これは人と人、あるいは妖怪の化かし合いか

読了後に感じたのは「もう終わり?」と思ってしまうようなこの先を読みたいと思わせる渇きと、その反対に「これで良いのだ」と感じる爽やかさでした。
まだ若く、恐らく跳ねっ返りのような気質もあるのであろう窮奇と老成した火車の対峙は時間にしてそう長いものではないはずである。
しかし、二人の間に流れる緊張感、気迫は重厚なものでまるでアドレナリンのように一瞬を永い時間に錯覚させる物語でした。

窮奇は中国の妖怪として知られていますが、善人も悪人も喰らうものとされています。
年若い少女でありながらその名を冠する彼女がどのような道を歩み、どんな未来を見据えて火車を想っていたのか。

掻き立てられる妄想が尽きない、大変面白い作品です。