生徒会

  ~~~顔合わせ集合部屋~~~


 俺と真壁は集合時間より少し速く部屋につき唯について話していた。


「よくもまぁ、あの気難しそうなお嬢様を落とせたもんだな」


「意外と気難しくもないぜ、人見知りなのとクールな性格でそう見えるだけだよ」


「ああ、友達の前だとたくさんしゃべる感じのやつだろ」


 真壁はわかったと言うように指を鳴らす。


「ただ俺様の活躍も忘れんなよ?立花捕まえて馬場を呼び出したのは俺なんだからな」


「わかった、わかった」


 コツコツコツ


 廊下から教室に近づいてくる音がする。

 ようやく唯がきたようだ。


 ガラッ


「遅・・・井上⁈」


 大きなギターケースをもった唯の後ろには井上が立っていた。


「井上生徒会副会長だから武田家と戦うの協力してくれるって」


 井上・・・こいつまで仲間にする気はなかったが生徒会へのパイプができたと考えれば悪いことじゃないか。


「またよろしく!話は聞いたよ、僕にできることがあるかはわからないけど精一杯努力させてもらうよ!」


 井上は食い気味に俺の手を握り、握手をする。

 正直井上はすこし苦手だ、こいつからは臭いほどの善人の雰囲気を感じるからだ。


「それと・・・君は・・・」


「なんでこいつがここにいるの・・・」


 井上と唯は真壁の顔を見て思わず絶句する。

 当然の反応だろう、つい先日敵だった男が目の前にいるのだから。

 さぁ、ここからの説得が勝負だな・・・


「俺の仲間を紹介する、真壁だ」


「この前はどうも、俺も前々から武田達にはイラついていたんだよろしくな」


 真壁は、ふんぞりかえりながら相変わらずいやらしい笑いを浮かべている。


「あの後説得してな、真壁も武田たちに不満を抱いていたようだったから、協力してもらうことにした」


 唯と会う前から仲間だったことがバレないように虚言を吐く。


「信用できるの・・・?」


 唯は疑いの目を真壁に向けている。真壁はそれに対し不敵な笑みをつづけておりバチバチと火花を散らしあっているのがわかる。


「大丈夫だ、信じてくれ、それに内部の情報は貴重な情報源なんだ、卜伝さんを殺した犯人も調べてもらってる」


 やはり唯に真壁は受け入れ難いか・・・まずいなここで心変わりでもされるかもしれない、最悪真壁抜きで・・・


「わかった、勇気が信じるなら私も信じる」


 唯は真壁をにらめつけてた割にあっさり承諾してくれた、これも俺への信用故だろう。


「それで今日は真壁の紹介だけ?」


「とりあえず今は武田を倒すために仲間を集めたいそのために生徒会と話したい」


「任せてくれ!生徒会の人たちはすこしクセが強いけどみんないい人だし、強い君達も武田達を倒すなら生徒会に入らない?」


 ここぞとばかりに井上が喋り始める。


「武田家の俺が入るとばれちまうから当然、俺はパス」


 真壁はスマホを触りながら興味なさそうに無理無理と手を横に振る。


「たしかに真壁が入るとまた説明がまたややこしくなりそうだ、俺と唯だけで入ろう」


 それを聞いた唯はコクっと頷く。


「生徒会は前執行部含め結構いたんだけど今じゃ僕を含め6人しかいないんだ、みんな武田の圧力でやめてしまったよ」


 まだ武田に対抗しているのか、残ったメンバーはかなり強いことが予想できる。ゴリゴリのマッチョだらけかもしれない・・・


「僕以外はペーシェントとして一流だよ、


「もう会長と話をつけてあるんだ、生徒会には入れないけど実質的なメンバーとして」


「仕事が早いな・・・」


 あまりの物事のスムーズさに少し驚きだ。


「それじゃいこうか」


 俺と唯は井上に連れられ生徒会室に向かおうと部屋を出かけたとき、唐突に真壁が口を開く。


「それにしてもご愁傷様だな、立花、お前がいないときに限って襲撃されるなんてな」


「・・・」


 真壁はふざけた態度で唯を煽り始める。

 唯の目つきは鋭くなり、拳を握り締め真壁を今すぐにでも殺しそうな雰囲気を醸し出す。

 せっかく信用してくれたのに、何してんだ馬鹿野郎・・・!


