#7 半熟アルバイト

『こんばんは。来週のシフトって、まだ出てないですよね?』


『そうですね。早く組まないとヒデさんが困っちゃうから、早くしないと』


『確か来週って、色々変えないといけないんですよね?』


『はい。私が来週は水曜ダメで。ごめんなさい』


『大丈夫です萩谷さん。私が水曜に移るんで』


『ありがとうございます』


『じゃあ私が水曜と、いつも通り月金でいいですか?』


『いや、それは待ってください。週3はおかしくないですか?』


『だって清瀬さん、いつも週3じゃないですか』


『それは事前に決めたことでしょ』


『私水曜の代わりに、月か金入っちゃダメですか?』


『いや無理です』


『じゃあ清瀬さん、火曜か木曜か日曜、譲ってください』


『私土曜無理なので……』


『でもこれだと私週1になっちゃうんで』


『それは萩谷さんが悪いんでしょ?』


『どうしても外せない用事なんです』


『用事って?』


『水曜の夜じゃないとダメな用事って何かありますか?』


『結婚記念日なんです 15周年の』


『あれ、そんなに続いてたんだ笑』


『仮面夫婦なのに』


『義両親も来るから』


『あぁ、そういうこと』


『義両親来るなら仕方ないかぁ』


『分かってくれました?』


『じゃあ清瀬さん、融通お願いします』


『おかしくない? そこは吾野さんでしょう』


『たくさん入りたいのはみんな同じ。ここは清瀬さん』


『ありえない。吾野さんが譲るべき』


『ここで言ってても埒あかないので、ヒデさんに決めてもらうのは?』


『なんで萩谷さんがそんなこと言うの』


『萩谷さんがそれ言うのはずるいよ』


『なんですか2人して』


『だって彼だったら絶対私が譲るべきってなるもん 萩谷さんと清瀬さんがお気に入りなんだから』


『いや別に私、お気に入りってわけでも』


『そうやって謙遜するのやめてくれない? ウザいから』


『そうやってストレートに悪口書き込むから嫌われるんですよ』


『あんたに嫌われたって関係ない』


『いっつもヒデさん言ってるよ、聞くに耐えないような悪口が多くてやってらんないって』


『萩谷さんのことだって、時々困るって言ってるし』


『はぁ? そんなん聞いてない!』


『いや陰口って本人が聞くもんじゃないからww』


『煽って何が面白いの?』


『まぁまぁ ここで炎上したって仕方ないじゃない』


『清瀬さんに言われるのもなんかムカつく』


『負けた感じするよね』


『来週でこの関係も終わるんだからさ 最後くらいはもう少しマシに』


『清瀬さんだからそんなこと言えるのよ』


『そうやって噛みつく所が嫌われるって言ってあげてんのにまだ分かんないの?』


『言ってあげてるって何?』


『別に キツい性格の吾野さんにアドバイスしただけ もう遅いけどw』


『あんただって負け組のくせに』


『私は次があるから この中で一番若いし』


『ほら、もうやめようって 話を戻そうよ』


『萩谷さんが水曜無理だって言ってた所から始まったんだからね』


『はいはい わかってまーす』


『じゃあ私で都合つけるから、火曜か木曜か日曜のどこかをあげるよ』


『勝者の余裕』


『吾野さんはうるさい』


『清瀬さん、日曜いいですか?』


『2日連続じゃん萩山さん』


『いいじゃないですか、最後なんだから』


『分かった。日曜いいですよ』


『じゃあ清瀬さん、火曜か木曜のどっちか私に譲って できれば木曜』


『なんで吾野さんまで』


『連日なら泊まれるじゃん 萩谷さんだってそれ狙いでしょ?』


『そういうわけじゃないのに』


『ね、清瀬さんお願い いいでしょ? もう再来週からは清瀬さん週7なんだから』


『またこういう状態にならなければ、の話ですけど でも来週1回なんて嫌です』


『うるさいよ! 私のいうこと聞いてよ!』


『吾野さんだようるさいの』


『当たり前でしょ? 私が本妻なのに、なんで再来週から本妻になる女のいうこと今から聞かなきゃいけないのよ』


『だからうるさいって』


『仮面夫婦だろうが、結婚記念日できるような旦那持ってる女に言われたくない! 私はこれからヒデを失うのに』


『ヒデさんの浮気癖がひどいから、いっそのこと旦那を非常勤シフト制にするって言ったの吾野さんじゃん』


『最後の週くらいいいでしょ 本妻は私』


『分かりましたから じゃあ月水木金が吾野さん、土日が萩山さん、火曜が私で』


『良かったですね清瀬さん 再来週からヒデが常勤で』


『最後までほんとウザいね吾野さん』


『まぁ、半熟女みたいな私達が人様の旦那取り合ってる時点で色々ヤバいのよ本当は 吾野さんのことばかりウザいって言う資格はないわ』


『清瀬さん、最後に正論ブチ込まないで』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る