第12話

そこで俺ははっと目を覚ます


なんだか、昔の夢を見たな

そう思いながら身体を起こすと、下着姿のシズカが目に入る


黒い女物の下着から白くうっすら発光している様にも見える四肢が伸びていて、二つの下着の間にはひょっこりと出ている肋骨と可愛らしいへそがあった


「え、なんで?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁああ」


普段のシズカから考えられない声の大きさで耳にジンジンと響く


「え、ここ俺らの部屋だよな?」

「私の部屋ですよ」


そう言いながら、シズカは毛布に包まる


「えーと、ごちです?」


その次の瞬間、右頬に衝撃が走る

そして、俺は眠気が吹っ飛び正気に戻る


俺は即座にベットから転げ落ち

流れるように土下座をした


「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


ちょっと待てちょと待て

俺は何を口走った?

いつからが夢でいつからが現実だ?

もしかしたら、ここはまだ夢?

しかし、さっきの衝撃による痛みの理由は?


俺が脳をフル回転させて現状を理解しようと必死こいていると、布団からひょっこりとセツナが起きる


「兄『さん』、ついに襲った?」


眠そうに目を擦っているが、チラチラと現れるそこの目には殺気が篭っていた 


やべぇ、セツナが怖ぇえ

昨日まで兄ちゃだったのに、ちょっと他人行儀になってる


「襲ってない襲ってない。にいちゃんを信じろ」

「兄さん、この現状を見てそれはきつい」

「ぐっ」


的確な指示に心を折られる

てか、なんか喋り方流暢になっていないか?

昨日の可愛らしいセツナは演技?

んなわけないか


俺の勘違いだな


「シズカ?私は兄さんを渡すつもりはないよ?」


そう言ってセツナは俺に抱きつく


あー、はい。変わってないね

そういう甘えた感じは素なのね

よかった。演技だったら、にいちゃんの心はズタズタになってたよ


でも、それ今?


「いらないです。嫌いです。出ていってください」


俺らは二人は、ドアの外へと叩き出された


ドア直ってんじゃねぇか

別に直ったなら叩き起こしてもらって良かったんだが・・・


ってか、いつ直ったんだろうな

それにシズカはどこで寝たんだろうな


「兄さん。」

「ん?どうした?セツナ」

「知らない」


???


「わかんないならいい」

「なんか、セツナ急に大人になった?」

「ッ、そんなことはない」


俺は少し伸びをして欠伸をする


「懐かしい夢見てた気がする。まぁ、いいか。セツナ、風呂入るぞ。昨日入ってないだろ。俺なんて制服で寝ちまったからな」

「え?やだ」


わがまま言うなと暴れるセツナの体を引っ張り、エレベーターに乗り込んで地下二階を押した


それでもなおセツナは暴れ続ける


「おま、そんなに風呂が嫌いか?!」

「お風呂は好きだけど、兄さんとは嫌!!」


反抗期か?!

聞いたことはあるけど本当に前兆がないな


そもそもセツナに反抗期なんてあったけ?

まぁ、忘れてるだけだろ


「早くしないとスザンヌ食べれなくなるぞ?」

「なんですか?それ!!絶対に兄さんとはお風呂に入りません」


本人が嫌がっているので困ってしまう

やはり、年頃の女の子だからだろうか?


「溺れないか?」

「溺れない!!」


とりあえず、シズカに頼むか

そう思い、地下一階で開くエレベーターのドアに閉まるを選択し、5階を押す


それを見て安心したのかセツナが俺の袖を引っ張る


「・・・ねぇ、兄さん。覚えてる?」

「ん?なにを?」

「なんでもない」


俺はセツナの頭を撫でると恥ずかしそうではあったが嬉しそうなのを見て、嫌われてなくて良かったと思った




俺が、風呂から上がるとそこには制服を着たシズカとセツナがいた


「セツナ、お前は学校か」

「うん」

「若?貴方もです」


そうだったと俺は苦笑し、私服に着替えていた俺はシズカから制服を受け取り、

脱衣所に一度戻ってから着替えて出ると


そこには誰もいなかった


ただ一枚の紙がこっそりと置かれていた


『セツナ様を送っていきます。学校で集合しましょう。備品は私が用意しましたので手ぶらで大丈夫です。あと、何か問題は絶対に起こさないでください。何かあればユリナを頼ってください。頭の弱い子ではありますが、指示は的確にこなします』


