第7話 つきだけ







 流石は結界縄を創生する結界師と褒めるべきか。

 ひょろい体躯でよくまあ、時折よろめいたり躓いたりしながらも、蝶のように舞い蜘蛛のように標的を自前の縄で縛り付ける史月にそんな感想を抱きながら、屋根から見下ろしていたのだが。


 月光を真正面に浴びて、白い体躯は仄かに発光して神秘的に見えるのにどうしてか。

 目は死んだ魚のまま。




 もしかしたら、凛々しい目は見られないのかもしれないな。

 しかし、落胆も焦燥もないのは、永い寿命のおかげか。

 出会った際に駆け上がり、今や静かに灯し続ける羨望は、これからも消えはしないと考えており、だからこそ、永い付き合いになるのだろうとも認識しているので、その中で見られたらいいと暢気に構えているのだが。




『知ろうと思わないのか?』




 都雅の疑問が脳裏を過った浅葱は、ふむと呟いては、少しだけ冷たい瓦屋根へと己を預けたのであった。




(確かに。仕事に関する契約には結界縄創生だけしか交わしていないのに、何故盗人の捕縛までしているんだ?)











(2021.10.6)


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