第3話 東雲欺瞞と狸爺




「のう?東雲欺瞞しののめぎまんくん?」



急に本名を呼ばれビクッ!っとする。なんでこいつ俺の名前知ってんだ?



まぁ、よく考えてみれば、神様なんだから個人情報など知られていて当然か、と思いいつつ返答する。



「あの世界って言うのは、あんたの所の天国とはまた違う世界なのか?」


「ホッホッ、冷静じゃのぅ。普通はなんで名前を!?とか言うじゃろうに。」


「神様が知らないことなんて、どうせないんだろ?」


「それもそうじゃな! じゃあなにから話そうか...立ち話もなんだし...それ」



爺がいきなり指をパチンッ!と鳴らすと急に目の前に豪華な椅子が2つ出てくる。

これに座れという事なのか?一瞬考えたあと爺を見るとほれと言わんばかりに手で座れと言ってきたから大人しく座る。



「まずは儂が作った世界【リューグナー】についてからかのう。このリューグナーは儂の娯楽で作ったのは世界なんだが最近覗いてみたら物騒な事になっておってのう」



この爺、面白半分で世界なんか作れんのかよ。やべーな。そう思いつつ話を聞く



「ほらやっぱり世界って平和だと面白みがないじゃろ?だから魔族と人族半分に創造したんじゃがのぅ。最近覗いてみると、人族が2割の魔族が8割の情勢になっていて、魔族側は何か魔神やら魔王やらわらわらいて人族滅亡の危機なのじゃ」


「なんだよそのありきたりな展開は。普通そっから勇者が人族で現れて魔族バッタバッタ倒して終わりの展開何じゃねーか?」


「うーむ。そうしようと儂も考えたんじゃが向こうの魔神共がこっちの世界に気づいたらしく儂に干渉されまいとずる賢いこと防御してるのじゃ」



えぇ...。その世界もう詰んでね?そもそも魔神共って言ったから魔神1人じゃねーんだ。創造した神に抗うような力持ってるってもう終わりじゃんと欺瞞は率直な感想を述べた。



「ホッホッ。いやー500年目を離した隙にまさかこんな事になっておるとは儂も予想してなかったのう。」



はっ?500年!?絶対それあんたの監督不行き届きじゃねーかよ。そんな世界行ってもすぐお陀仏だ。



「だから君にはその世界に転移してもらって世界をいい感じにしてもらいたくてのぅ。もちろんスキルだって色々付けちゃうよ?」



何か自分のミスを隠蔽するかのように話をまくし立ててくる。はぁ、どうせ断ってもあの冥界に行くよりはマシか...



「だけど、向こうの世界の魔神共はあんたに干渉されないようにしてんだろ?そんな事出来るのか?」


「ホッホッ。いい質問じゃ!儂が管理しておる天国側から【リューグナー】に転移するのが普通なんじゃが、お主は中間者!よって儂らにとってもあやつらにとってもイレギュラーなんじゃよ!だからいける」



まるで待ってましたかのようにヨボヨボの胸を張って答える爺神。



「そもそも中間者?ってのは何なんだ?」



さっきから当たり前のように言ってる単語が気になり聞いてみた。



「おー。そうじゃなー中間者というのは良い行いと悪い行いが丁度半々になった者の事を表すのじゃ。欺瞞くんにも心当たりはないかのぅ?」



ギラリとその鋭い目線で俺に聞いてくる。

まぁ確かに今までの人生騙し騙され最後に何故かあのサラリーマンを救っちまったからなぁ...それにしても半々かぁ。



「まぁ取り敢えずはわかった。で俺はその世界で何をすればいいんだ?魔神共と魔王倒して人族救えばいいのか?言っとくけど腕っぷしに自慢なんかないぞ俺」


「ホッホッ。いやいやそこまで要求はしてないぞ。 さっきも言ったじゃろ?いい感じにして欲しいって。」



この狸爺...明確な目的を言わずにいい感じにして欲しいだと?何か隠してやがるな。いいだろう俺だって今まで沢山人を騙してきたんだ。神だって騙して何を隠してんのか聞き出してやる。



そう決心し、椅子に浅く腰かけ両膝に肘を置き考え込むかのように今までの内容を整理、そしてある1つの仮説を立ててみる。


「もしかしてその世界が崩壊、または均衡が崩れると何かマズイのか?」


そう質問すると、微かに爺の口が結ぶ。

口を結ぶか。これは何か隠してる証拠だな


「あんたはさっきその世界を創造したと言ったな?」


「うむ。」


「だったらそんな無茶苦茶になった世界破壊してまた作り直せばいいんじゃないのか?あぁ魔神共に干渉されないようにされてるって言ってたなぁ」



2つ目の質問の前半部分の所で爺は腕を組み何か守っているような態勢を取り、その後の言葉を聞き安心したかのように腕組みをやめた。

ハッ!この爺わかり易すぎんだろ。



「あんた魔神共に干渉されないようにされてるって言うのは嘘だな。何か隠してんだろ狸爺?」


「....。はてさてなんの事かのぅ?」


「惚けるなよ?神様なら俺の経歴くらい知ってんだろ?騙し合いならもっと勉強してからやれよ」


「......。」



爺はまた腕組みして黙りこくった。

その様子をじっと見つめ次は何をしてくるか考えていると



「ハッハッハッハー!創造の!もう素直に話したらどうなんだ!?そやつとは一蓮托生の身になるのだろう?」



てっきり忘れていた筋肉隆々男がさっきのブツブツ言ってた雰囲気はどこへやら快活に狸爺の肩に手を置きこちらの話に入ってきた。



「はぁ。全くおぬし神相手に騙し合いするなど、どんな胆力しとるんじゃい。わかった全て話そう。」


「やはり面白い!なぁお前冥府に来ぬか?美しい女も美味い酒もあるぞ!?」



その言葉に一瞬だけピクッと反応するが狸爺が筋肉隆々男を睨みつけ黙らせた。

さてと、俺のこれから行く世界はどういう状況なのか嫌な予感が少ししつつも狸爺の話を聞く。


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