武蔵野市・都市伝説伝 謎の新聞記者編

DITinoue(上楽竜文)

第1夜 トレインゴースト

 「ふんふん、なるほど。そんなことがあったんだね・・・」。

「そうなんです。本当に、ひどかった。とても苦しかったんだ。まさか、

本当に存在するなんて。今でもとても信じられません———」


 「ねえねえ、お兄ちゃん!!今日も電車で帰る??」

「う~ん、どうだろ?わかんない」。

「ええ~。乗るのるのる!!お・ね・が・い!!」

兄の三住純一に弟の、光喜は、中央線にのろうと、おねだりする。

光喜は、小さいころからの鉄道好きで、最近は、ここ武蔵野市を

通る、JR中央線と、西武鉄道、京王電鉄などが、好きで、どこにでも、

行くときは鉄道を使いたがる鉄道ファンだ。

だが、ある時、悲劇は起きた―—―


 「純一、明日の11時から試合だぞ!!分かってるな?」

「おう!忘れるわけねーじゃん」。

今日は、純一が所属する、サッカークラブの試合だ。少し遠くの

グラウンドで試合だ。今回は、光喜にとってはとても嬉しい日だ。なぜなら

試合会場に行くには、鉄道を使うからだ。

 次の日———「おっはよー!!さあ、いつ乗るの?早く早く!!」

光喜は、鉄道搭乗にワクワクしているばかりであった。父親は、朝から会議に

出席、母親は、親戚のおばさんの家にお裾分けに行って、途中から観戦に来る。

なので、行きは、純一と光喜2人だけで行くことになる。2人だけで行くという

ことは、今回が初めてで、光喜は、それだから、興奮が倍になっている。

これから、悲劇が始まってゆく———

 

 2人は、バスで駅までやってきた。駅では、仕事などに使う人がほとんど

いないせいか、あまり人がいなかった。2人は、駅の中のコンビニで、

飲み物を買って、ホームへ向かった。

「この時は、まだ何にも感じなかったんだ。雑誌を見ても怖いなぁと感じた

くらいでね。ちょっと冷たい気配を感じた気もしたけど———」

ガタンゴトン———電車が、ホームに到着した。純一と光喜が乗る電車だ。

電車に乗ると、人がほとんどいなかった。1両に2人いるかいないかだ。

2人は、何も気にすることなく、シートに座った。純一は、雑誌を読んでいた。

雑誌には、ある都市伝説が載っていた。「トレインゴースト」という都市伝説で、

鉄道ファンのうち、数人は、トレインゴーストに襲われてしまうという。襲われた

人は、たいていが死亡していた。純一は、これを読みながら、少し背中に冷たい

ものを感じた。


 サッカーの試合は終わった。純一のチームが5対2で勝利した。純一は、

2点もゴールを決めた。今回の試合の最大の功労者と言ってもいいだろう。純一は、

浮かれていた。褒められた上に、新聞の取材も受けたからだ。地元では話題に

なっていた。母親は、急用ができたようで、また2人で帰ることになった。

「ねえねえ、お兄ちゃん。思ったんだけど、電車も疲れないのかなぁ?」

「疲れないだろ。機械なんだし、大丈夫っしょ。過剰な心配しなくても

いいじゃん」。

2人は、こんな会話をしていた。そして、駅に着くと、帰路についた。

完全に浮かれていた純一は、夢を見ていた。サッカー選手になり、世界で戦う

スーパースターになるということを。

「本当に恐ろしいと思いました。全てやつの思うように動かされていたんです」。

 「間もなく—○○○○」

アナウンスに、2人は目を覚ました。気づけば、田舎町に来ていた。まだ空は

明るいが、そろそろ夜になる。2人は、気づかぬ間に寝過ごしていた。

「あっ、ヤバ!!おい光喜!起きろ!」

こうして、2人は、寝ることもなく起きる駅に着くのを待っていた。でも、

脳裏では、純一は、まだまだ浮かれていた。

「そんな時に起こったんです。四角い物体が飛んできてるから、何かなぁと

思ったら、こっちへ方向を変えて」。

純一と光喜は、同じものを見た。四角い物体がコチラに飛んできている。

(あれなんだろう?)

純一は、雑誌を見たときと同じ寒気を感じた。その時、アレが飛んできた。

ガッシャ―ン!! 窓ガラスが割れた。空は、黒く、もう少しで降りる駅。

四角形の物体の顔が見えた。西武鉄道のスマイルトレインのように、笑っている

顔に見えた。相手は、小さな電車だった・・・。だが、相手の顔は、

スマイルトレインの笑顔とは違う。不気味に微笑んでいた———


 ピーポーピーポー 夜中に救急車の音が響いてる。電車は線路から落ちていた。

純一と光喜は、壊れた電車の下敷きになり、ガラス片で、足を切った。

純一は、両足、光喜は、右腕を切断することになっていた。犯人はあいつだった。

「これを僕は経験しました。今でも車いす生活で、車体を大事にしない子供に

狙いをつける。浮かれていたから気が付かなかった。全ては、あいつに

動かされていた。何やら嫌な予感がするんです。この武蔵野の地で———」

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