第2話 「奴隷のお金」

「パクティお帰りー。上手く行ったわね」


「ええ。何処かとんでもない場所に置き去りにして来たわよ。けものに喰い殺されるか野垂のたれ死にするかのどちらかね」


「あっはっは。あの惨めな奴隷どれい女にはお似合いね」


 パクティがギルドのファミリアルームに戻ると、既に戻って来ていたメンバーが楽し気に迎えた。

 セロリィ嬢と共に集まった五人は、計画通り奴隷のレイを処分できた事に嬉しさを隠さない。人を死地に送った事を悪いなどと思っても居ない様だ。


「でもさあ。ストレス解消の相手が居なくなってしまったね」


「大丈夫よ。新しい奴隷を買って貰って、直ぐに与えてあげるから待ってなさい」


 独り豪奢な衣装を纏ったセロリィ嬢が、事も無げに言い放つ。

 彼女に取って奴隷などその程度の物なのだ。


「おお! セロリィお嬢様ありがとうございます」


「本当は追放する前に、素っぱだかでゴブリンの群れに与えて、犯される姿を見たかったけれどね。あの生意気な奴隷女」


 セロリィ嬢は自分の言った事を想像して興奮したのか、急に息を荒くした。


「あー、本当ですね! あの生意気な生娘が泣きながらゴブリンどもに犯されて、連れ去られる姿を見たかったですね!」


「追放より面白かったのにね」


「まあゴブリンのなぐさみ者になった後で、うちの冒険者ギルドの奴なんかに助けられたら面倒だから、仕方が無いわね」


 言いながらセロリィ嬢の口の端が吊り上がる。彼女の卑劣ひれつな性格が垣間見える瞬間だ。


「それはそうと、セロリィお嬢様。あいつの貯金は全部没収で良いのですよね?」


「ええ。パーティを裏切って死んだ奴のお金はパーティの物よ。お父様にもそう伝えてあるわ」


「元々私達が稼いでやった金だしね!」


「うふふ! あの馬鹿のお金でしばらく『インキュバス男性淫魔サロン』で楽しめそうね」


 セロリィ嬢以外の女達は、インキュバスとの淫靡いんびな夜を想像して、とろけるような笑みを浮かべていた。


「あんた達! お父様からレイの事を聞かれたら、私はあいつの事をいつも心配していて、とても大事にしていたって言うのよ! じゃあ私はこれで帰るわね」


「もちろんですわ。セロリィお嬢様はお優しいお方ですので、いつもレイに優しく接していらしたもの……」


「もちろん私達もね!」


 パーティルームに下品な笑い声が響き渡る。

 町長と冒険者ギルドのマスターを兼務する父親の権力と財力を背景に、好き放題に振舞うセロリィ嬢と、その配下の女冒険者のパーティ。

 この町で彼女達に逆らうものはいない……。

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