恐竜騎士道

椎茸仮面

第1話 誕生、竜騎士

人間の住む世界とは少し違う世界。

 周りには騎士だったものがそこら中に広がる荒野で2人の騎士が剣を交えていた。

 1人は赤い炎を、もう1人は青い炎を剣に纏わせていた。

 その戦いは激しく、戦場を2人だけのものとした。

 そして、決着は…………




 現代の日本、G県T市。

 とあるアパートの一室で、セーラー服を着た茶髪のショートヘアの女が、ヨダレを垂らしながら寝ている黒髪の男を汚物を見るような目で見ている。

「起きろ、くそ兄」

 そういうと男の腹に勢いよくかかと落としを放つ。

「うげぇ……」

 男は腹が割れたかと思ったが、実際そんなことは無い。

 妹が殺人兵器とかターミネーターでも無い限りそんな事ないだろうと実感する。

「全く……少しは俺の妹として優しく起こしてくれないものかね……」

「黙れこの多細胞生物」

「ひでえ……」

 男は起き上がり、妹を部屋から出して制服に着替える。

 男はリビングに行くと、机の上に朝食の目玉焼きとご飯と味噌汁が置かれていた。

 男はそれらを口に流し込み、アパートを出る。

 アパートの駐輪場から灰色のマウンテンバイクを出し、高校へ向かった。

 彼の名前は橘 蓮《たちばな れん》16歳の高校生。

陰キャか陽キャどちらかと言えば陰キャで、かといってそこまで陰キャでも無いという微妙な立ち位置にいる。

 そんな彼にはある特徴がある。

 それは、赤い瞳を持っている事だ。

 同時刻の山中、

 1人の男が怪人と戦っていた。

 怪人は身体中がダンゴムシの背中のような甲殻になっており、口からは節足の様なが飛び出ていた。

 男は水色のショートで水色の瞳をしており怪人に応戦していた。

「この怪人……強い」

 怪人は男を殴り飛ばし、空に向かって唸り声をあげる。

 男は山の斜面を転げ落ち、身体中に傷を負ってしまう。

「あまり使いたくは無いけど………竜装《

りゅうそう》!!!」

 場所は戻って蓮の高校。

 高校に入って2ヶ月程経ち、友人が4、5人出来ていてもおかしくない頃だが、彼はあまり友人を作らなかった。

 あまり人と話すのが好きではなかった。

 唯一出来た友人は。

「おい蓮〜土日どっか遊ぼうぜ〜」

 後ろの蓮に話しかけてきたこの少し乱れた金髪の男、彼が蓮の唯一の友人。

 彼の名前は宮野悟みやの さとる。明るく人当たりが良く、クラスの中で陰湿な蓮とは違い、クラスのムードメーカーで蓮とは真逆の存在とも言えるのだが、蓮が唯一心の底から話せる人でもある。

 そんな悟に構わず、蓮はスマホを弄っている。

 悟もそんなに蓮をいつもの事の様に話を続ける。

「どこ行くんだよ。ラウンドワンか?」

「ラウンドワンかぁ〜漫画買いすぎて金ねぇんだよなぁ〜」

「まぁ電車とバス乗り継がなきゃ行けねぇしなぁ」

 悟がため息混じりに言う。

「本当にこの街田舎だよなぁ」

「まだ近くに電車とかあるだけマシだろ」

「360度見渡してみろよ?全部山だぜ?山しかねぇよ。もっとさぁいい遊び場とかねぇの?」

「知らね」

「なぁんかいい事ねぇかなぁ……空から女の子降ってくるとか」

「ラピュタかよ」

 蓮が鼻で笑った。

 そんな平和な日々が続いていく。

 2人はそう思っていた。

 あの時までは。

 放課後。

 悟と蓮は自転車を漕ぎながら、田んぼ道を走っていた。

「なぁ〜蓮、まだあの玉持ってんの〜」

「また見たいのか?」

 2人は自転車を道の路肩に停め、蓮は鞄から赤い水晶の様な玉を取りだした。

 それを2人は田んぼの端に座って眺めた。

「うっわぁ……相変わらず綺麗だな……磨いてんの?」

「いや、何もしてなくても綺麗なんだ。1回だけめちゃくちゃ光らせようとして磨いてみたけど、これ以上綺麗にはならないし、汚くもならない」

「へ〜」

 蓮の持っている水晶は、彼の祖父から貰ったものである。

 祖父はもう既に他界しており、蓮に遺言を残している。

『蓮、お前は誰にも持っていない力を持っている。その力はいつか気づく、その力を平和の為に使え』

 その遺言を貰ったのは、蓮が3歳の時で蓮も少しあやふやになっている。

「おじいちゃんが亡くなった時に貰ったんだけど、その時の遺言があんま良く分かってないんだよな……俺しか持ってない力ってなんだよ……」

「あー前に言ってたなそんな事。でも、そんなの誰でも持ってるだろ」

「え?」

「だってさ、織田信長じゃなきゃ桶狭間の戦いは勝てなかっただろうし、坂本龍馬が居なきゃ開国なんて出来なかっただろうし、それぞれが持ってる力があると思う。そういうのを個性って言うんじゃ無いか?要するにお前のじいちゃんが言いたいのは、個性を生かして生きろって事じゃねぇの?」

