第27話 物質世界ダンジョン探検試験の三人が行く

「大体ねえ……あいつの言ってたことなんて信用できるわけないでしょ!」



ジャンヌ華は、大阪太郎君に詰め寄って叫ぶ。



「そやけど、どうせ死んでまうねんから、思いっきりやろうとか言ってたやん」



「そんなこといっても、多勢に無勢すぎるじゃない! なんであたしたち三人だけで、並み居る世界各国の軍隊と交戦しなきゃいけないのよ!」



「いや、わし、そんなこと言ってないやん!」



「でも、さっき、いかんやろ!これは、もうあいつらと戦わんといかんやろ!とか言ってたじゃないっ!」



そこに博多二郎君が言う。



「なんばいうとる…… 喧嘩などあほくさいからやめれ」



「あんたは、黙ってなさいよ! 口出ししないでちょうだい」



どうやら、世界支配者たちが何やら悪さをしたらしい。



「まあ、三人寄れば文殊の知恵いうやろ、みなで対策を考えようや」



どうやら、大阪太郎は、少し成長したようだ。



ジャンヌ華は、プンスカして言う。



「だから、三人程度じゃ、どうにもならないって言ってんのよ!」



どうやら、ジャンヌ華は、現実的に対応する能力を習得したらしい。おそらく、すでに何度も辛い体験をしたのだろう……



「まあ、そげなこと言うとらんと、ほら、みなで飯でも食べにゆこうよ」



どうやら、博多二郎君は、ジタバタする気がないらしい。



まあ、いい……と俺は思う。



別に正解が決まっているわけではないのだ。



それぞれにいろいろな教訓を学べばそれでいい……と俺は思う。



彼らの一部始終を、その世界の支配者たちは、興味深そうに見下ろしている。



その両方の有様を俺たちは、自由世界から観察している。



まあ、そのような構図になっていた。



「なーなー、早く飯食いにゆこうや」



「今はそれどころじゃないでしょ!」



「そやから、みなで考えようて言うてるやないか」



まあ、仲が良いのか悪いのか、微妙な感じではあるが、俺は、少し情報を送ることにした。



彼らは、すでに記憶をほとんど消され、かなり三つ子の魂百まで的な洗脳を受けてしまっていて、どうやら自力でこの世界に転生した目的を思い出せそうになさそうだ。



俺は、この世界が上意下達型のピラミッドシステムになっているという情報を送る。もちろん隠密テレパシーでだ。もちろん彼らは、それが俺からの情報なのだとは気がつかない。

そして君たちが戦うのなら、ピラミッドの上層部に特化すべきだと伝えた。



軍隊や会社の末端の傭兵やアルバイトと喧嘩してもほとんど意味がないからだ。



ちょっと支配の糸を一時的に分捕って、ゲームの世界で遊ばせて、自分たちの持つ能力に気がつくように誘導した。



隠れて観察していた物質世界の支配者たちが、「あれ?」という顔をしはじめた。



自分たちが隠れて支配しているのに、精神攻撃を受け始めたからだ。



「そんな馬鹿な……」と支配者たちは思った。



「ありえない……」別の支配者がつぶやく。



支配者たちは、何層にも間に代理支配者を配置しているので、自分たちが直接攻撃されることはないと思っていたのだ。

すべて代理が精神攻撃を受けてくれるというずる賢いやり方だ。


しかし、なぜか攻撃を受けてしまっている。



特に、大阪太郎と呼ばれているガキが「許されへん!これは絶対許されへん!」などと喚くたびに心が折れそうになる……



「どういうわけだ……」と支配者たちは、いぶかしがる。



「どういうわけかはわからんが、精神的にきついということは間違いない」などと言いあう。



これは何とかせねばならないと、彼らに、いろいろ攻撃したり、いろんな罠を仕掛けたりしている。なんとしたことか……ニートラップなども仕掛けたようだ。



彼らには、いつでも自由に操れる操り人形がたくさんいるので、そうした工作はお手のものなのだ。



だが、何かおかしい……



確かにかの三人を攻撃はできるのだが、それによって自分たちがどういうわけか痛い思いをするようだと気づく。

だが、まったく知らない見えない相手を攻撃できるなど、聞いたことがない……などと言っている。



だが、俺たちが異世界から見ていることには気づいていないようだ。



彼らを閉じ込められた実験動物くらいにしか思っていないらしい。



それをさらに彼らにはわからない方法で観察している異世界が存在することなど想定外なのだろう。



上には上があるものなのだ。



自作のゲームの世界ではトップでチートで最強でも、リアルの世界ではそうではなかったりするのと似たような感じだ。



ゲーム管理画面をにらんでいろいろといけないことをしている支配者たちを、リアルの監視カメラがすべて録画しているような感じだ。



すでに彼らの裁判の判決が確定していることに、彼らは気づいていない……


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