第4話 お弁当

 全ての縫合を終え、解剖が終了した。 全員で再度黙祷する。


 ……私は涙を流しながら『……今日の事は、誓って生涯忘れません。 臨床検査技師になれたあかつきには、お一人でも多くの患者様の早期発見に努めます。』……と、心の底からお祈りした。


 ……今思うと『漫画家になる夢』を持ちながらも、『デザイナー専門学校』に行かず、最終的に病院に勤める道を選んだのは、この日の経験があったから……だったと思う。




 大分だいぶ遅くなったが、その日のお昼ご飯は、病理検査室の先輩方がお弁当を買って来て下さった。


 当然、焼肉弁当だ。


 厳しい洗礼……と思いきや……


 意外な事に、お肉はとても美味しく食べられた。 ……もっとも、川崎君は、あまり食欲が無かったようだが……。


 ……その代わり、私はしばらく『高菜』のお漬物が食べられ無くなった……。


 ……胆汁の色に似ていたからだ……。

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