第17話 開祖アークノイド・ルードルス

俺は新年パーティーの次の日、公爵より一足早く領地へ帰った。俺は劣勢のレイヴン派の為にもルードルス家の力を大きくすることを決意した。他の派閥から貴族を取り込むよりよほど簡単だ。来年から本格的にマルクス帝国への侵攻が始まるので今年は領地の発展に力を注ぎたい。


1ヶ月かけて領地に戻った俺は第一騎士団との訓練で得たヒントなどを元にバックラーの使い方を改めてルードルス流小盾術として兵士達に広めることにした。


ルードルス流小盾術では、ファーレンス流剣術とレイド流剣術をベースにバックラーを組み込んでいる。




基本的な動きは

相手が上から切りかかってきたときに左腕を頭の上に持っていき相手の剣を受け止める〝面受け〟


面受けの時に相手の剣をそのまま左に受け流す〝面流し〟


相手の横一閃の剣を受け止める〝横受け〟


横受けの時に相手の剣を上にそらす

〝上流し〟


横受けの時に相手の剣を下にそらす

〝下流し〟


盾を構えて相手に突撃し、見えないところから右手の剣で突きを放つ〝刺突〟


相手の体に盾の面をぶつけて攻撃する

〝盾撃〟


腕を振り抜いて相手の体に盾の縁で殴打する様に攻撃する〝盾斬〟



俺はこの5つの防御の型を初級、3つの攻撃の型を中級と定めてルードルス流小盾術を作った。開祖アークノイド・ルードルス。なんだか響きがかっこいい。そうして俺は歩兵部隊の兵士達にルードルス流小盾術を叩き込んだ。森での実戦訓練はなくして朝は剣術の修行、午後からは小盾術の修行に変えた。

もちろん、俺は第一騎士団という地獄の訓練を体験したので訓練内容は第一騎士団よりもきついものにした。流石にみんな次の日死んで動けなかったので、回復魔法を使える魔法部隊の魔法師を呼んで解決した。肉体的には毎朝リセットされるので訓練ができるのだ。

精神的な回復はないけど精神的も強くなってほしいから毎日続ける。


王都から帰ってきてから1ヶ月後、領内の体制はだいぶ整ってきた。半年前はたくさんいた訓練生の選抜もだいぶ進んで来た。歩兵部隊の訓練生は1万3,000人から3,000人が脱落して1万人なった。この半年で訓練に耐えれなかったり問題行動を起こした者が脱落した。1万人のうち身長選抜で合格した6,500人は金剛戦士団として起用するつもりなので筋トレと槍の訓練にシフトチェンジさせた。普通に合格した3,500人はそのまま剣術の訓練をさせる。


魔法部隊の方はつまらない魔法の訓練が嫌で辞める人が続出した。これは俺も想定外だった。しかし、よくよく考えれば貴族や従者の子は魔法の訓練を当たり前と思っていたのに対して、平民は別に魔法を使わない仕事だってたくさんあるのだ。最初は1万人いたが今では半分の5,000人にまで減っている。しかし向上心の無い人は要らないので人数が減っても気にはしなかった。

嬉しい事に既に魔法師として働いている古参達の中には中級魔法師に達した人が現れた。

また、兵士の方もキースの訓練でファーレンス流剣術中級になった者も現れた。



それから程なくしてワーナー侯爵がやってきた。ワーナー侯爵は第一騎士団長だが、フッ軽で有名な人らしい。大した護衛も付けずにたった3人でやって来た。ワーナー侯爵は子供みたいに一日中バトルホースに乗って、キンブルの周りを駆け巡っていた。俺は屋敷にワーナー侯爵を泊めてもてなした。初めて他の貴族をもてなすので使用人も戸惑っていた。晩御飯のメインはやはり獅子茸だ。ウチと言ったら獅子茸のイメージが商人を通して他の貴族にも定着しつつあるようでワーナー侯爵もウチの獅子茸の事は知っていた。一応、お客様なので通常より1.5倍の大きさのものをご馳走した。

次の日、俺は兵士達が訓練している合宿地にワーナー侯爵を連れて行った。侯爵もまさか魔の大森林の中に訓練場があるとは思っていなかったようでかなり驚いていた。普通に考えて、魔物がわんさかいる場所に好き好んで建物を建てる奴はいない。これは全員が兵士だから成り立つのであって魔の大森林にポツンと開拓村を作るといっても誰も住まないだろう。兵士のレベルアップのために俺は兵士達の訓練に足りないものを侯爵に聞いた。侯爵は集団戦の訓練が足りないと言った。

確かに、騎士団は年中国境付近での戦争に駆り出されてるから実戦の経験が豊富だ。それに対してルードルス家の領軍は多くても年に2回程度しか戦争に参加せず、他は魔物に対しての実戦しかないので集団戦の経験が圧倒的に少ない。俺はこれから大規模な集団戦の練習も定期的に行うことにした。

帰りは侯爵と魔物ハンティングをしながら帰った。そこにはワーナー侯爵が1人でオーク50体相手に余裕をかましているのを見て少し引いてしまった俺がいた。


そうしてワーナー侯爵は3日ほど滞在して王都へと帰って行った。これからマルクス帝国国境に張り込むそうだ。聞いたところ、ここ5年でファーレンス王国の西にあるバルサ帝国との戦争が激化し始めて王国騎士団も忙しかったそうだ。そこにマルクス帝国の件が重なり数の減った騎士団と国軍だけではかなり厳しいようだ。そう考えると王国の北西部や北部は小競り合いはあるものの、かなり平和だと言える。俺はこの間に領地の更なる発展を目指す事にした。

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