「お前さぁ、【白銀の剣聖】の孫の自覚あんのかよ?次元流の門下もがっかりしてるだろうな、なんでその時お前はいなかったんだってな」


 唯はそれを聞くと悲しさを思い出したのか少しよろけて顔を抑え俯く。


「おい、真壁」


 俺は真壁の発言を制止しようと口をはさむも真壁の話は止まらない。


「悪いとは思わないのか?あいつらの気持ちを汲み取ってもう少し悪そうにしてやればい」


 シュッッ


 煽り続ける真壁を止めるように唯は手をかざし刀を打ち込む。


「うおっ!」


 バァン


 刀は真壁のおでこにあたり、真壁は椅子ごと倒れる。

 唯は顔を上げ倒れた真壁に近づき言葉をかける。


「門下生にどう思われようともかまわない!【剣聖】の孫とか次期次元流の当主も関係ない!私は自由に自分勝手に私と勇気のために生きるって決めた!それでもって自分勝手におじい様を殺したやつに報いを受けさせる、だからあなたも恨みも嫌悪感も忘れて協力する気があるのなら黙って私に協力して」


 そう言い切った唯の顔はあの時のくよくよしていた時から明らかに何かが吹っ切れている清々しく凛々しい顔をしていた。

 それを黙ってみていた井上の目は潤んで感慨深さを感じているような顔をしていた。


「・・・」


 言われた当人の真壁は唯のその気迫に驚き唖然としたまま倒れている


「真田と一対一で話がしたい」


 ようやく口を開けたと思うと真壁は俺との話し合いがしたいようだ。


「先行っていてくれ」


 俺がそう言うと唯と井上は部屋のドアを開け退室する。


「あの自分勝手な言い分誰かに似てるなぁ、真田」


 真壁はなぜか倒れたまま話を始める。


「そうだな」


「お前があいつを変えたんだろう、顔つきが一件あってからじゃ違うからわかる、すげえよ、あそこまでよく惚れさせたもんだ」


「ああ」


「これは気になっていることなんだが、お前が【白銀の剣聖】を殺したこと【黒鬼】がお前か?」


 真壁・・・こいつ気づいていたのか・・・


「・・・そんなわけないだろ、たまたま死んだのを利用しただけだよ」


 俺は落ち着いた様子で薄っぺらい嘘をつく。

 真壁には【白銀の剣聖】を殺したのは言っておらず、真壁の中では俺が立花を馬場から救うとこで作戦は終了したと言っていた。真壁に俺の正体は打ち明けるわけにもいかないからだ。


「今回の作戦と【白銀の剣聖】が殺された件はいくら何でもタイミングが良すぎる、まるで立花唯が連れ去られるのを知っていたかのようだ、唯を連れ去ることをあの時知っていたのは俺と馬場とその部下とお前だけだ、そこで一番得をするのは誰か、そしてお前が立花を助ける時間、【黒鬼】が出没した時間すべてがつじつまが合う」


 相変わらずの勘の良さだ、脳筋みたいな見た目してるくせに考えは繊細だ。


「お前が正体をさらしたくないなら別に俺はそこを探る気はないし、お前が嘘だらけで誰かを騙し殺そうともかまわない。武田家を倒したい気持ちは一緒だからな、武田家を潰すのに手段を選んでいられないのもわかる」


「そうか」


「ただ絶対に武田家をたおすこと、これだけは嘘にしないでくれ」


「・・・当然だろ」


 俺は相槌を返すことしかできなかった、完全に否定する演技をすることはできなかった。

 真壁には最終的には七海さえ取り戻せれば武田家だって倒さなくてもかまわないという俺の心の中がすかされていたのかもしれない。


「もしお前が本当に【白銀の剣聖】を殺していないのならこの話は忘れてくれ、実際俺には【白銀の剣聖】ほどの猛者を殺すリスクを負ってまで殺しに行った理由がわからないしな」


「ああ」


 真壁は言いたいことを言い切ったと思うとすぐに部屋から出て行ってしまった。

 真壁が井上のような正義の重んじる人間なら危なかったがあいつは見捨てることができる人間だった、助かったな、お前を敵に回したままなら俺はすぐ追い込まれてただろうな。


 俺は生徒会室に向かった唯たちに追いつく、その際、井上は俺の顔の横に近づき唯に聞こえない声で話す。


「お嬢を助けてくれて本当にありがとう、僕じゃ全く力になれなかった」


「気にすんなよ」


「どうすればよかったんだろうね・・・」


