第7話 頑張っている受験勉強~このままではヤバイらしい

2003年11月30日

 年内最後の中3実力判定テストの結果が出た。夏休みから塾通いを始めた同級生たちとともに好成績なら、前回2か月前より順位が上がっていれば自主勉強の成果といえるし、この時期で志望校判定AかBならこのまま頑張れば志望校へ合格できる可能性は高いと思われたのだが…。

 その結果としてはクラス内の順位は6位、学年で41位と順位は上がったものの、校区では横ばい。合格圏内のBをAにすることはできなかった。つまり麻矢たちの中3トータルの成績レベルが今イチなのだ。

 学内では期末テストが終わったばかりだが、受験生も、その先生たちもホッとしている暇はなかった。

 来週の三者面談日までに第一志望を決定することになっていたが、従姉の祐紀に相談すると「このままじゃヤバいよ、これから西高から東高へ、東高を目指していた子が合格圏内Aの北高へ落としてくるから」「ということは…」「今、北高Bでも、このままならCに追いやられるよ」「対策は?」「まずは学年20位以内に入らないと」~という母・麻郁の電話でのやり取りを聞いていた麻矢は淡々と「頑張るしかないでしょ(描いている高校生活を実現するには)」と、これからのラストスパートに更なるムチを入れるしかなさそうだった。この時点では…。


 翌日、部活を終えて退出する時間はすっかり暗くなっていた。いつもなら校門の車両側のローラー扉は閉まっているのだが、この日は空いており、もう少しで校門というところで車のライトがこちらに向いて迫ってきて麻矢の姿に気が付いたように停車したのは美術部顧問の野上先生のクルマで青のトヨタ・エスティマ。6人以上乗れるファミリーミニバンとして人気車だが、先生は最後部のサードシートは常に畳んでおり、作品や画材を載せられるようにしていた。

 「先生、今から仕事?」

 「午後から半日出張で今帰り。弁当箱を取りにね」  

 野上は麻矢の直近の進路状況が気になったのかハンドルを握ったまま続けた。

 「学年何位だった?」

 「41位っすよ」

 「志望校は?」

 「家から近い北高」

 「北高か、今年も競争率高そうだな」 

 「そうなんすか?」

 「しっかり頑張れば大丈夫かな、気を付けて帰れよ」

 「先生も」

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