第15話 しばらくの別れなのです。

 竜也と行為したあと、私は自分の荷物を整理することにしました。


(帰国すれば、次に来日する予定…いや、予算も無い。確実に留学するそのタイミングとなれば、2年後になるのは確実。今日の事は、お互いに良い思い出になったかな…。)


『帰る準備か?シェリー。』

「イエス。実は…。」


 私は一緒に来た兄が、空港でトラブルとなり一人旅になってしまった事を話しました。


『そうかー。女の子一人で旅行なんて不思議に思ってたけど、一緒に来てた家族がいたんだね。』


「兄は…私の両親、何とかする。私は、無事に帰る、大事。あ!タツヤ!フォト。」


 私はそう言って、スマホを取り出す。二人の笑顔が詰まったペア自撮り。それに留学について今一番問題なのは、まだ自分の両親に伝えていない事。この写真を見せたら両親を説得できるのかは分かりませんが、今回の度でとても重要な証拠になります。


『シェリーの顔。初めて会った時より笑顔になった。』

「あはは、病気のせい、あの時、ネガティブになってた。タツヤのおかげ、ノー。タツヤの家族が繋いだ。私も、前向いて、歩ける。自信、ついた。」


『必ず…2年後に再会しよう。約束だ。』

「イエス。約束。」


 私達は少し長めにキスを交わした。


 帰りの飛行機は格安航空で乗り換えフライト。出発は夕方の時間です。チケットをネットで予約し、準備は終わりました。すると、私と入れ違いでアメリカに渡ったナツミからのLINEメッセージが入っていました。


『ヤッホーシェリー。バタバタしちゃって返信遅れちゃった。てへっ。私はまだ現地居るよー。もし帰ってきたら、サンディエゴに行っちゃうかもよ。』


(ナツミ、無事に着いた。現地で連絡すれば、また会えるかな?)


 私はすぐ返信しました。


「ナツミ、明日の便で戻る。でも、時差あるからすぐ寝るよ。w」


(これでよしっと。)


 ここで思い出したのが、日本で買い物は自分の下着だけという事でした。


(んー。の写真が、お土産ってわけにいかない…よね。)


 ついそんな事を想像し、自然と笑顔がこぼれました。


(今日はいっぱい寝れるかな?)


 そう思いベッドに入ります。


(… … …)


 寝れない!!(2夜連続)


 竜也との別れが近いのと、先程までの余韻が残り、興奮して全く寝れる気がしません。


仕方がないので2夜連続でホットミルクを飲むため、リビングへ向かいます。


『…あ…。』

「…えっ?…。」

(やっぱりいるのね。)


 竜也もリビングにいて、私と目が合うなり少し照れ臭く視線を逸らしました。


『また…作ってくれる…かな。ホットミルク』

「…イエス。」


 私は喜んでホットミルクを慣れた手順で作っていきます。出来上がったホットミルクを私達は無言で口にします。


(なんか…何言って良いか分からない。)


 それでも、以前のような気まずい雰囲気ではなく、お互いに興奮が止まらないからです。時計を見ると日本時間で午後11時近く。竜也ママが仕事から帰宅するまで、まだ時間がありました。


「明日、アメリカ、帰る…。」

『うん…。そう…だね。見送りには行けないけど…、また…会える…よね』

「イエス、絶対、来る。」


 私達はそう言ってキスを交わす。彼とキスを重ねる度に、帰国したくない気持ちが強くなります。その気持ちだけは顔に出さまいと、私は笑顔を作りました。


『あはは…。なんか友人たちに悪いな…。俺、早生まれだから…、まだ13だしね。』

「タツヤ、生まれ、いつですか?」

『俺は3月…。日本じゃ学年の一番最後の方だよ…。』

「でも、歳…同じ。私…7月、14歳。だから大丈夫。あと…」


 私はどうしても聞いておかなければならない事がありました。


「私の体…。竜也、いっぱい、見てくれた。いっぱい、愛して…くれた。何も、思わなかったか?その…こんな…ボロボロの体…。」


 最後まて言い切る前に、竜也は私を強く抱きしめた。


『んな事ねぇよ。シェリーの傷は、だろ?仕方ない事じゃんか。それ以外はナイスバディーなんだから、それで良いじゃん。』


 その言葉を聞いて、私は自然と涙があふれていた。そしてその時何故か、自然に言葉が出ていた。


「ありがとう…。竜也は…やっぱり…俺の息子だよ…。」

『え?…父…さん…?』


「え?私…なんで…。」


 自分でも理由が分からなかった。でも、今回は意識の無かった数日まえとは違う。はっきりと自分の記憶に残っている。


『きっと父さんが僕に、直接言いたかったんだと思うよ。』


 竜也パパが、私として意識があった頃、私宛に書いたメモ。そこにも私の至るところに残る手術痕について書かれていました。


『君の歳でそれほどの傷跡が残るのは辛いだろう。もし、その傷跡を見ても君の事を大事にしてくれる男性が現れたなら、その出会いを大事にしてあげなさい。』


 その事を竜也に話すと、彼自身も納得しているようでした。


『僕が優しいのは、きっと父さんのおかげだと思うし、父さんは僕がシェリーの体を見ても大丈夫だと思ってたから、日本のこんな田舎まで行かせたんじゃないかな』


 確かに私自身、彼氏を作る予定だったら、告白を断ることはしなかったでしょうし、高価な飛行機代を自腹してまで、来日する事は無かったはずです。


「やっぱり、期待、してたのかも…。」

『父さんに感謝しないとね。命も、人生も、ね』

「…イエス。」


 その日も結局、竜也ママが帰宅するまで二人で語り合いました。


 翌日…。


 私は竜也ママの車で駅まで送ってもらいました。


『留学、できると良いな。』

「イエス。日本でも、私の病院、探さないとです。だから、いっぱい時間掛かります。両親も、分かってくれる。信じてます。』

『LINEすっから、いっぱい話そうな。』

「イエス…。」


 私達は別れ際に軽くキスをしました。


『あー。見せつけてくれるね。我が息子ながら。』

「ママさんも、元気で。」


 竜也ママは笑顔で手を振ります。


「シーユー、タツヤ!」


 私を乗せた新幹線は、一路東京へ向けて出発しました。

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