第4話


いくら頭が回りきっていないとはいえ、彼女の美しさには気づかずにはいられなかった。


美容師という職業柄、高遠は女の素顔を見ることが多い。


だが、すっぴんの状態で、ここまで綺麗な人間は見たことがなかった。


もしかすると高遠が知らないだけで、女優やモデルのたぐいなのかもしれない。


年齢については見当がつかなかった。


十代の少女と言われても頷けるし、二十五歳の自分と同じか、あるいは年上でも違和感はない。


髪の色と目の色がともに赤味がかった茶色なので、毛髪は染めているのではなく地毛のようだった。


ピピピピッと耳ざわりな電子音が鳴り響き、続いて『起床時刻です』と携帯電話のアラーム機能が七時を告げた。


そろそろ家を出る支度したくをしなければならない。


高遠が反射的に洗面所のほうへ目をやると、


「昨日は楽しかったねー」


ふわりと背後から抱きつき、彼女は耳元でささやいた。

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