神童

真壁と約束した神童を仲間に引き入れる作戦を実行する日が来た。今日もいい朝だ、昨日の綾瀬の胸の中の感触を思い出す。グフフ、あの思い出で当分のおかずにすることができるだろう。



 プルルルルルル



 俺がベットに潜り、ズボンをぬいでいるときに電話がなる。真壁だ、真壁のあの顔を思い出したら萎えてしまった。このゴリラぁ・・・


「俺のラブコールでしっかり起きれたかぁ?」


「最高の寝起きから最悪の寝起きになったよ、感謝、顔射」


「そりゃよかった、それで作戦はできたのか?」


 真壁は不安そうだ、この前までなんも考えてないように見えたのが心配なんだろう。


「まかせとけよ、名付けてピンチの時にかけつけるヒーロー作戦だ」


「あー圧倒的命名センス皆無の作戦だが、内容は?」


 この時点で真壁は俺の作戦に難色を示している。失礼な奴だ。


「ほらよくあるだろ、不良に絡まれてそれを助けるイケメン主人公みたいな、お前がその不良役で俺がイケメンヒーロー役だ。とにかく武田グループは悪で悪い奴しかしないってイメージをつけて、そのあと俺が助けてイケメン風に『大丈夫?』って聞くんだ、これで俺たちの仲間に誘う」


「本当にそれだけで仲間になんのか?結構冷めてる奴って聞いたぜ?」


「まあ、失敗したとしてもまだ策はあるから安心しろ、さらに俺に恋におちたら100点だな、しっかり唯ちゃんを追い詰めるんだぞ、俺を引き立たせるために」


「お前本当に武田達を倒すためにやるんだよな?」


 失笑しながら武田は問い詰める。


「当然だろ!決行は今日の放課後下校時、帰る道で人通りの少ないところで待ち伏せするぞ」


 はいはいと半ば呆れつつ真壁は電話を切った。正直イケメンキャラなんて柄じゃないがなんとかなるよな....

 俺は自分の甘い考えに一抹の不安を抱えながら、学校に向かった。



 ~~~放課後~~~


「おい、その立花はいつくんだよ、あってんのかお前の情報」


 真壁はスマホを見ながら俺の情報を疑ってくる。綾瀬からもらった資料に書いてあった道で待ってもなかなかこない。3時に学校は終わっているし部活に入ってるわけでもないはずだが、2時間待ってても来ない。確かにおかしい、今日はたまたま別の道で帰ったのか?


「お!来たぞ」


 真壁は嬉々として指をさす。そこには金髪でギターケースを背負った女の子が歩いている。真壁は立花が来るのを待ってましたと言わんばかりに準備体操を始める。来たのが相当うれしいようだ、いや違うな、こいつ戦いたいだけだわ。


「俺が来たらさっさとやられろよ、てかボコされんなよ」


「フン、まかしとけ、俺が社会の仕組みってやつをあの女に教えてやる、出る杭は打たれるってな」


 満面の悪そうな笑みで立花に向かっていく、めっちゃ啖呵きってるけど大丈夫かこいつ、忘れてボコボコにしないよな。


「おい一年の立花だな?」


 真壁はこぶしを掴み、指を鳴らし、威圧しながら話しかける。身長差は15cmほどある男が恫喝を仕掛ける図を見て少し彼女が気の毒に感じた。あの顔にこんなこと言われたらちびっちゃうよ~~~


「そうだけど」


 片耳のイヤホンを外し、立花は下から真壁をにらみ上げる。先輩にため口、片耳のイヤホンはとらない。真壁に負けず劣らずの態度だ、かなり腕に自信があるように見える。よかった、一瞬で勝負が決まることはなさそうだ。


「俺は武田の仲間の真壁ってもんだ、聞いたことくらいあるだろ、武田がお前をこのグルに誘えって言われてなってことだ。当然受けてくれるよなぁ」


 真壁はまたぽきぽきと指を鳴らす、暴力的な恫喝だ。


「いやだし、あんたみたいなやつは死ぬほど見てきたから、悪いことは言わないから帰りなよ」


 立花は脅されているというのに余裕な表情で一切の動揺もしていない。場慣れしているような感じだ。


「ああ、心配してくれれありがとよ、でも今から自分の心配もしたほうがいいぜぇ!」


 真壁が左腕を思いっきり振りかぶる。それでも立花は動じないどころか動かないでため息をついている。


「かってえなぁ」


 立花の顔の直前で真壁のこぶしが止まる。


「なかなか堅いバリアだがこんなもんで止められるかよぉ!」


 ブンッ


 ためた真壁の右ストレートが立花のバリアを薄い氷の幕を破るように突き破った、それに驚きつつも立花はぎりぎりでよけ、その鋭いパンチが立花の頬をかすめる。そこまで立花の余裕の表情が崩れ、おもわず後ずさる。彼女にとっても予想外の威力だったようだ。


「ククク、お前が今まで相手してきた雑魚とは一味も二味も俺は違うぜ、ふんぞり返られんのも今日までだ」


 真壁は不気味に笑う。雰囲気や外見も相まって強い悪役感がにじみ出ている。

 あいついやいや武田に従ってたみたいに言ってたけどこういうのは楽しんでたんだろうなぁ。


「はぁ、忠告はしたからね」


 落ち着きを再び取り戻しだるそうに、背負っていたギターケースのチャックをゆっくり開けた。少し開けたところで異様なまでのオーラを感じる。

 これはヤバイのがくるな、神童とよばれる所以が。

 そして俺は次の光景に目を疑った。






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