第46話

「え……?」



「あの、渡したいものがあって。」

「それならここでも……」

「ダメなんです……!お願いします。入れてくれませんか?」


根負けして中に入れたけれど、中ではないと渡せない理由が分からない。

「それで……渡したいものって?」

しばらく久留野さんは躊躇っていたけれど。

海翔と目を合わせて僕に一通の手紙を手渡した。

「あの……美妃奈ちゃんから、この前編み物教えた時に聞いたんです。病気のこと。本当は言わないつもりだったんだけど……って笑い泣きみたいな表情で教えてくれました。それで、最初は理解できなかったんですけど徐々に本当なんだって思うようになってきて。クリスマスの前日、私にくれたんです。この手紙を。私がいなく……なったら……あげて……って」

それから久留野さんは大号泣しながらも、決して差し出した手紙を手元に戻すことは無かった。

僕は震える手でその手紙を大切そうに受け取ると

「ちょっと……違う部屋で待ってて。」

と伝える。

若干涙声になってしまったけど仕方ない。

美妃奈が最後に僕に残してくれた物。

丁寧に丁寧に封をとく。

封筒に収まりきらないくらい手紙がはいっているのか、溢れていて。

僕の美妃奈への思いも負けてない……と強く思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る