第16話 連絡先

「ふぅ。やっと放課後……」


 今日はいつもの数倍疲れた。その理由は今日が27日だからだ。俺の出席番号が27。そしてよく先生がやる日付で発表する人を選ぶやつ。


 今日は何回も餌食になってしまった。俺は人前で発表するのが得意でないため疲れた。


「よーし。今日は図書室行ってラノベ読むぞ! 真夏さっさと荷物を持つ!」


 大翔も授業中は死んだような顔をしていたが、6時間目が終わった瞬間に息を吹き返しイキイキと帰りの支度を始めていた。大丈夫か大翔。学校はラノベを読むのがメインじゃないんだぞ。


 とはいえラノベを読むのは賛成だ。都会の高校なら巨大ショッピングモールに行ったりお洒落な喫茶店に行ったりして放課後を過ごすのだろう。


 しかしここは山口県下松市。そんな場所はないのだ。高校生が集う場所はサン○ブがユメ○ウン。どっちも俺にとっては敷居が高い。


 そんな俺たちに放課後の人の全然いない図書室は天国のような場所だった。落ち着いていて結構沢山のラノベが置いてある。


 もう半年くらい通っているが半分くらいは残っている感じだ。


 昨日読めなかったラノベの続きが読みたいし、早く図書室に行こう。そう思った時だった。


「……」


 ジーッと見つめる紗耶さんがいる。友達と3人で話してるのに目線がずっと俺の方を向いてる。


 そうだ。なんか勝手に一緒に帰って勉強するみたいなことになってたんだった。


「ちょっとトイレ行きたいから先に行っておいてくれ」


 紗耶さんにも聞こえるくらいの大きさで言うと、気づいたのが紗耶さんも立ち上がってトイレの方向に歩いていく。


 そしてトイレを通り過ぎて人気がないところで止まった。紗耶さんの後ろを歩いていた俺もそれに合わせて歩みを止める。


 クルッと俺の方を振り返った紗耶さんは大きくほっぺたを膨らませていた。その姿はいつもからは想像も出来なくて。まるで小さい子供のようでなんだが憎めない。


「どうして図書室に行っちゃうの! 先に私が約束してたのに!」


 地団駄を踏む紗耶さんはここが学校だということをすっかり忘れているようです。


「ご、ごめんって。ただちゃんと寄り道はせずに真っ直ぐに帰ってくるから。だから機嫌直してよ」


 なんでこんな夫婦みたいなこと言っているんだろう。それも俺は立場の弱いタイプの旦那のようだ。


「分かった。今日は我慢する。でも早く帰ってきてね。帰る前に一言連絡欲しいな」


 もうそのセリフは夫婦なんだよと言おうとするとをグッと堪える。


「分かったよ。学校出る時に連絡する。LINEでいいよね」


「うんもちろん。通話でもいいよ♡」


 あぁ可愛い! 一瞬抱きしめてしまいそうになるのを抑えて努めて冷静に対処する。


「あ、でも私たちまだLINE交換してないね。昨日真っ先にしておくべきだったよ。えーとここのタップして……出来たっ。これ私のQRコード」


 差し出された画面には言われた通りQRコードが表示されている。俺もLINEを起動して読み取る。


 表示されたアカウントにはちゃんと藤本紗耶とあり可愛らしい紗耶さんの写真がある。


「やったっ。真夏くんの連絡先ゲット! これでいつでも連絡出来るね」


 とても嬉しそうに俺のアカウントを眺める。


「じゃあ帰りを待ってるね真夏くんっ」


 そう言い残すと友達の待つ教室へと駆けていった。


「本当、紗耶さんは元気だな」


 俺も大翔の待つ図書室に行くとしよう。スマホをしまって紗耶さんとは反対の方向へ歩みを進める。


 今日は早めに切り上げないとな。少しだけ帰るのが楽しみになった。






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