第22話 偵察のつもりが事前登録

 ハンターギルド総本部は街の北側にあるため、繁華街を通り過ぎて海沿いの道を進んでいく。

 港町のせいか鳥が多いが、フンなどはなく、しっかりと対策をしているようだ。

 心地良い日差しと潮風を感じながら歩いていると、5階建てで石造りの立派な建物が見えてきた。

 元々は王立造船工場の事務所として使われていたらしい。


「おー素晴らしい建物だな。石のつなぎ目も見事なものだ」


 職人の血が騒ぐのか、建築工房で働くタックが建物に感動している。

 ついでにグウェンさんも『おぉー』とか言いながら彫刻をペタペタ触って感動している。


 説明会は5日後なのでまだ開いてないかと思いきや、入り口は開いており、中に人だかりが出来ている。

 外から中の様子を覗っていると、中から職員らしき人がこちらへ来てくれた。


「こんにちは。ハンターギルドに登録希望の方ですか?」

「こんにちは。その予定なんですが、登録は5日後ですよね?」

「はい。ですが、当日は大混雑する可能性があるので、事前登録も受け付けることにしたんですよ。本日登録されていきますか?」


 下見で情報集めに来たつもりが、もう事前登録できるらしい。

 “スキルを調べるスキル”の事がまだわかっていないけど、どうしよう……。

 ちらりとススリーの方を見ると、ススリーも悩ましい表情をしている。

 タックとグウェンさんはまだ彫刻に夢中だ。


「登録ってどうしたらいいんですか?」

「あちらで登録申請書を記入して頂いて、その後にスキルチェックを受けて頂きます。それに基づいてハンターランクが決定し、カードが発行されて登録完了となります」


 出た! スキルチェックだ!

 一番知りたかったことを聞かなければ。

 それによって今日登録していくかどうするかを決めよう。


「スキルチェックってどうやってやるんですか?」

「あちらに“スキャン”というスキルを持った担当職員がおりますので、その者が握手などで少しお身体に触れさせていただきます。受ける側の方は特にすることはございませんよ」


 ニコッと微笑みながら説明をしてくれた。

 促された方向を見ると、時折スキャンを受けているであろう人を光が包み込んでスゥっと消えていくのが見えた。

 しかし、やはり原理が分からないため、まだ“模倣コピー”は出来なさそうだ。


 一度受けてみるしかないかな。

 覚悟を決めてススリーと目を合わせる。

 察してくれたようで、こくりと頷いてくれた。

 まぁ遅かれ早かれスキルは知られるだろうし、当日混雑して面倒なくらいなら空いている内に終わらせた方が楽かなとも思った。


「じゃあ登録していきます。今日してしまえば当日は登録しなくてもいいんですか?」

「はい。説明の方も本日受けていかれれば、当日はクラン員募集会の参加だけでも構いませんよ」


 ギルド側の人たちも大変だろうから、当日の負担を少しでも減らしたいんだろうな。


「わかりました。説明もお願いします」

「ではこちらの登録申請書に記入をお願い致します。書き終わりましたら、あちらにお並びください」


 彫刻や柱の造形に夢中だった2人を回収して、先ほどの話を説明する。

 2人とも特に異論はなく、むしろ遊ぶ時間が増えたと喜んでいる。


 申請書には氏名、年齢、性別、種族、居住地など一般的な項目に加え、授かったスキル、登録後に希望する活動内容(討伐、調査、研究、支援活動、その他自由記載)、活動予定地域、その他質問、要望などを記載するようになっていた。

 オレたちはスキルに関しては剣術、弓術、魔法などだけ書いておき、活動内容は討伐、調査としておいた。

 グウェンさんは支援活動に丸を付けておくことにした。

 活動予定地域はもちろんティルディスと王都ソルティアだ。

 質問、要望欄は今の所特にないので空欄で提出することにした。


 スキルチェック待ちの列には三十数名が並んでいる。

 人種は多様で、オレたちみたいに何人かで一緒に来ている人が多い様だが、獣人族が10人くらいの集団で登録に来ているようだった。

 若い人も多いが、それでも皆オレたちよりもやや年上のように見える。

 蜥蜴人族だけは見た目からの年齢が分からないが、少なくともオレたちより年下には見えない。

『鱗の色や質感で年齢がわかる』と聞いたことがあるが、さっぱり分からない。

 犬人族や猫人族なら顔はヒト族と似ているのでわかりやすいんだけどな。


 そんなことを考えている内に、列はどんどん消化されていく。

 近づくにつれて“スキャン”の結果を口頭で伝えているのが聞こえてくるが、どうやら各スキルのレベルがわかるという事らしい。

 その横で記録係の人が結果を紙に書いているようだ。


「ヴィト、どう? “模倣コピー”出来そう?」


 ススリーがこそっと聞いてくる。


「いや、やっぱり受けてみないと無理みたい。同じ見た目の魔法なら作れるけど、効果まではコピーできないと思う」


『“模倣コピー”も万能ではない』といういい勉強になった。

 そう考えると、神様に補助魔法や結界魔法を色々掛けてもらったりしたのはラッキーだったな。

 補助魔法の感覚がわかったから、今では自分も他の人に掛けられる。


 その間も聞こえてくる前の人たちの“スキャン”結果。

 年齢の分からない蜥蜴人族の人が槍術Lv6と言われて、『おぉー』とどよめきが起こっていた。

 Lvがいくつまであるのか分からないが、結構すごいことらしいな。

 他の人たちはLv1~5が多い様で、隠密術Lv6と言われた猫人族の人も『おぉー』と言われていた。

 魔法もちらほらいるようだが、Lv3くらいの人が多いらしい。

 オレたちもそのくらいなんだろうか?


 そしてオレの順番がやってきた。

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