第5話 確認作業と狼



心地よい風が頬を撫でて、目を覚ます。

俺が異世界に来て1番最初にした事それは…


「おぉーすげぇ!ほんとに超絶美形イケメンになってる!

あの平凡な顔は元の世界じゃ全く警戒されないし騙しやすいから!と言って自分に嘘つきながら頑張ってたけどやっぱり男として生まれた以上モテたいよなぁ」


爺からもらった《アイテムボックス》に鏡が入っていたので急いで取り出し、自分の顔と体型と服装を見ながらテンションが上がり大きな独り言を言っていた。森の中で。

周りはどこを見ても緑だ。空は紫がかっていてどんよりしていた。


髪色は黒のまんまだが、ライトブルーの瞳に目は二重でキリッとしており、モチモチの白い肌、鼻は高く、180cmはあるだろう細マッチョのイケメンになっていた。

服装はスーツではなく、紺色を基調としたローブに中のシャツは白にズボンは黒色だ。


「そうだ鏡に夢中になっていたが他にも色々入ってたよな。確認しねーと」


俺が《アイテムボックス》と念じると頭の中に情報が流れてきた。

・初心者応援安心パック

・ミスリルの短剣

・金貨10枚


いやこの中に鏡入ってるのおかしくない?絶対あの爺、俺がちょっと期待してたの勘づいてたから入れてただろ。

まぁありがたいけどさ


頭の中で初心者応援安心パックと念じると目の前に黒の亀裂が現れてその中に手を突っ込むと中の物が出てくる。

携帯食料と水約10日分と簡易テントに緑色の液体が入った瓶が10本、地図が出てきた。


「この緑色の液体はなんだ?ポーションかなんかだろうけどくそッ、《鑑定》がないのがやっぱり不便だな」


ないものねだりは今更だとは思うが悪態を吐いた。


「あとはそうだ。自分のステータス位ならさすがにわかるか」


頭の中でステータスと念じる。


東雲欺瞞しののめぎまん』男性

種族名:人間 職業:なし SP:0


LV.1

HP:350+1000

MP:500+1000

攻撃:30+1000

防御:30+1000

魔法:60+1000

速さ:40+1000

知能:900

器用:800


スキル

《錯覚》対象を錯覚させる。

《取得経験値倍化》取得する経験値を2倍にする。

《原語通訳》全ての原語が話せる。

《アイテムボックス》収集容量3%

《環境適応》環境に即座に対応できる。

《並列思考》2つの事象を思考できる。


加護

【創造神の加護】MP.魔法+1000

【冥府神の加護】HP.攻撃.防御.速さ+1000


あの神達からの加護でステータスに補正がかかってるな。1000ってどうなのか?比較対象が居ないから一概に強いとは言えねーけどLv1でこのステータスはさすがに一般人よりかは上だと思う。


______ザッザッ!


頭の中のステータスを見て思案していると、突然目の前の茂みから紫と黒を合わせた色の体長2mはある1匹の狼が電光石火の如く俺に向かってきた。


瞬時に思考を切り替えアイテムボックスからミスリルの短剣を取り出すと同時に真横に飛び狼からの突撃を回避していた。


これが《環境適応》かすげぇな。普通急に体長2mの狼が飛び出してきたら何も出来ずに喰われて終わりだったが瞬時に頭の切り替えが出来てかわしてたな。


さっきの対応の感想を思考しながらでも、もう1つではしっかりと眼前に「グルルルゥ」と唸り声を上げている狼を見つつどう対応するかを考えていた。


《並列思考》《環境適応》いいスキルだ。脳筋浮気神のくせにやるじゃねぇか。


「丁度いい。てめぇで《錯覚》のスキルちょいと試させてもらうぜ」




………………………………………… Side 狼 ...............




謎の言葉を吐きながら目の前の男はこちらを隙なく見ている。狼は正直焦っていた。自分はここ魔の森の絶対的捕食者であり上位者に君臨している。


そんな己が自慢のスピードで不意を付いて仕留めきれなかった。しかも人間相手に。この魔の森にたまに人間が来るが狩れなかった獲物はいなかった。


そんなことを考えていると急に目の前の男が自分に背を向けて一目散に走り出した。慌ててそれについて行きながら狼は考えた。なぜこの人間は逃げているのか。最初の不意打ちを躱された事で慎重になっていたが、狼は考えた。


さてはこの人間スピードだけが取り柄なのではと。

やはり自分は狩る側だ。人間なんかに負けるはずないと。

そこからの行動は早かった

一気に速度をトップギアまで上げ目の前の人間に自慢の爪を突き立てた。


______スパッ。


気づいたら狼の首は綺麗に切断されて地面に落ちていた。

命が尽きる数秒前、自分を殺してたであろう人間が何かを言っているのが見えた。


「どうした?錯覚でも見たか?」



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