第14話 練習試合のモブ視点



 1月下旬 モブide



 俺達、百足育英は隣県の大蛇高校までバスで来た。

 大蛇高校って昨年夏は県ベスト4だろ?俺たちは甲子園2回戦だぜ?格下相手の練習試合だな。



「おい、お前ら。夏の甲子園まで行けたのは3年生の力あってこそだぞ。気を引き締めろ。」



 なーんて監督は言うけど秋大会だって圧勝だったし、春の甲子園は決まったも同然だろう。格下相手に舐めて勝つくらいでちょうどいいってみんな思っているさ。

 それだけ強い俺達だけど普段は山の中の全寮制男子高校、彼女?出来るアテが無い!!

 だから去年のクリスマスは大蛇駅の駅前までやってきて肉体美を見せつけながらカップルの邪魔をしてやった。ざまーみろ。


 そんな俺達に手を振ってくれた女神もいたけど男連れだったんだよな…しかも下手したら俺達より肉体美の凄い…あー別れてねぇかなぁ…



 大蛇高校の第2グラウンドへ行き準備体操とアップをする。メイングラウンドでこれから練習試合だ。

 あの女神は恐らく高校生だろう、だから今日の練習試合で華々しく活躍すればあんな女の子から告白してもらえるかもしれない!そう思って余裕を見せながら圧勝してやるぜ!

 共学だから女の子たちがきっと練習試合を見に来ているはずだ。アピールしてやんぜへへ!



ズドオン!!



「…あの投球練習しているバケモノ何?え、1年?嘘だろ?」

「俺178㎝あるけどアイツの方がデカイから180㎝あるよな?1年?」

「うわっ、めっちゃ曲がってるwww …あれさ、ウチのエースの決め球よりエグくね?」



 舐めプで圧勝しようとか言ってた空気はUMAを見たような戸惑いの空気に変わっていた。練習試合が始まって俺たちは三者凡退、誰も前へ飛ばせない。



「なーに、こっちも打たせなきゃいいんだよ!俺も決め球はシンカーなんだぜ?」

カッキーン!!



 とかなんとか言ってたウチのエースの決め球はホームランを打たれた。は?今ホームラン打った巨漢も1年?マジかー…



「おいみんな。モテようとか舐めプで勝とうとか忘れろ。フェアプレーしつつ絶対に勝つぞ!」

「でもキャプテン!クリスマスに俺達に手を振ってくれた女神みたいな彼女欲しくないっスか?泥臭さより華々しく勝ってモテたいっス!!」

「泥臭くやっても勝てるかわかんねェんだ諦めろ。」


「ああ、クリスマスの女神の幻影が見えてきた気がするぜ…向こうのチームのベンチで声を出している幻影が見える…」

「その幻影がベンチに戻ってきた相手ピッチャーに抱き着いているように見える…」

「「「幻影だと思いたい」」」



 そーいやあの時、女神の隣にいた男との身長差ってあんな感じだったような…とか誰か言って空気が死んだ。あ、女神からタオルで頭をわしゃわしゃと…



「ええい!あいつから絶対に打つぞ野郎ども!!」

「「「おう!!」」」



 この後、あのバケモノが降板する7回まで普通に抑えられて。8回9回で2点返したけど追いつけなくて負けた。打てるイメージが湧かないから春の甲子園じゃ俺達と当たる前に消えてくれますように…え、秋大会2回戦で負けたからたぶん春は出ない?あぶね助かった!!



「普段の練習が野球好きのおっさんしか見学してなくて不貞腐れたくなるけど…もうちょっと練習頑張ろうぜ…」



 そうキャプテンが締めくくり。監督が頷き。俺たちの練習試合は終わった。相手のバケモノの感想?ああいうやつがプロへ行くんだろうなって思ったよ。

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