 そういうと井上は悲しそうに遠い目をする。

 井上は自分が卜伝を守れなかったこと、唯を救えなかったことを相当引きずっているようだ。


「力だよ、何かを助けたい、何かを救いたい、願いをかなえるのにはなんだろうと力がいる、そうだろ?」


「確かにそうかもしれない、でも力だけの世界はそれはそれで悲しいとは思わないか?」


「は?」


 こいつ・・・力もないくせにいっちょ前に理想論のきれいごとだけ語りやがって・・・力こそが全てなんだよ、弱い奴は何も得られない。


「あのなぁ」


「ん、ついたね」


 説教じみたことを言おうとしたが井上に遮られる。

 きづくとほかのドアより一回り大きく、模様がついた門が目の前にあった。

 規律に厳しそうな気品の高い雰囲気を感じ制服を正す。

 井上がドアに手をかける。


 ガチャ


 中に入ると男女が1人ずつ、机を挟んだソファに座っている。男の方はガムを噛み鋭い目つきの不良のような男だ、俺たちが入ってきた瞬間俺たちをずっと睨めつけている。威圧感がすごいな・・・もう片方の女はブレザーを腰に巻き、茶髪のキャピキャピしているほんのりギャルのような感じ、男の方とは違い俺たちが来てもスマホをいじり続けている。この女の方はどこかで見たことあるな…どちらも俺の予想していた品のあるお堅い生徒会からはかけ離れている。裏腹に生徒会室は小綺麗で奥の生徒会長机のデザインやソファの模様からしてかなり高級なものばかりなのがわかる。


「お前らか・・・井上の知り合いってやつは」


 ソファに座っている男が高圧的な態度で睨みつけてくる。


「ん、どっちも可愛い顔してるね、って君は同じクラスの~」


 女はスマホをいじるのをやめ、立ち上がり俺の顔に顔を近づけじっと見つめて唸る。


「うーんもう少しで思い出せそうなんだけどなぁ」


 あまりに近づけてくるので壁際に後退して離れようとするも彼女も詰め寄ってきて距離が取れず壁にぶつかる。

 優しいシャンプーの匂いが鼻を打ち犯罪的なまでの可愛さの顔が目に焼き付けられる。

 こいつ無意識でこういうことよくやってるんだろうな、こりゃ並みのボッチ童貞ならイチコロ、勘違いして好きになっちゃっう~、しかしこの俺にそれはない、俺は30年間の童貞をこじらせ、たどり着いた童貞のその先、スーパー童貞だからだ!


 俺がくだらない茶番を心の中でしていると女は思い出したように指をパチンとたたく。


「思い出した!サラダくんだ!」


 ちげーよ!!!


「真田だね、はは・・・」


 真田だよ!Fuck you,bitch!とキレてやりたい気持ちを抑え愛想笑いで応える。

 そして俺はクラスと同じ反応をするため静かな陰キャを装う真田モードで対応する。


「こちらの怖そうなのが庶務の直江、こっちのチャラそうなのが会計の柿崎、生徒会長含めあと3人いるんだが・・・まだきてないみたいだ」


「よろよろ~」


 紹介された少女は元気にピースする。

 そうだこいつ、綾瀬とよくつるんでる女だ。

 柿崎千代。初めてよく見るが、耳に髪がかかっており、そこから見える耳にはピアスをかけている、頬にバンドエイドをしている、何か傷を負っているようだ。しかし気になるのは何よりYシャツのふくらみにより強調される胸だ、なんとも魅力的。F・・・いやGはあってもおかしくない。


 ギュッッ


「んっっ」


 言葉にならない声を継いだしてしまう。

 俺が向けている視線のもとに気がついた唯が俺の腹の皮を抓っている。

 鼻の下を伸ばし変態的な視線を向けていたことに気づいたのだろう。

 唯は黙って冷たい眼差しを俺に向けている。

 悪かったって・・・ははは。


「簡単に紹介すると柿崎はこの海嶺学園のミス海嶺にも選ばれる人気者、直江はこの学園でもトップクラスの戦闘能力をもつ一人だ」


「いえーい」


 柿崎は照れて嬉しそうにウインクする。

 彼女のクラス内の立ち位置は彼女は元気旺盛で学年のアイドル、クラス内カーストどころか学年カースト最上位で俺のような端っこにいるような人間なんかが話した日にはその日の一話題くらいにはなるだろう。

 でもカーストが高いからってってクラスのやつの名前忘れていいわけじゃねえからな女ァ!


