初出張!

探偵になって半年が経った。


主な仕事は、浮気調査、素行調査、社員の横領などである。


10月のある日、私と30代半ばの女性探偵の田中は社長の藤本に呼ばれた。


浮気調査の依頼であった。


「単身赴任中の夫の様子がおかしい気がすると妻から依頼があった。

田中君、柴田君でペアを組み、調査をしてくれ。」


と藤本は言った。


「承知しました。

単身赴任先はどちらですか?」


田中が藤本に聞いた。


「台湾だ。」


「台湾‼︎」


私は驚き、声を出してしまった。

(しかし小さい声である)


事前に海外調査での出張があるとは聞いていたが、実際そのように辞令があると、まだ心構えというものができていなかった。


田中は2回目のようであったので、そこまで驚きはしていなかった。


藤本は言った。


「飛行機のチケットは手配した。

明後日の午前10時のエバー航空だ。」


私は家に帰ると、冬美に明後日から台湾に出張になったと伝えた。


「台湾かぁ。

結婚する前に旅行したね。

台湾は治安もいいし、食べ物も美味しいし、皆んな優しかったから安心ね。」


冬美は2週間くらいの出張とも聞いて、そこまで不安には思っていないようだった。


まぁもう少し寂しそうな顔を見たかったのだが…。


スーツケースを押し入れから引っ張り出し、荷造りをした。


足らないものは現地で調達すれば良いだろう。


パスポートを入れ、私個人のカメラを入れた。


カメラはコンパクトさを重視して、フジフィルムX100Fにした。


休みの日に台湾を撮ろうか。


荷造りも終わりかけた頃、後ろから冬美が私にまとわりついてきた。


私達は2週間離れる前にその夜は愛を確認した。


翌日は田中と新宿のオフィスで打ち合わせをし、記録に必要な機材などを準備した。


田中は優秀であった(少なくとも私よりは)。


特にIT関係に強く、企業からの依頼を担当することが多かった。


私はIT関係はさっぱりのアナログ人間だ。


明日の午前7時頃、成田空港第一ターミナルの出発ロビーで田中と待ち合わせた。


翌朝4時に冬美を起こさないようにベッドを出ると、私は駅までガラガラと大きな音を立てるキャスターに苦戦しながら始発電車へと急いだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る