第12話 クリスマスデートの参考動画



 12月24日、12月25日。

 日本では恋人の祭典、クリスマスである。


 2日連続で体を休める日に充てられるよう練習スケジュールを調整したのですみれは俺の部屋に泊まってずっと一緒だ。


 まあ、クリスマスじゃなくても…文化祭の日以降はまた距離が縮まったので。

 夜9時に突然「寝に来た」って俺の部屋に来たりするくらいまで進展した。そのまま部屋で野球談議になることもあるけど。恋人として進展しても相棒でもあるんだ。


 そう仲が深まったことも関係しているのか、さすがにクリスマスの宿泊に関しては両家の親も思う所があったようで避妊の大切さを説かれた。誤解が酷い。

 そういうのは高校卒業してからだとしっかり弁解しておいた。弁解は武田家両親、上杉家両親の前で2回した。そして2回ともすみれが当たり前のように最後に一言。



「その時は私は大学生か専業主婦かなー。」



 結婚前提でお付き合いをしていますと両家の親に言うハメになった。軽く小突いてやりたくなったけど横で嬉しそうにしていたので撫でまわしておいた。

 両家の両親から目に毒だから高校卒業したら2人暮らししろと言われた、解せぬ。





 クリスマスデートなんて初めてなので、ここは野球ゲームのデート先を参考にしてみようって話になった。もちろん本気で参考にするわけじゃない「ちょっと見てみようぜ!」ってノリだ。

 野球ゲームって言ったのに野球バラエティゲームのプレイ映像を流し始めたあたりで嫌な予感がした。簡単に言うと彼女が幽霊だったり超能力者だったり犬だったりヤギだったりするゲームだ。

 あまりにも面白くてプレイ動画を漁っていたら日が沈んでいた。クリスマスイブとは??


 このままではいけない、恋人らしいクリスマスにしようと手を取り合い駅前にあるという大きなツリーを見に行くことに。

 駅前はクリスマスらしい非日常な光景であふれていた。右を見れば男女、左を見れば男女、少し離れてマスクを被って半裸で筋トレする集団。関わらないようにしよう。



「ああいうあきらかにネタっぽい人たちがストーリーに大きく絡んでいたりするんだよね。」

「野球バラエティゲームの世界じゃないんだから。」



 すみれさんや、関わらないでくださいアレに。手を振るのはやめましょう。

 半裸集団が飛び跳ねながらすみれに手を振り返してきた後、俺の方見て地に崩れ落ちる。申し訳ないけど愉快な集団だなぁ。



 ツリーを見てイルミネーションも見て指を絡ませあったりして。

 家に帰ってすみれとくっついて……野球バラエティゲームのバッドエンド集を見た。下手なホラーよりずっと怖かっためろんぱん…


 この後めっちゃ添い寝した。あんなものを寝る前に見たら1人で眠るとか無理だろ!




 反省して翌日は動画を見なかった。

 すみれとクリスマスプレゼントの髪留めとリストバンドを交換した。

 ん?この紙もセット?何この紙。



 俺の名前以外全部埋まっている婚姻届け。



「もしもこの紙を紛失して、誰かが夫の名前の所を書いたらあたしその人と結婚することになっちゃうな―怖いなー埋めといて欲しいなー。」



 ねえ、そんな脅し方ある?

 滅茶苦茶緊張しながら自分の名前を書いた。婚姻届けはすみれ預かりになった。



 すみれはぎゅっと婚姻届けを胸に抱き、婚姻届けを写真に撮り、スマホを操作し…さすがにそれを待機画面にするのはちょっと待とうか!?

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