第16話 並行世界(短編)の夢



 3月 ???


 不思議な夢を見た。

 すみれが小学校までで野球をやめて、中学で弁当を作ってくれて、高1の5月に母さんが死に、俺はプロ野球選手になってすみれがアナウンサーになる夢。

 俺は日本代表になってオリンピックで金メダルを手に入れて30代で沢村賞を取っていた。

 目が覚めても妙にリアリティがありすぎる。あれは本当にただの夢だったのだろうか?




「って夢を見たんだけどどう思う?」



 家族が揃っている朝の食卓ですみれに聞いてみた。



「まあ、ただの夢でしょっていいたいけど…いくつか気になる事があるわ。夢の中では武田ママはどうして亡くなったの?」

「去年の5月に朝のウォーキングをしてたら通学路にある花屋に車が突っ込んだ事故に巻き込まれて、だったな。」



 母さんは現在朝のウォーキングをしているが始めたのは去年の9月からだったな。



「4月からにすみれちゃんが料理を教えてくれって言ってなかったら5月はウォーキングしてたかもしれないわね~。」

「母さん、それちょっと笑えない。」



 少しだけ背筋がヒヤリとするがもう過去の話なので大丈夫だろう。

 階段から落ちたなら階段に気を付ける。病気なら早めに病院へ行く。すでに終わった交通事故は警戒しようが無い。

 それと、夢の中ではもう1つ気になることがある。



「すみれが小学校で野球をやめる可能性ってあったのか?」

「んー…ちょっと恥ずかしい話になるんだけど。」



 すみれはちょっとだけ躊躇うようにして言った。



「たぶん、夢の世界のあたしは野球よりもあんたに張り合う事が大切だったのよ。私は野球が好きで、高みを目指すためにあんたに託して支える側に回ったけど、夢の中のあたしはあんたと張り合いたかったから野球に料理にアナウンサーにってなったんじゃないかしら。」



 そう言われるとしっくりくる。確か夢の中では張り合っていたけど…今はそれに比べると、こう、向かい側じゃなくて隣にいる感じだな。

 夢の中の関係性も面白いし、外から見る分にはあっちの方が楽しいかも分からんけど。でもよく似た並行世界のような夢だったな…



「すみれはさ、夢の中の張り合う関係と、今みたいな隣で支えあう関係のどっちが好きだ?」

「…好きになっちゃったら隣しか無いでしょ。ほら恥ずかしい話になった。」







「ところであたしも気になることがあるんだけど…夢はとてもリアリティがあったのね?」

「おう、目が覚めても本当に夢だったのか不思議に思うくらいには。」

「あんたはオリンピックで投げるくらいのピッチャーになっていたのね?」

「そうらしい。」


「じゃあ日本代表になったあんたが夢の中で投げていた球種は?」

「断片的な記憶だけど気持ちよくカットボールとカーブ投げてたのは覚えている。」


「よし、忘れないうちに日本代表レベルのカットボールを体に染み込ませるわよ!」



 なんか上手いことそこそこいい感じのカットボールが投げられるようになった。




ーーーーーーーーーー

※気合い入れてラブコメ書こうとしたらプロット完全崩壊してイチャイチャ野球物になってしまったという話。先は完全に未定だけどもうケンカップルコースは完全に消えてイチャイチャ野球物路線になりそうなので新タイトルを考え中です。あとカーチャン死亡フラグが消えました。


 ぶっちゃけると連載のプロットは【両親死亡からのすみれ住み込み&母の味で支えて初めて異性や失いたくない家族のような存在として認識する】予定だったのですが…なんか1年目夏に大きく進展してしまいまして。どこでそうなったかというと連載の初っ端で張り合うのやめて託す宣言して向かい側から隣にきてしまったことですね。もうどう煽っても張り合いじゃなくて後ろから抱き着きながら煽ってるようなポジションに。

 第一話でやらかしてるじゃんって今気づきました。くそう、もう明日の朝あたりにタイトルを【幼馴染良妻が支えてくれる俺の無双野球人生】にするしかない…!

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