番外編・始 第二王子・クリス視点

 学園の教室での休憩時間、本来なら友人と話したりして楽しむことができただろう。だが、僕は楽しむことができていない。


「はぁ」

「クリス様、ため息をついていたら、他の者が怖がってしまいますよ。そもそも殿下が入学してから怖がられているというのに」

「うるさい。ルーカス。僕の気持ちがお前にわかるか?」

「ですが、自業自得ですよね?」


 ルーカスは学園に入ってきてから本当に遠慮がなくなった。しかも、全く言い返すことができない。フィーア姉様に悪役令嬢の話を僕からしたことがバレてからは、学園を卒業するまで最低限しか合わないと言われてしまった。しかも、僕がいない間に母上とお茶会をしていると聞き、急いで帰っても帰られて会うことができなかった。

 これも全て、アメリアが包み隠さず、僕のことや僕の行動を話しているからだろう。はぁ。


「彼女は本当に信頼できるのですか?クリス様に対する誠意が見えないのですが」

「アメリアのことか?彼女は大丈夫だ。それに、彼女は僕というよりもフィ、ソフィアに使えているかな。そう見えるのだろう」

「それならいいのですが…」

「まあ、ソフィアの負担になるようなことはしないさ」


 むしろ、彼女は僕からフィーア姉様を離そうとしていることの方が問題だ。今も僕の評価を下げようとしているから、あの時の作戦をバラしたのだろう。

 そもそも、悪役令嬢の話を持ち出したのは僕だが、話している途中でフィーア姉様にはとても無理だと結論付けたのに、それを実行しようと言い出したのも、実行したのもあいつだというのに…

 話を持ち出したとか、最初の発案者だとか、僕が否定できないような言い回しをされる。あいつこそが悪役だろう。


 本当に、いつか、彼女にフィーア姉様を連れて行かれるかもしれないな。その前になんとか手を打たなければ…


 やっとフィーア姉様と一緒になれるんだ。誰にも邪魔をされてなるものか!やっと両思いになれたのに。フィーア姉様の卒業パーティーの時、あの愚兄に対して言った言葉が今でも思い出せる。

 『私が好きなのは今も昔もクリス様ただ一人です!』そう言ってもらえた時、状況が状況なだけに、にやけることができなくて、我慢するのが難しかった。アレンなんかはこっちを見てニヤニヤしてくるし…


 㒒もフィーア姉様に言葉で伝えて…


 あれ?もしかして僕は言ってない?だから、フィーア姉様は僕と距離をとっているのか?僕がちゃんと伝えていないから?


「クリス様、大丈夫ですか!?急に顔色が悪くなりましたが!?」

「大丈夫だ。それより俺は早退をする」

「…大事な用があるのですね?わかりました」


 急いで城に向かう。アメリアに伝えられる前に帰らなければ、また会うことができなくなる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る