ギルド追放された二十歳。スキルは『着ぐるみ』です。

赤狐

一章 着ぐるみ始動!編

第1話 追放

「ギル。君はもうこの場所には必要ない。出て行ってくれ。」


「え”?マジで?急にそんな事言われても。」

俺の名前はギル。ギル•コスタム。突然ながらパーティーメンバーにギルド追放を喰らった。ついでにパーティーからも。


「君は確かに有能だった。有能だったけど、もう僕たちは君のカバーなしでも問題なく力を発揮できるんだ。残念だし、いつかは来ると思っていたけど…。本当にすまない。」

絶対こいつそう思ってねぇ!俺は確信できる。こいつは色男(キーアン・カラーと言う。)だ。モテる。そう、モテる。そう!モテるのだ!


イケメン!Aランク冒険者!そして金持ち!そして優しい(腹は絶対に黒い)!


何でこんな奴に………って思ったが確かに、俺は素の能力だけでここまでやってきた。スキルを使った事はない。何てったって、能力が圧倒的に戦闘向きじゃない。もう分かる絶対に分かる。確信してる。え?どんなスキルかって?


『着ぐるみ』だよ。


ど畜生めぇぇ!!!ふざけんな!おい!ふざけんな!何が悲しくて着ぐるみなんか着るんだよ!もっと戦闘系の能力くれよ!こんなのならまだ無い方がマシだったぜ。


「お前、ギルドマスターは何て言ってたんだ?その件について…。」


「…………残念だけど…。でもそのスキルなら子供たちのボランティアとかでも出来るんじゃないかな?あと、これ、退職金だよ。もうここに来ないでくれよ。僕のギルドだから(ボソッ)。」


欲の権化みたいな事言うな…。しかもこのしたり顔、完全に故意って訳かよ。あ”ぁ”ぁ”。これでパーティはハーレム状態、か。


「チッ。あぁ、そうかよ。分かったよ!もう二度と来ねぇよ!こんな所!お前の顔ももう見なくて済むと思うと清々するね!あばよ!」


チッ、色男が。あぁ、まさかあんなにに追放されるのは結構心に来るなぁ…。男ならまだ良かったんだろうけど。はぁ。これからどうしようかな…。


___________________________________


「チックショウメェあんの腹黒ゲスイケメンが!」


ドン!


「おいギル。酒瓶をテーブルに叩きつけるな。」


「ん?あぁ、すまねぇ…。」


俺はいつも寄っていた、この店、『酔の宵』のマスターであるガッズ・グッドマンと話していた。


「何かあったのか?相談ならいつでも受け付けてやるぞ。」


う”う”う”ぅ!名前も行動も優男だなぁ相変わらずよぉ!ゴツい見た目してるくせに、既婚者で娘も居て面倒見良くて料理上手くて……。あれ?こいつあのキーアンよりも圧倒的にモテてもいいと思うんだがなぁ。結局、こいつの魅力に気づいたのは奥さんだけって事か。


「はい、これ試作品のアップルパイ。食べてみてくれる?」


噂をすれば何とやら。奥さんのソウルフィア・あ……いや、グッドマンさんだ。この人は今は平民の振りをしているが元々は………。まぁ、これはまたいつか言えばいいか。


「あぁ、ありがとう。サンキュー!いただきます。」


…………。うん。これは言葉を失った。何これ?本当に。何これ?サクッ、トロッ、フワァ、って!何これ⁉︎


「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎ヤバいっす!これヤバいっす!」


俺は全力でリアクションするしかなかった。うん。こりゃヤベエぞ。うん。


「ふふ、ありがとうござます。お客様。そんなに美味しかったの?」


首の上下運動を音速(のつもり)で振りまくった。


「で、一体どうしたんだ。かなり荒れてたが。」


「あぁ、ギルドを追放された。あの色男のせいで。」


「「はぁ⁉︎」」


「幾ら何でも………。マジかよ…。」


「……してこようか?」


「いや!ガッズは良いとしてもフィアはちょっと不味いんじゃないか⁉︎いや、大丈夫だから。最悪マスコットキャラクターとか宣伝とかで稼げるかもだから。」


「ウチの看板でも良いぞ?」


「いんや、お前らに迷惑かけたくないんでね。んじゃ、そろそろダンジョンでも行こうかね。まぁ低階層なら大丈夫だからさ。」


「そういうなら……。あ、じゃあ、あの子のお迎え頼んでも良い?確か買い物ついでに遊んでくるって言ってたから。」


「りょうかい。帰りに拾っていくわ。そんじゃ、また。」


「気を付けて行けよ。」


俺は料金を払って(アップルパイは試作品だから無料にしてくれました。優し!)店を出た。

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