第36話 いちど
三か所も立て続けに飛ばされたこと。
一世一代の告白をしたこと。
微増していた疲労が別の形で一気に襲いかかり、かつ、酒で多少なりとも参っていたことも相まって心身共に限界突破したのだろう。
桜桃の家の前に戻った途端、高熱を出して地に伏した史月は、家に戻っていた桜桃と季梨に助けられながら、羞恥心で焼き切れそうだと思った。
『ああ、構わない』
夢に違いないが。
夢であることが問題なのだ。
断られる。切り捨てられる。
一抹の疑いさえなく。
受け入れられるなど、断じてあり得ないとわかっていた。
はずなのだが。
(僕は、受け入れられることを、本当は。望んでいた。のか)
上昇し続ける熱は、留まるところを知らないだろう。
このまま本当に死ぬかもな。
薄れゆく意識の中、頬を伝った一筋の涙が一番熱く感じた。
史月が浅葱に交際を申し込んで一週間が経っても、史月がまだ桜桃の家で寝込んでいた頃。
「おまえ、本当に史月と交際するのか?」
「ああ」
浅葱の家にて。
注文票と朝飯の海藻マドレーヌにタピオカミルクテティーを持ってきた都雅は、一週間前に突然史月が配達中の雪山に出現したことを伝えようとするよりも前に、史月と交際することになったと爆弾発言をかました浅葱に、注意深く質問をした。
「自分で史月の目を輝かせたくなったのか?」
「いや。気長に待つ」
「いつから好きになってたんだ?」
「いや。好きとか嫌いとか考えたことはない」
「じゃあ、好きとか嫌いとかそーゆー感情を超えた、おまえも気づいていない第六感か何かが史月に引き寄せられてて思わず告白した、もしくは告白されて頷いていた、とかか?」
「いや。以前別の人間の交際提案を断ったら面倒なことになった経験上、今度同じことがあったら合意しようと決めていたからだ」
「………はい?」
(2022.1.17)
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