第5話 天使は痴女なのか? 幼女天使のあられのない寝相について

「うわあ」

 

 思わず声に出してしまった。

 

 寝相悪過ぎる。第一印象がそれだった。とても見てられないあられもない姿で寝ていたウリエルに出して起こそうとする。

 

「ウリエルさん! もう朝だよ! 起きて!」

 

「むにゃむにゃ」

 

 何がむにゃむにゃだ。歴史上こんな寝相をされたら強制性交されてもおかしくない程あられのない姿なのに。第一服装が悪い。


 何故不思議の国のアリスの服装なのだ。世の男達の劣情を煽る服装なのが又いけない。


 ひょっとしてカトリック教会で一度堕天させられているのは世の人々の間に熱烈な天使崇拝が流行ったからではなく、ウリエルのこの姿を世に晒したが故にではなかろうか。

 

 かんなり精神衛生上宜しくない痴女じゃないかと本当に疑いたくなる。

 

「ウリエルさん!」

 

「むにゃ」

 

 駄目だ。反応が薄い。こうなったら。

 

「起きないんだね。じゃあ、蜂蜜は僕が貰うよ」

 

「ほえ?」


 何がほえだ。絶対いつでも眼が覚める状態だったろう。全く御使いとは油断も隙もありやしない存在だ。


 同時に危なかった気もする。ここで下手を打ちゃ地獄行きを宣言されてもおかしくない。前日の発言を少し撤回せざる得ない。


 ウリエルはロリータではない。


 だが、天然ぼけのロリータの可能性がある。それも少しではない、かんなりのレベルだぞ。


 うっかりして僕達を地獄に突き落とす御使いかと考えると背筋がゾッとする。この天然さだ。多分、多くの人々をうっかり地獄に叩き落してきたのだろう。


「ウリエルさん、もう少し御使いとして自覚を持って下さい。大体人の劣情を煽る様な服装をしている御使いなんて聞いたことがない」


「ふえ? これはファルマコが望んだからこんな服装になったの」


「え?」


「ふえ?」


 待て待て、どう言うことだ? ウリエルの言動から推察するのは危険な面もあり、再度確認しなければならない。


「ウリエルさん、地上に現れる時はいつもその服装なの?」


「そんなわけないよう。服とかはね、せんざいいしきにはんえいされて出て来るの」


 幼女らしくない難しい言葉を使ったが、要するに。


「僕が望んだから、そんな服装で現れたってこと?」


「そーだよ」


 なんてこった、ホーリー・スピリット。つまり、あれか。僕の欲情に反応してこんな服装になった訳だ。


 つまり、性的嗜好もウリエルにある程度見抜かれているのか。確かに未熟な無花果に惹かれる面はあるけどさ。


 でも、どちらかと言うと草食系だと思っていたし、寧ろ絶食系に近いかもと思っていた。けれど、真実は違うんだ。


 詩篇の解釈に神は人の心の反映そのものを顕わにするって言うのがあるらしいが、目の前のウリエルは邪淫として僕の願望を映し出した服装で現れてしまったんだ。


 お前はとんでもない大罪人だ、と服装が叫んでいるかの如き錯覚に一瞬囚われてしまった。

 

「でもなあ、ウリエルさん、もう少し寝方とか考えた方が良いと思う」


「はなしをすりかえるほうが良くないよう」


 ウリエルはそう言ってから「あ」と何か思い出した様に困った表情をしている。


 

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