第10話 まるでドラマのような展開です。

『うんめー。悪ぃな。夕飯作ってもらうなんて。』

「いえ、私、食べることに制限、ある。だから、いっぱい、料理覚えた。タツヤ、美味しそうに食べる。私、嬉しい。」


 夏は1日が長い。夕飯時でも外はまだ明るかったけれど、二人で夕飯を食べる話になりました。しかしお互いに14歳であるため、近くのファミレスと言う訳にもいかず、私が夕飯を作る事にしたのでした。

 幸いな事に竜也の自宅には野菜類の備蓄があり、竜也が言うには祖父母が農家で、お裾分けが来るのだと言います。


「うん。美味しく出来た。」

(竜也は日本人だから、料理アプリで探した日本料理を初めて作ってみたけれど、良い具合にできた…。この味噌スープは…ちょっと薄い味かな)


『母さんにも、LINEで客が来てる事、伝えたから、今晩はうちに泊まると良いよ。丁度、1部屋空いてるし、さ』

「迷惑…でないですか?」


『大丈夫じゃない?それに姉さんの部屋だし、今は大学で都会にいるし、泊まるの女の子だから。』

「ありがとうございます。」


 リビングで流れる日本のテレビ番組よりも、今の時間がとても幸せに感じる瞬間でした。


 食事も終わり、私は食器類を手際良く洗い片付けます。


『家事とか完璧じゃん。うちの母さんにも見習って欲しいよなー。仕事忙しいからって、俺に洗い物させるんだぜ?』

「あはは、でも、ちゃんとやるですね。日本語で、親孝行、ですね。」

(まるで夫婦の会話みたい)


 私はふと、頭の中でそう思ってしまい、さっきまで忘れていた感情が、また爆破しそうになる。


(やだ…また彼の事考えてる…。)


 私は今少しだけでも彼と、距離を置こう考えました。


「あの、シャワー、浴びたい」

『あ、あー、そうだな。今日は暑かったし、汗かいただろ。』


 私は風呂場を案内してもらい、手前の脱衣所へ入りました。洗濯機や洗面台のあるその部屋で、私はようやくコンタクトレンズを外し、洗浄液に漬ける。


(はぁ…やっと一息ついた。今まで片目の異物感がずっと続いてたし、これで…落ち着いたわ。)


 片目は見えるので、メガネをかけずにそのまま衣服を脱いで下着姿になる。そして再び鏡を見つめる。鏡に映る自分の身体、いつ見ても痛々しい手術痕が、私の人生を振り返させる。


(こんな身体…、誰かに見せるくらいなら、一生独身でいた方が良い…)


 そう思っていた矢先、私にとんでもない事が起こりました。


 ガラッ!


『これ…タオル。つか…って…。』

「え…。きゃっ…うぐぅ…。」


 いきなり脱衣所の引き戸が開き、竜也がタオルを持って入って来たのです。私は咄嗟に悲鳴を上げようとし、同時に彼の目を両手で覆うが、それと同時に彼も私の口を両手で塞いできたため、悲鳴はすぐにかき消されてしまう。


『ご…ごめん!もう入ってると思って…。ホントわざとじゃないんだ。』


「ん〜んん〜。」

(いや、だからって口を塞ぎますか?)


 私も見られたくない一心で、彼の目を覆い続ける。しかし事態は更に悪化。急激な動きとサイズが小さかったブラの、フロントホックが弾けて外れ、私の胸が完全にオープン状態。


(きゃああああ。いゃあああ。見られる。全部見られちゃうー。)


『ちょっと。あ、目をつむってるから、何も見ないから…。目、痛い。』


 私も何か言いたいのに、口が塞がれて何も言えない。仕方ないので、片手でも何とか両目を覆った状態にして、フリーになった方の手で彼の手をペチペチと叩いて、離すように促してみる。すると、彼はすぐに手を離してくれました。


「ぷはっ!見た?どこまで、見た?」

『どこまでって…。』


「正直に言う。何、見た!?」

『えっと、下着を見たのは謝る!あと…目。目を見ました。』


「…。」


『カラコン外してる途中だったのね。ごめん、大丈夫?』


「(※英)…。その答えは正解…。でも、半分だけ。」

『ハ…ハーフ?半分?どいうこと?」


 私は片手と片足を使いタオルを拾って胸を隠すと、彼の目を覆う手をそっと離す。彼は言った通りに目をしっかり閉じていました。


「はぁ…。目、見ていたのなら、今、もう一度、見て良いわ。」

『いいのか?』


「…いいわ。」


 彼の目がゆっくり開いていく。竜也の目の前には、カラコンを外し片目が銀色になった私の目。でも彼は私のオッドアイを見ても、あまり驚いていませんでした。


『綺麗だ。ゲームに出てくるような、とても綺麗な目。本物なの?』


「…そうよ。私の片目、生まれた時からこの色。そして、あまり見えないの。あなた、怖く無い?」


 竜也は私の質問に首を横に振る。


『全然。俺…オッドアイの人なんて、リアルで初めて見たよ。』


 本当に日本人は不思議な人種だと思う。私は片目が違うだけで苦労してきたというのに、そんな目を綺麗だと言うその瞳に、嘘を言っている感じはありませんでした。


『そ、それより…。シャワーは…しないのか?その…目のり場に困るんだけど…。』

「はっ!」

(そうだ…私、今ほぼ裸…。やだ、恥ずかしい!)


 そう思ったら急に恥ずかしくなり、目線を下に向ける私。その先が、偶然彼の股先に向かってしまい、のが見えてしまいました。


「あ。はい!入ります!」


 慌てて風呂場に入った私。すぐにシャワーからお湯を出すと、頭から一気にかけました。


(やだ、彼の…。そうだよね。私…恥ずかしい姿してたんだから、そうなっちゃうよね)


「(※英)はぁ…。私って…とっても淫乱な女の子になっちゃったかなぁ」


 髪の毛が腰まで長い私は、髪をシャンプーで全て洗いません。シャワーを浴びて頭皮近くと髪先だけをシャンプーとコンディショナーでケアして、あとはボディーソープで全身を洗う。いつもの流れで全身を洗い流していきます。


(このボディーソープの香り…。彼も同じのを使っているのよね…)


 一度火が着いてしまった恋心が、何の変哲もない風呂場の道具でも、相手を意識させてしまう。


(どうしたら、この気持ちを抑えられるだろうか。いいえこの際、抑える必要なんて無いわ…。)


 私はシャワーを浴び終えると、準備した衣服に着替える。そして、彼のいるリビングに戻りました。

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