第20話 お布団

 父さんが爆弾発言をしてから日が経つのは早く、今日は土曜日の朝。昨日は紗耶さんの手作りハンバーグを堪能させてもらった。


 あれは美味しかった。虜になってしまったと言っても過言ではない。母さんが作ってくれるのとは違う美味しさがあった。ふわっふわの肉汁ジュワータイプ。


「じゃあ行ってくるね紗耶ちゃん、真夏。紗耶ちゃん、真夏のことお願いね」


「はいっ、任せてください! この私が責任持ってお世話します!」


「頼りになる子がいてくれて助かったわ。それじゃあ新幹線の時間もあるしそろそろ出発するわね」


「はーい。気をつけて行ってきてください」


 朝と言ってもまだ早朝6時。めちゃくちゃ眠いのに叩き起こされたと思ったらお見送りをしろとのこと。


 まだ意識が半分も覚醒していないので母さんの話なんて全く頭に入っていない。早く行ってもらってまた寝たいとまで思ってしまう。


 そうこう考えているうちに本当に母さんと父さんは行ってしまった。家の中が静まり返り、朝の涼しい室温が身体を包む。


「えーとじゃあ俺は……まだ寝ます……」


 せっかくの土曜日。母さんたちが旅行に行っていないことだし今日は10時くらいまで寝ていよう。いつもは土日でも8時には起こされてしまうからな。


「また寝ちゃう? 真夏くんが起きるなら私も朝食の準備しようかなと思ったけど、それなら私も一緒に寝ようかな」


 俺が2階に上がろうとすると後ろをピッタリと付いてくる。その後もピッタリついてきて……


「ってそこまで来るなー!」


 そのまま一緒の布団に入ろうとしてきたんだけど。当たり前かのように俺の布団に入ってきたからびっくりした。


 ちゃんと紗耶さんの布団もあるというのに。可愛らしい布団で俺は触れることすら神々しくて無理。


「だって一緒に寝たいんだもん。あぁまだ少し布団が温かい。真夏くんの温もり〜。私がくっついても問題ないしでしょう? だってさ……私たち許嫁だよ?」


 そう言ってぐいぐいと布団の奥の方へと侵入を進めてくる。くっ、ここは俺のプライベートゾーン。侵入を許すわけにはいかないが、無理矢理追い出すのも難しい。


「えへへ。一緒に寝れて嬉しい。じゃあ寝よっか」


 結局同じ布団で寝るということになってしまった。これは仕方ないことだ。だって無理に追い出そうとして怪我させるなんて言語道断だし、まず紗耶さんにそんなに触れないし……


「ってなんでそんなすぐ寝れるんだよ」


 一瞬で眠りについた紗耶さんの寝顔。少し幼く見えるのがまた可愛らしい。


「変なこと考えないで俺も寝よう」


 そうして俺も本日二度目の眠りについた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る