第24話 早乙女さんは激おこ(怖いよ!私に何する気なのぉ⁉)
「こぅいぅのが……良いの?」
からかってみたかった。
いつも恥ずかしい想いさせられるの私だし……ちょっとくらい三波くんもびっくりしちゃえば良いんだ。
そういう、ささいな出来心――――だったんですよ。
「あんた達、ここで何してんの?」
私達を見下ろす瞳孔ガンギマリの早乙女さんに、私はそう心の中で語り掛ける。
手からなんかポタポタ垂らしてる……え何なのそれ返り血? の割には白いし。
え、ほんとに何⁉
「あんた達、ここで何してんの?」
「お? どうしたんだ早乙女。昼飯買えたのか?」
「あんた達、ここで何してんの?」
「早乙女さ……ち、ちがうの! これはその、普通に一緒にご飯食べてただけで」
「き・さ・ま・ら・こ・こ・で・ナ・ニ・ヲ・シ・テ・オ・ル・?」
語るにつれて人間辞めていってる声してるぅ!
なんか言い方も尊大になってる気がするぅ!
ていうか駄目だ、私の話も三波くんの話も聞いてない!
「あたしさぁ、見てたんよ。なんかぁ? 姫宮さんがさぁ? 三波に近づいてさぁ。もぅすっげぇ近づいてさぁ。まぁすぐ離れたから良いけど……三波の面がさぁ、明らか何かあった顔っつーかさぁ」
天界から脳天へピキューンと危険信号が走る。
堕天使
「ちがうのちがうのちがうのぉ‼ 早乙女さんが考えてることなんかしてないよ‼⁉ だって私と三波くんだよ⁉ なにかある訳ないじゃない!」
「……うちが考えてることってなに?」
怪訝な目に見下ろされて、私はみゃぐっと固まった。
あっれ~~~~~?
早乙女さんはドンッと胸で私を押し出して、問い返してきた。
「ねぇ? 何がないの? 姫宮さんと三波との間に、何かあるの?」
「あっ、それ俺も気になる。どういうことなの、姫宮さん。そんなことって何?」
あーんたは何でそっちに加勢してんだぁあぁあああーーーーー‼
やめてよ! 二人して私の墓穴ほじくり返さないでよ⁉
そうして二人からの追求にあわあわしてたら……学校のチャイムが鳴った。
「仕切り直しね」
仕切り直すんですか。
早乙女さんはフンっと鼻白んで、大人っぽい巻き髪をなびかせた。ずだんずだんと足を踏み鳴らしていって、途中で振り返った。
火矢かと見間違える程の眼光に、私は恐怖で肩が跳ねた。
「いやぁ~~えらく睨まれたなぁ」
「……どぅしよう」
「?」
私の嘆きのこもったつぶやきを、三波くんは分かってないみたいだった。
――これだから男子は!
私みたいなカースト下位の地味女子が、クラスの中心の三波くんとこっそり会ってた。それだけでもう女子達からのヘイトは凄いことになる。
「終わった……私の学校生活……終わった」
「んー、別にそこまでの事態じゃないと思うけどなぁ」
能天気な三波くんの言葉を無視して、私達はタイミングをずらして教室に戻った。
席に着くと……斜め前から火矢の視線を放たれた。
早乙女さん――――そんなに三波くんが私と仲良くしてるのを怒ってるってことは……。そういうことなんだろうな、やっぱり彼のこと好きなんだろうな。
先生がやってきて午後の授業が始まるけど、私の頭の中は早乙女さんと三波くんのお似合いカップルの構図が浮かんだ。
早乙女咲良さん。
テニス部のエースで学校の成績も優秀。街に遊びに言ったら読モの勧誘受けた、だなんて話しょっちゅう聞くくらいスタイル良い美人。
廃部寸前のテニス部を都大会常連まで押し上げたからか、すごく気が強い。でも気の弱い私はそこに憧れるし、一部の男子にも人気だ。
「……お似合いっちゃお似合い、か」
――――そんな早乙女さんに、今私めちゃくちゃガン付けられてる。
ちらりと見れば、斜め前から燃えるような視線が変わらず私を突き刺していた。
こわいこわいこわい! 怖すぎるよ、早乙女さん⁉
この後、私に何をする気なの? 私、何されるの⁉
脳裏に浮かぶのは、今まで読んできた少女漫画ややってきた乙女ゲームの展開。
校舎裏に呼び出されたり、集団で詰め寄られたり、トイレで…………ぞぉっと背筋が凍る。
助けて伽夜ちゃん―――――――たすけてぇぇえええええええええ!!!!
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