第4話

 晶子あきこの家に結月は初めて入った。

 家の中は整理されている。

 二人はベッドを背にしてテーブルに向かって座る。


 「暑いから冷えた麦茶出すね」


 結月は目を閉じた。好きな人以外とこの後に起こる事を、動揺せずに受け入れられるだろうか。

 

 「どうしたの、結月?」


 「私は、女性とは初めてで。晶子さんは?」


 晶子は笑った。


 「私だって初めてよ。あなただから体を重ねてみたいって思ったのよ。私の処女バージンを捧げるわ。ついでに貰うわね」


 晶子は結月の隣に座って手を取り、手のひらにキスをしてから舐めた。そして、晶子は結月の唇に触れるだけのキスをし、結月の顔を見つめた。


 「大丈夫よ。私に任せて」


 結月は、少し怯えた顔をしていた。


 晶子がリードする形で、二人はお互いの体を貪りあった。



 結月は晶子と寝た事で、心も体もスッキリした。胸のもやもや感が取れたような気がした。

 女性とするとこんなに違うんだ...と、結月は確信した。もしかしたら凛と結月が交われば、凛の心を癒やしてあげられるかもしれない、そう思った。


 まだ昼下がりの午後。

 凛のLINEのブロックを解除した。


 「今までゴメンね」

 「お見舞いに行ってもいいかな?」


 結月は返信を待った。しかし返信はいつまでたってもなかった。既読にもならない。


 結月は病院へ凛のお見舞に行った。

 受付をしていると、事務員は凛の入院している四階へ電話する。

 事務員からこう言われた。


 「小林凛さんはこちらにはいません」


 結月は耳を疑った。

 

 「そんなわけが...」


 「お帰り下さい」



 結月はショックで晶子に電話した。


 「もう一度私と話をしよう」


 

***




 結月は再び晶子の家に行った。


 「多分、私は面会謝絶になっていると思う」


 「そうだったんだ。あなたは凛さんもお母さんも拒絶したからかしらね」


 「そうね。私がいけないのよね」


 結月は久しぶりに涙を流した。

 泣いたのは何年ぶりだろう。


 「私を恋人にしてみない?私なら気楽だから。もう、凛さんの事を考えると辛いでしょう。結月さん苦しいって顔をしているわよ」


 「ありがとう。凛は病んでいるから、私も引きずられちゃった感じはあるのかもね。このままだと心中していたかも」

 

 「そこまで思い詰めていたのね。心中は立派な犯罪。気を確かにね」


 晶子は結月をギュッと抱きしめた。今は自分がささえないと結月は生きてはいけない、そう思った。


 


 

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