第12話

 「葵!」

 「な、なに?」

 「あいつを倒せるかもしれない」

 「マジ!?」

 「マジ」


 そう、強化だ。

 我では『地球人Lv1000』の影響で絶対にヤツにダメージを与えられないが、葵にその縛りは無い。

 つまり、我の魔法によって強化された葵の攻撃なら、効く。

 筈だ!

 今まで味方なんて、こと戦闘においては邪魔でしかない存在だったからこんな考えていたから全く考えつかなかった。

 だが、二つ程問題がある。

 一つ目は他者に影響を与える、いわゆる支援魔法と呼ばれる魔法は我が唯一適性を持っていない聖属性に分類される魔法だという事だ。

 しかし、これは我に考えがあるので問題は無い。

 本当に問題なのは……。


 「葵」

 「なに?」

 「お前、あいつを殺せるか?」

 「いや、私、あいつと戦ったら瞬殺されちゃうわよ?」

 「それは今いい。もし、あいつに対抗できるだけの力があったら、どうだ?」

 「出来るよ、殺せる」


 即答だった。

 言葉には一縷の揺らぎもない。

 思わず頬がひきつる。


 「ん?どうしたの?」

 「いや……」


 第二の問題も問題ないらしい。

 葵があいつを殺せるか。

 普通の子供なら、いやこの平和な世界なら大人でも躊躇うであろう殺し。

 それを何の躊躇いもなく了承した。

 ここ数分で感じたが、コイツの肝の座り具合は半端ないな。

 もし、ステータスに『精神力』という項目があったなら、その一点において葵は我を上回るかもしれない。

 これなら、大丈夫だろう。

 我は葵の眼を見る。


 「俺が、葵を強くする。絶対に殺させたりしない。俺は、訳あって隣で一緒には戦えないど……。一緒に、戦ってくれないか?」

 「……わかった。空人を信じて戦うよ」


 葵は一拍の間の後、しっかりと頷いた。


 *



 「まずは武器が必要だな。金属錬成メタルクリエイト、材質 鉄、形状 剣」


 我は地面に手を付き、地中の土から鉄の剣を錬成する。


 「わっ!何それ凄い」

 「これを使ってくれ」


 我は錬成した剣を葵の前に置く。

 本当はもっと強靭な、鋼鉄とかを使った剣を作りたかったが、何せ魔力が心許ない。


  _____________________________

 名前 大星空人シリウス


 レベル 1


 職業 魔王


 称号 転生者 異世界人 絶対魔王ぶっ殺す世界の異物 不幸の権化


 加護 なし


 呪い 女神の私怨


 基礎能力値

 HP1050/215000(5300000/5300000)

 MP299950/1000000(20000000/20000000)

 物攻23000(460000)

 物防21750(435000)

 魔攻25000(500000)

 魔防21000(420000)

 敏捷22500(450000)

 幸運0


 スキル

 魔王Lv10(七魔眼、魔王魔法、絶対防御障壁、超再生、魔力支配、魔王覇気etc) 基本属性魔法Lv10 全属性魔法耐性Lv10 物理攻撃耐性Lv10 精神攻撃耐性Lv10 身体強化Lv10 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc) 限定メール


 _____________________________


 自分のステータスを見て思う。

 さっきの攻撃だって、とっさに衝撃を逃がさなければ本当に死んでいた。

 生き残れたのは奇跡だった。

 そんな事を考えていると葵が衝撃が冷めやらない様子で話しかけてきた。


 「でもホントすごいよ、空人は。今思い返せば、この木陰に隠れる時だって瞬間移動してたし今だって、地面から剣出したりしてるし。これって魔法でしょ?普通の子じゃこんな事絶対できない」


 あ。

 完全に失念していた。

 別に葵になら我が異世界から転生してきたと明かしてもいいか……。


 「俺は……、異世界から転生して来たんだ。前の世界では魔王だった。だからこんな芸当が出来る」


 そう我が言うと、葵は呆然とする。

 まぁ、無理もない。

 こんな話、中々信じられるものではない。


 「……転生って、何?」

 「は?」


 ……。


 どうやら葵、転生という言葉を知らなかったらしい。

 まぁ、小学生なら当然か。

 ハハハ。

 どんだけ余裕なくなってたんだ、我は。


 「何笑ってるの?」


 「いや、何でもない」


 その内わかる。


 「うん……?まぁいいや、じゃぁ武器もできたことだし、そろそろ行く?」

 「いや、お前、その剣持てないだろ?」

 「そうなの?」

 「持ってみればわかる」

 

 我は地面に置かれたままある剣を指さす。

 葵はその剣を取ろうとする。


 「重っ!」

 「当たり前だ。鉄だぞ」


 まぁ、正確に言えばタングステンだがな


 「いや、こんな大きな鉄の塊持ったことないし……。でも、これじゃ私この武器使えないわよ?」

 「だから、俺がお前を強くする」

 「さっき言ってた強化ってやつ?」

 「そうだ」


 理論は頭に入っている。

 支援魔法はは空間魔法と違って俺が最も苦手な聖属性に分類される魔法だが、今までに培った技術をすべて使って、絶対に何とかして見せる。

 まずは試しに簡単な魔法を……。


 「肉体強化(弱)、ッ!」

 「わっ、すごっ」

 

 剣の柄を両手で持ち、何とか持ち上げようと四苦八苦していた葵が途端に軽くなった剣に困惑している。

 っていうかこれ、簡単な魔法のはずなのに魔力を100近く持っていかれた。

 やはり適性は殆ど無いか。

 だが……。


 _______________________________


 名前 天道葵


 職業 なし


 称号 絶対魔王ぶっ殺す世界の住人 天才児


 加護 なし


 基礎能力値

 HP 20/20

 MP 12/12

 物攻 2(+15)→ 17

 物防 2

 魔攻 11

 魔防 9

 敏捷 7

 幸運 100


 スキル

 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc) 天才Lv5

 ________________________________


 どうやら、効果はてきめんのようだ。

 腕力強化(小)は物理攻撃力を底上げするらしい。


 「これならいけ「いや、無理だ」」

 「え、じゃぁどうするの?」

 「もっと、まだまだ強化する」


 苦手な属性だけあって初級でも魔力を1000も持っていかれた上、効果は通常より弱いが、十分だ。

 残り三十万近い魔力でごり押し、強化をかけまくれば……。

 勝算は、十分にある。


 「さぁ、反撃の開始だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る