第17話 来るべき日の為に

 お告げがあった日から3週間が過ぎた。

 その間、タックやススリーと共に剣術や魔法の訓練を行い、試行錯誤しながらも徐々にスキルや魔法の使い方がわかってきた。


 今まで剣など握ったこともなかったはずのオレとタックは、目にも止まらぬ速さで剣を振るうことが出来るようになっている。

 剣技や型など全く知らないはずなのに、なぜか昔から知っているかのように身体が動いていた。


 また、ススリーとの訓練では、規模の大きな魔法や周りに被害が出そうな魔法は使えないが、小さな魔法を繰り返し使うことでイメージがより明確になり、瞬時に発動できるようになってきた。

 ススリーにも詠唱はレシピだ! と説明したら、初めは何言ってんだコイツという顔をしていた。

 しかし、今では何となく理解してくれたようで、無詠唱での魔法も使えるようになってきた。


 一度実験で、『結界張っておけば大丈夫じゃね?』と思い、10m四方の結界を張り、中で爆発系の魔法を使ってみたことがあった。

 魔法が外に漏れだすことはなかったが、逃げ場を無くした全ての炎と熱風が自分に襲いかかってきた。

 慌てて結界をもう1枚張って難を逃れたが、またしても自分の魔法で死ぬところだった。


 その結果、『やっぱり魔法は危ない』ということの再確認と共に、『魔物を結界で閉じ込めて魔法をぶち込めばいいんじゃないか』という新たな可能性が見出された。


 もちろん一人になっても鍛錬を続けている。

 右手を広げ、親指先に小さな火の玉を灯す。

 なるべく小さく、1㎝くらいの火の玉を浮かべる。

 次に人差し指に水の玉。

 その次は中指に風の玉、薬指に雷の玉、小指に光の玉、という感じで順に指先に発動させていく。

 初めは小さい火の玉を作るのだけでも難しかったし、2つ以上異なる属性を同時に使うのも難しかった。


 しかし、連日暇さえあればやっていたら、徐々に出来るようになってきた。

 好きこそものの上手なれだ。

 今では両手の手根部を合わせて指を円形状に広げ、指先に異なる属性の魔法を灯し、さらにルーレットのように順次移動させることも出来るようになってきた。

 ウフフ……楽しいなぁ。


 その他の動きとしては、グロム国王からのお触れが出ていた。

 どうやらスキルを授かった者のリストを作成しているようだった。

 周りと比べても強い力を持つことが分かったオレたちは、それぞれが授かったスキルの詳細は伏せ、とりあえず剣術や魔法とだけ回答しておいた。


 その後、スキルを授かった者全員に通達があった。


 それは、八か国で会議を行った結果、各国が平等に人員や金銭を出資し、“ハンターギルド”という第三者機関を作ることが決まったため、魔物討伐に協力できる者はハンターギルドに登録をしてほしいという内容だった。

 ハンターギルドの総本部は、会議が開かれた、大陸の中央部にあるオズフェルト王国の王都ウィケッドに置かれ、他の国の王都には国内本部を置き、地方都市には支部が置かれるようだ。


 ハンターギルドに登録した者は、”ハンター”として魔物討伐や調査を行うとのことだ。

 ギルドに登録するメリットとしては、討伐や調査に見合った報酬が得られると書いてある。

 その他にも、討伐で得た報酬は、ギルドへの手数料が若干引かれるものの税は免除されること、別な国への移動や転居をする際に便宜を図ってもらえることなどがある。

 ただし、街や村に危険が迫った場合には、緊急招集されることもあるらしい。


 さらに通達では、共に戦う仲間と“クラン”という団体を作ることが推奨されていた。

 クラン員が討伐や調査などで貢献をしていけばクランの貢献ポイントが貯まり、クランに対して追加の報酬が出るとのことだ。

 特に優れた貢献をしているクランに対しては、各王都に拠点として使える場所を提供してくれるらしい。

 恐らく報酬を目当てに一人で無茶をする人を少なくしたり、優秀なハンターの所在管理をし易くするためでもあるのだろう。

 もちろんハンターギルドに登録しなくとも、登録して一人で活動したとしても、特に罰則などはない様だが、メリットもあまりない。

 登録後の討伐や調査にも義務やノルマなどは課せられていないようだ。


 ただし、設立したばかりなので、まだ確定していない部分や改訂されていく部分が多々あるだろう。

 組織を運営してから初めて気が付く事も多いと思われる。

 しかし、国ごとで対応が異なったり個々で纏まりなく動かれるよりは、組織を作り、人材確保や情報共有をしていく方が全ての人のメリットになるだろう。


 そしてハンターギルドへの登録や、クランの設立及びクラン員募集の合同説明会が1週間後に王都ソルティアで開かれるらしい。

 それについて話し合うために、オレの家にタックとススリー、そしてグウェンさんが来ていた。

 話し合いと言っても堅苦しいものでもなく、お茶とケーキを用意しての気楽なものだ。

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