「いけすかねえなぁ、井上、こいつ本当に強いのか?」


 俺が柿崎に少し腹を立てていると横から直江が突っかかってくる。

 銀色の髪に赤い目、身長は170くらいでそんな大きくない、Yシャツの袖をまくり上げており、そこから見える腕は筋肉質でかなり鍛え上げられているのがわかる、格闘能力も高そうだ戦闘方法も近接タイプだろう。


「女のほう強いのは知ってるよ、次元流のお嬢様、一年の中でも最強らしいじゃねーか、そのギターケースも武器背負ってんだろ?でも横のお前、お前からは全く気を感じない、シックもあまり使えないだろ?」


 知ったような口を聞かれ唯はムッと直江を睨めつける。


「たしかにあまりシックは使えないかな」


 俺がそう言うと直江は鼻で笑い立ち上がる。


「生徒会はこのエリート校の中でも択一した存在だ、雑魚が来るなとは言わねえが、口だけでやってけるほど甘くねーぞ」


 直江は威圧するように俺の前に立つ。

 それを見ていた井上は割って入り直江を静止する。


「やめてくれないか、彼は僕の恩人でもあるんだよ」


「だからなんだ、俺は口だけの野郎が一番嫌いなんだ、半端な覚悟なら帰ってもらう」


 グッ


 直江は井上をどかし俺の胸ぐらを思い切り掴む。


「ほら殴ってみろよ、どうせそんなどきょうもないんだろ?」


 こいつ・・・お望み通り、ぶん殴ってやろうか・・・いやダメだ、あくまで学校の俺は奥手なボッチキャラなんだから。

 力がはいった拳を深呼吸し苛立った心とともに落ち着かせる。

 唯も直江を睨めつけているが、俺の事なかれ主義を察して動かずにいてくれている。


「彼はシックこそうまく使えないが強靭身体と精神をもっているよ、武田家打倒の仲間になってくれるかもしれない」


「まだそんなこといってんのか・・・!」


 井上の言動に直江は舌打ちし苛立ちを加速させる、直江は井上をソファに押しのける。


「強いからだと精神ならこんなのも効かねえよな」


 ドスッ


 唐突な直江の膝蹴りが腹にあたる、腹と足に力を入れ膝蹴りを何とか動じないように耐えきる。

 我慢したけど、いてぇ・・・


「へぇ、結構鍛えてるな」


 自分の攻撃に微動だにしていない俺に直江は感心している。


「やめなよ、直江」


 それを見ていた柿崎が直江を制止する。

 直江はそれを聞いて一瞬何かを考えたように止まるった後俺の胸ぐらを離す。

 柿崎の言うことには素直に聞くようだ。


「いい加減にするんだ、直江!」


 飛ばされた井上は立ち上がり怒りをあらわにする。


「うるせぇなあ、お前もぶん殴ってやろうか」


 そういうと直江は井上のほうに首を鳴らしながら向かう。


「お前いい加減あの件はあきらめろよ、もうあの件は話がついただろうが」


「君だってあの結果は納得していないはずだろ!」


「本当にわからずやだな、お前は・・・」


 直江は井上を睨めつけグググと歯ぎしりする。

 こいつずっとイライラしてんな・・・生理か?

 正に一触即発という状況、その時生徒会室のドアがゆっくり開かれる。


「遅れてす、すいません、許してください!」


 その少女はださい黒縁眼鏡、ぼさぼさの髪、目のしたのくまもひどいってどっかで見たことあるな。

 少女の顔を目を細めよく見つめる。


「彼女は書記の宇佐美、昔書道を習っていたらしくてとても達筆なんだ、そっち方面の大会でも優勝したことがあるらしい」


 俺の視線に気づいたのか宇佐美もこちらを向き、目が合う。


「あっ・・・!」


 宇佐美は俺の顔を見ると何かに来づいたように口に手を当て驚いている。

 そうだ、思い出した、この顔、俺が最初不良にいじめられているとき助けた女だ。

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