第7話 10月17日 月曜日4

「はいはい。他のところでどうぞ」


 朝から何か言い出した旺駆里を適当に追い返そうとする俺。無駄なことなんだがな。一応言う。


「クルトン。テキトーに流すなよ。これは大切なことだぞ?未来がかかってるんだぞ?」

「俺には関係ないな」


 そう。俺には関係ないだろう。旺駆里みたいなやり方というか、出会いはいらないからな。今のところ。


「はー、心配になるな。マジで、クルトンは男なのか?いや――もしかして……女?いや――こんな女居ないわなー。だからクルトン。少しは女の子に興味持てよ」

「マジで、朝からうるさいなぁ」


 ちなみに俺はちゃんと男だ。勝手になんか言っているが。男装している女性とかいう設定はない。0だ。


「まあ、クルトンはまだお子ちゃまなんだよな。うんうん。そのうち俺が大人の世界教えてやるから。最高だぞ?ボインの奴とかヤバいし。幸せを教えてやろう。ってことで出席頼む」


 ニカッと笑いながら俺の肩に手を置き再度出欠表を滑らせてくる旺駆里。マジでこいつは……である。ここは講義室だ。もちろん他の学生も既に来ている。そして目立つ旺駆里が話しているとなると――まあ周りの視線もチラチラさすがに集まるってやつだよ。そりゃ噂も流れるな。もしかして――一緒に居る俺も変な噂流れてないよな?ホント迷惑だ。っか、さらっと紙をまた置くな紙を。誰も代わりに出すとは言ってない。今までもOKとは言ったことない。


「……」


 反応をしなければ諦める。ということはないが。普通に受け取る気もないので、小さな反抗だが。俺は受け取り拒否を続ける。だが、旺駆里は全く気にしていないのか。俺の筆記用具の下に紙を挟んで――。


「にしても、マジで俺の知る限りクルトンは女の子と話してることがほとんどないからな。いや、訂正。男子ともほとんど話してないよな。俺くらいしか話てないよな。俺優しい!」

「……」


 ウザい。事実だが。ウザい。いや、事実ではないか。俺お前意外とも話す機会くらいはあるんだが?でもそんなことを言うと話が大きくなる可能性があるので、ここは何も言わないのがあたりだろう。


「俺は静かなのが好きだからこれでいいんだ」

「クルトン。人生損してるぞ。行動しないと出会いもない。いいのか?クルトン。ジジイにあっという間になるぞ?」


 ガチの心配モードで話しかけてくる旺駆里。演技かもしれないが――俺には関係ない。


「問題ない」

「なんでだよー。マジでクルトン何も興味ないよな。おかしいだろ?人間か?欲求がなさすぎるだろ!おかしい、病院行ってこい。講義なんて良いから即行って――ダメだ、俺の出席があるから、大学終わったら行ってこい」

「相変わらずの無茶苦茶だ」

「いやいや、マジでクルトンはおかしい。1年以上一緒に居るが。おかしい」

「一緒ではないがな」

「一緒だろうが。運命共同体のクルトンに感謝する。ってことで、1限は任せる。さすがにそろそろ行かないと待たせている女の子がキレるかもだからな」


 やはりそういう理由か。俺はそう思いつつ紙を変えそうとするが。さっと旺駆里の手も動き。紙を押えてきた。


「運命共同体ではないし。任せるな」

「まあ運命共同体ってことで、出席カードを」

「だから、他当たれよ」

「あー、女の子が待っている。じゃクルトン頑張れ。あと、合コンマジで誘ってやるから期待しとけー」


 そう言い出欠表を無理矢理置いて消えていく旺駆里。仕方なく今日も俺が出しておくことになったのだった。

 ここまでは結局いつもの流れだな。ちょっと今日は無駄話が多かった気がするが。

 

 ちなみに旺駆里の出欠表。俺は学籍番号のみ親切に書いている。そう。出してはいるが――感想は書いていない。ってか先生本当に出欠取っているのか怪しんだよな。旺駆里が実はめっちゃ賢い場合もあるが。または友人にすごく勉強を上手に教えてくれる人とかが居て、試験を乗り越えているのかもしれないが。ってか、出席の成績ってそんなに高くはないからな。2割?くらいだっけ?出席すれば単位がもらえるラインの7割か8割のが。少し下がって試験のレベルが下がるよ。的な感じだからな。70点必要なところで、全て出席していたら50点あれば単位は何とか――になるみたいなことだったかな。


 ってか、旺駆里が居なくなった後も、俺の方にチラチラ視線があるような気がするが――気のせいだな。そう思っておこう。思いたい。今日は旺駆里の野郎が朝から騒ぎすぎるからだ。ホントにもう、怠かったのがさらに怠くなった。金曜日まで俺の身体もつだろうか――。


 ちなみにその講義では旺駆里をその後見ることはなかった。

 そうそう、初めにも言ったと思うが、今日は月曜日だ。月曜日の俺の予定は、1限。先ほどの講義とその後は4限5限の講義まで時間が空くため、家に帰ることもあれば空き教室で過ごすこともある。または図書館で過ごすという感じだ。時間で言うと、1限が9時から10時30分。4限の始まりが14時50分なので、結構空くんだよな。

 どうしてもそれは仕方ないのだがね。カリキュラムを組むときにどうしても空いてしまうからな。課題とかレポートがあればそれをする時間になるのだが。今はまだ後期の講義が始まり1か月くらいなので何もない。

 ってか、大学の講義は人によってバラバラだ。先ほど居た旺駆里は1限2限――後は3限4限とか聞いたような気がする。ちゃんと覚えてないから間違っているかもだが。とにかくバラバラで、俺は月曜日のところは朝の時間に、旺駆里に会えば、その後会うことはほとんどない。

 空き時間に旺駆里を探そうと思えばすぐに見つかるだろうが。旺駆里は目立っているからな。でも俺にそんなことする意味がないので、わざわざうるさいところに行く必要がないからな。いつものんびり過ごしている。これが俺の月曜日だ。

 って――週初めはやっぱ怠い。土日でだらけているとなかなかスイッチが入らない。でもちゃんと講義は受けたからな。ホント誰か褒めてくれ――そんな人居ないが……。 

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