが、俺は天井に向け銃を乱射してカリナを地面に這わせ、頭に拳銃の銃口を突きつけた


「ジャムる確率と弾切れの可能性に賭けてもいい?」

「弾はさっき替えたばかりだし、拳銃はあんまり使ってない。動いた瞬間に激痛走るが賭けるか?」


カリナはだらりと首を垂らし、両手を上げた


「あーあ。負けた。ホログラムの癖になんで実体あるのよ」

「ホログラムのようでホログラムではないからだな」

「意味わかんない」


うん。俺も意味がわからない

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