「お前は天才か?」

「天才じゃねぇよ。ただ俺がそう考えただけ」

 その時、森の方から何かが2つ飛び出してきた。

 1つはダンゴムシの様な甲殻を持った怪人とも言える化け物。

 もう1つは鎧を纏った騎士だった。

 その騎士の兜は扇のようなトサカに、前方に2本のツノが生えていた。

 鎧の肩パーツにも、似たような物がついていた。

 そうそれは、中生代後期白亜紀に生息していた角竜の1種

 右手にはレイピアと呼ばれる針のような剣を持ち、左手にはトリケラトプスの頭を模した盾を持っていた。

 しかし、騎士は苦戦を強いられてるように見える。

「何だあれ?ヒーローショー?」

 悟が近づこうとするが、ヒーローショーの様なカッコ良さはなく、本当の戦いのようで、騎士の息もとても荒かった。

 騎士は盾で怪人の攻撃を防ぐので精一杯で盾で防いでいても吹き飛ばされていた。

「ぐっ……」

 怪人は騎士を吹き飛ばし、2人の元に転がってくる。

 騎士は言った。

「ふ、2人は早く逃げて!」

 その鬼気迫る必死な声に2人は怯えた。

「やべぇぞ蓮。逃げるぞ!」

 2人は逃げようとしたが、蓮は足がすくみ、転んでしまった。

「蓮!」

 怪人は蓮に少しづつ近づいてきた。

 しかし、騎士が抱きついて食い止めようとした。

 怪人は気にすることなく、蓮に近づく。

 蓮は、腰を抜かしてしまい、起き上がれない。

「蓮!早く!」

 怪人は蓮の首を掴み、思い切り締め始めた。

 蓮は上手く息が出来なかった。

「う……ぐぁ」

 すると、赤い水晶玉が怪人を弾き飛ばした。

 騎士も吹き飛ばされていた。

 蓮も吹き飛ばされ、地面に尻もちをつく。

「なんだ……これ」

「蓮!早く逃げろ!今のうちに!」

 赤い水晶玉は蓮の体の中に入った。

「うっ……」

 蓮の心臓は強く鼓動し、身体中が熱くなった。

「なんだよ……」

 蓮の頭に直接なにかが響いた。

『貴方は、運命を決めようとしています……』

「え……?」

『あれを倒すのであれば……貴方は辛く、残酷な運命へ進もうとしている……』

「あいつを倒せと……俺に言いたいのか?」

『それは貴方が決めてください……ただ、貴方にはあれを倒す力がある……それだけの事』

 蓮はあまりの出来事に理解が追いつかなかった。

でも、その力がどんな物なのか、それは分かったと思った。

(これが……

 蓮は立ち上がった。

「蓮!早く!」

 悟は蓮を必死に呼び戻そうとした。

 蓮はこう答えた。

「俺、あいつ倒すわ」

 悟は驚き、すぐに返した。

「無理だって!逃げろ!」

 怪人も立ち上がり、蓮に襲いかかった。

 その時、蓮の腰に赤い水晶の入ったバックルが浮かび上がった。

 そして、蓮は言った。

「竜装」

 すると蓮は赤い炎に包まれ、怪人はその炎で近づけなかった。

「蓮……?」

 騎士もゆっくりと立ち上がってその光景を見ていた。

「まさか……」

 赤い炎が消えると、そこには騎士がいた。

 鎧は、右肩から左脇にかけて恐竜の横顔を模した模様をしていた。

 その恐竜は暴君竜とも呼ばれる。

 

「お、お前……その姿」

「悟、俺だけしかない力って………これかな」

 怪人は再び蓮に襲いかかった。

 すると、蓮の足元から剣が生え、蓮はそれを引き抜き、怪人に一撃を与える。

 怪人の腹には大きな切傷がついた。

 すると、騎士が言った。

「まさか……竜装鎧《りゅそうがい》レックス…!」

「竜装鎧?レックス?まぁいいや」

 蓮は更に剣で怪人の背中を切り裂く。

 悟も今の蓮なら怪人を倒せるかもしれないと確信した。

「いけぇっ!蓮!」

「分かった!」

 蓮は剣を構える。

 すると、剣に赤い炎が纏われ始めた。

「爆竜斬《ばくりゅうざん》」

 蓮は地面を蹴り飛ばし怪人に切りかかる。

そして、赤く燃える炎の刃で怪人を上下に真っ二つに焼き切った。

 怪人は上下共に燃えながら爆発し、地面に少しばかりの残り火が着いた。

 悟と騎士もまた吹き飛ばされる。

「蓮………」

 蓮は鎧を脱ぎたいと思った瞬間、鎧は消えた。

「やったぜ」

 蓮は悟に親指を立てながら言った。



「すげぇな!お前いつからそんなこと出来るようになったんだよ!」

「今日初めてだよ……って言うか疲れた……」

すると、騎士が2人に近づいてきた。

「って言うか、誰ですか?あなた?」

蓮は聞いた。

「話すと……長く……なりますが……とにかく」

騎士も連と同じように鎧を消した。

その顔は少し童顔で、水色の髪で水色の目をしていた。

しかし、先程の戦いで傷ついているのか、少し血が出ていた。

彼は蓮に近づきながら言った。

「貴方が……もう1人の…………王……で……す…ね」

彼は地面に倒れた。

蓮は少し間を開けて言った。

「俺が………王?」

To Be Continued

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