昨日、こなせてなかったけどな


言われなくても問題なんて起こさないし、起こしたくもない


一部例外を除けば


仲間だった奴らを見つけたら、問題を起こしてでも会いにいくと決めている


俺は考え事をしながら歩き始め転移門へと向かう


ゲート・筋肉自体が防弾や防刃性能を持っていて、タンクの役割をしていた。ハゲなのは10歳の頃からと言っていた。結構見つけやすいはずだ。ウィッグをつけていない限り


フライ・剣の扱い方は一級、ムッツリ。エ○本コーナーにでもいけば会えるかもしれない


カリナ・勘が鋭い。冷静。反射神経で勝てる者はいない。ただ、金に目がない。どっかでバイトしてるかもしれない


クーシャ・喋り方がのんびりしている。そして、隠密性能が高い。奴隷として売られて貴族に幽閉されていたらしい。


ゲートとフライ、カリナは結構簡単とまではいかないが、クーシャ。こいつが本当に見つけるのが難しい


さらには、隠密性能が高い

姿を隠そうと思えば、一生隠れていられるだろう


奴隷として売られたのが今年(俺から見た)だと言っていた


そんなことを、ノートに書きながら転移門を潜ると


待ち伏せしていたのかケンタロウがどこからか現れて腕を首に回されて、「おぉ、着いた」という声がかき消される


「お前、昨日俺のこと売ったろ。昨日大変だったからな?」

「は?なんの・・・」


思い当たる節が一つある


「ははは」

「目を逸らすな?昨日大変だったからな?」


俺の首に腕を回したケンタロウは、その腕の力を強める


「なぜ、俺だと?」

「わざわざ会って、特徴聞いたからな」


俺がぐっすり寝ている間にそんなことが・・・


擦りつけてよかった


まぁ、あのクソ親父のことだ

怒られもしないんだろうけど、メイド長あたりにはこっ酷く怒られるだろう


「御三家のお坊ちゃんにも話を通せるってどんなやつだよそいつ」

「それ自虐か?」

「いや?嫌味」


そもそもタイムリープ前は滅茶苦茶俺らに無理難題吹っかけてきたんだからこのくらいいいだろと内心で叫ぶ


「はぁー。面倒臭いことなっちまったなぁ」


俺らはそう言いながら歩くと目の前に昨日の女の子が立ちはだかっていた


「あー。面倒臭いことになっちまったなぁ」


俺、シズカに問題起こさないように注されたばっかなんだけど


「そうそう。マサ。こいつ、御三家らしい」

「知りたくなかった情報ありがとう」


とりあえず、謝っとくか?

全く悪いと感じてないし、ブーメランがぶっ刺さるが御三家の人間がスラム街に入る方が悪い


だが、面倒事は避けたい

問題を起こして、またですかとシズカに呆れられたくない


「ケンタロウどうしよう。シズカに怒られる」

「えー。いいなー」


は?

何言ってんのこいつ。


周りの人達そして、女の子までもがドン引きである

さっきまで、あんな威風堂々としてたのに後ずさってるではないか


「あ、貴方達!いい加減にしなさい!」

「おい、達はやめろ一緒にするな」

「いいじゃねぇか心の友よ」


こいつ・・・

ぶっ飛ばしてやろうか?


畜生、謝る選択肢が潰された

こんな状況で謝っても薄っぺらいと捉えられる

謝って終わりとはならなくなった


残る選択肢はどれだ?

 

土下座?

