賢者 文化を考える

 小学2年生になった。


 小学生2年生ともなると、クラスメイトの興味が外遊びから部屋遊びにシフトするようだった。テレビの娯楽番組、アニメ、ネット動画、ゲームなど娯楽の幅が大幅に広がる。同級生との話題を合わせるのが目的でもあるが、もちろん私自身が興味を持っていたのでほどほどに色々なジャンルを見てみた。前の世界では神話物語、民話、童話くらいしか娯楽の話が無かったので非常に面白かった。が、はまればはまるほど時間がとられる事に気が付き、最終的には時間がもったいないのでクラスで流行っていそうなものだけを追っていく事にした。文明が進むと、娯楽もものすごく進むんだなと思った。下手したら娯楽を満喫するだけで人生終わっちゃうんじゃないかなとも思った。


 部屋で話題のアニメを見ているとママが話しかけてくる。


「琴ちゃんも普通のアニメ見るようになったのね、ママうれしいわ」

「うん、クラスの子が何喋ってるかわからないのもストレスなんだよね」

「え?ああ、なるほど、そういう事ね、社交のため必要な事ね」

「そうね、でも話題になるのはわかるわ、話が面白い、物凄く」

「前の世界ではどうだったの?」

「娯楽はほとんど無くて、神話とか、童話とか、口伝で伝わる昔話くらいしかなかったかな?劇とかもあったけど、戦争中だったのでそんなに流行っていなかったかな」

「……そうだったわね、悲しい世界だったんだものね」

「うん、私、この世界大好きよ」

「ふふっ、私もよ」


 それからも話題のゲームなどもやってみる。

 どこの家庭も大体ゲームはパパがやっているらしく、パパが色々と新しいゲーム機を準備してくれた。大人になってもやる娯楽なんだね、この世界では。私は最初コントローラ―を動かすと体も動いたりしてしまったが、慣れてきたら一応ちゃんと動かす事が出来るようになった。何種類かゲームをやってみた感想は、疑似体験を手軽に出来るものという印象だった。釣りなんかすぐに出来ないし、城を砲弾で破壊なんてのも早々出来ない。人間がやりたいという何かをゲームの上で再現してある。それを遊ぶから面白いのだろうか?前世での動物狩りとかと同じなのかな?残念ながら球技とかは全然発達していなかったので、武闘大会とかしか無かったので色々新鮮な気分になった。こちらでの遊びを向こうに持って行ってあげたい。


「琴音、もうちょい手加減して……」

「手加減は相手に失礼になるからやっちゃダメなのよ?」

「うっ、厳しいなぁ」

「厳しく無いわ、手加減すると相手の実力測れなくなるから大変になるの」

「くっ、命の危険性がある世界の人の言う事は違うねぇ」


 割とゲームが上手なパパよりもすぐに上手くなってしまった。脳が若いと吸収力が強いのだろうか?樹が後ろでやりたそうに見ていたが、さすがに2歳の子には無理だろう。


「こっちゃん強すぎだよー」

「うちのパパより強いかも」


 今日は鈴ちゃん兄弟も遊びに来ていた。弟さんは年長さんでちょくちょく家に遊びに来ている感じだ。今時のゲームは四人で対戦出来てすごいらしいよ?私は今のゲームしかわからないからよく知らないけど。


「たまにこっちゃんパパわからない事話すけど、何を話してるの?」


 わたしはパパをジトっとみる。パパが慌てて誤魔化す。 


「あ、琴音とやっているスーパーごっこ遊びの設定だよ」

「!なにそれ!私もやりたい!」

「あー大人くらい漢字読めないと無理かなー」

「えーなにそれつまんない!あ、こっちゃんてもしかして大人の漢字読めちゃうの?」

「うん、大体の読めるよ」

「こっちゃん相変わらずすごいなぁ」

 

 鈴ちゃんが相変わらずわたしをお姉さんを見るような尊敬した目で見てくる。昔からそんな感じだったが、同級生の子が大人の思考で動いてたらそうなってしまうかな?とも思う。小さい時から大人の頭脳ってのもかなりのズルだよね。

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