そんな変わんないか

それに幼女に土下座する高校生などの風評被害でさらに面倒になるだろう


逃げるか


「ケンタロウ、心の友なら言いたいことわかるな?」

「二人三脚で逃げんだろ?」


当たらずとも遠からず

二人三脚じゃなくてバラバラに逃げるぞ


ってかなんで今の会話で逃げる選択肢が思い浮かぶんだよ

さすが、心の友だよ畜生


「・・・いや、その前に離せよ」


手を振り解こうとしても再び掴んでくるケンタロウに殴りたい気持ちを抑えながら言う


「俺も逃げたいからな」

「じゃあ、離せよ」

「おいおい、俺はお前より足が遅いんだぜ?どう言うことかわかるよな?」


道連れ・・・

この野郎、本当にぶん殴ってやろうか


そんなやり取りをしていると、もっとやばい怪物が来た


「あ、姉ちゃん」

「姉上だ。馬鹿者。まぁ、いい。絶対にそこの馬鹿を離すなよ?ぶち殺す」

「あいあいさー」


御三家同士の戦争なんてしらねぇぜ

死に晒せケンタロウ

そう言い、拳に力を込めてアッパーを喰らわそうとすると、女の子が怪物の前に立ちはだかる


「待ってください」

「ん?」


すると、近づく校長の足が止まる


「御三家の一家。アーニャ・ブランシュと申します。以後お見知り置きを」

「御三家令嬢か。家名をすでに持っていると言うことはそう言うことで間違い無いな?」


御三家は基本家名を名前と一緒に名乗れない

継子。つまりは、御三家の後継者。

それ以外は当主の息子だろうが家名を名乗ることを許されない


そんな気取ったルール

まぁそれは置いといて


俺らより立場は上ということ


俺は面倒事の匂いしかしないこの状況で汗をダラダラと流す


これは御三家の問題

ただの子供同士の喧嘩は普通より大きくはなるが、話し合いで済むだろう

ただし、継子となれば話は別だ


立場が天と地ほどの差がある


そして、何より厄介なのはクソ親父にこの話が持っていかれること

おそらく、謹慎処分になるだろう


もし、これで行動が制限されてしまったら

仲間を探す時間が減る上に、俺が強くなる時間が減る

そうなったら、今後に影響が


それにあのクソ親父のことだ

最悪、実験の被験体にされかねん


俺が軽率なことをしたばかりに


まずい。非常にまずい

今すぐ、逃げ出したいところだがおそらく現状は変わらない

家から逃げるか?


いや、そしたら前回と変わらない

この地位だからできることだってあるはずだ


何を持っての世界救済かは知らされていないが、地位は持っておいて損はない


それにこの学校に入学しなければ、体験したことから未来を予測するのが難しくなる


それにセツナが泣く


「継子が何のようだ?」

「この方は恩人です。貴方が悪意を持っているのは感じ取れます。して、ここを通すわけにはいきません」


あんな言い合いしたのに

滅茶苦茶、世界の理不尽さを教えて責めたのに


こいつに恩人という概念があったのか

殴られたけど、もしやこいついい奴?


「ケンタロウに救われたと聞いたが?」

「いえ、本人に会って確認しましたが、このかたでは無くその隣にいるこの方です。」


ほう?と呟き、校長から睨まれる


驚いたと言う様子がない


この様子じゃ、ケンタロウが何が起こったのか説明済みだろう


ケンタロウが早くに帰っていたことを知っていたし、その上校長は俺をギリギリまで追いかけてきたのでどこに逃げたか察しがついているはず


校長は、おそらくこの子が言っていることが本当だということがわかったはずだ


「何があったのか知りませんが、この方を不問にしていただけないでしょうか」

「・・・・まぁ、いいだろう。次はないからな、マサト」

「はい」


校長は、あの小柄な体からのしのしと音が出そうなほどの威圧たっぷりに去っていった


「これで貸し借りは・・・」

「てめぇ、ケンタロウ!!裏切りやがって何が心の友だ?!」

「仕方ねぇだろ。生憎こっちは生まれた時からあの姉のおもちゃだよ!!」


アーニャは、俺らの方向を振り向いて声をかけたが、俺とケンタロウが喧嘩を始めてしまったため声が掻き消される


「あの!!」


その一言で俺らは喧嘩を止めた


「お名前頂戴してもよろしいですか?」

「ん?ああ、ゲートだよ」

「おい、お前の名前は、マサトだろ」


くっ、このやろう


「マサト様、この間はありがとうございます。この前の一悶着は忘れてください」


そう言って、アーニャはお辞儀すると俺はケンタロウに首を引っ張られる


「なんだよ」

「一悶着ってなんだ?」

「色々あったんだよ」


ケンタロウは疑いの目を向けながら、ふーんとどこか納得していない表情だった


何を想像してるのだろうか


「まぁ、健全な高校生だもんな」

「おい?言い争いしただけだぞ?」

「シズカのことかー」


こいつめんどくさ


「内容は言わないでくださいね。私も失言はあったので」

「こっちこそうちの子がデリカシーなくてすみませんね」


おいちょっと待て

お前にだけは言われたくない


だが、場を沈めるためこれに乗るしかなかった


「改めまして、初等部のアーニャです。先輩」

「ああ、よろしく」


俺はアーニャと握手して、この場から逃げようと足を自分のクラスへと向けようとするが


アーニャは離してくれない


「まだ、終わってませんよ?まだ、側近の紹介が終わっておりません」


まだかよ


「こちらが、側近の『ユナ』です」


俺はそれを聞き、目が見開く

聞いたことのある名前


しかも、最近


間違いない

薄い緑の髪をお団子にしてまとめていて、碧い垂れ目


間違いない


俺があの日、ナイフで殺した

リョウの仲間だ


ということはっ


俺は、アーニャをじっと見る


やはり、よく見ると一号だった


もしかして、あの時リョウがこいつらを助ける予定だったんじゃないか?


いや、あいつはもう少し後だって言ってたし、もしや攫われるが正解だったんじゃないか?


リョウとこいつらが会う機会無くなったじゃん


・・・あとでリョウとは合流かつ要相談だな


「お、おう。ユナか。いい従者を持ってるな。じゃあ、俺はこれで」

「待ってください。まだ、貴方の側近を紹介されていません。こちらが戦力を見せて以上、貴方も戦力を見せるのが筋じゃないですか?」


べつに一言も見せてくれなんて言っていないんだが。という心の叫びを抑える


「今、別件でいないんだ」

「ほぅ、隠すのですか?」


面倒臭ぇぇぇ

そう心の中で叫んでいるとケンタロウが一歩前に出て、手を2回叩く


すると、シュタという軽快な音と共にシノブが現れる


「俺の名前は、ケンタロウ。こいつは、側近のシノブ。よろしくな」

「はい。ケンタロウ様」


ありがとうケンタロウ。

さっきまでゴミクズと思っていてすまん


「じゃあ、次はマサの番だな」


こいつ殺してやろうか?

そう思っていると


「どうしたんですか?」


シズカが現れた

ナイスタイミング


俺はシズカの肩を引っ張り、抱き寄せる


すると、シズカは驚いた表情で俺に密着させられた


「こいつが俺の側近のシズカだ。美人だろ?」

「へぇ、・・・仲がよろしいことで」


ん?

シズカが物凄い形相でこっちを見ていた


そして、顔から何が言いたいのかわかってしまう

御三家の前で何やっているんだこのアホは・・・と


見なかったことにしよう


「側近はそういう関係にはなれませんよ?」

「存じております。それに、若には婚約者がいますので必要ありません」


シズカが代わりに答えてくれる

そういやいたな、婚約者


確かこの学園に入学してた気がする

年は一個上だったか?


まぁ、それは置いておいて

アーニャはシズカを凝視してニヤニヤとふーん?と言っている


うわっ、うざ

立場が同じだったらもう殴ってる

5回くらい


「なるほどねー。ありがと。バイバイー」


そう言って、アーニャは初等部の方へともどる

ユナは、こちらを見てコクリと丁寧にお辞儀してから小走りでアーニャを追いかけていた


「何がしたいんだあいつは」

「知らねーよ」


俺はケンタロウの方を見るといつのまにかシノブがいないことに気がつく


「お前の側近も何なんだって感じするけどな」

「お前の側近もいつまでくっついてんだ?って思う。」


俺は、慌ててシズカを離すと

シズカは、急足で歩く


「はぁ、行きますよ。見本となるべきの御三家が遅れてはいけませんから」


俺とケンタロウは苦笑し、シズカを追いかけるが

シズカの姿はどんどん遠ざかっていく


「それにしてもよかったよなー、おんなじクラスで」


あぁ、ギリギリ記憶に残っている

うん。一緒だった


「最初の授業は、座学なので教室に直接行きますよ」


前からシズカの声がする

小さくなるシズカの背中を見ながら、


「そうだな、後でな」

「まぁ、わかった」


ケンタロウは走って教室へと向かって行き


俺はシズカの方向音痴を止めに行った

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