ふくしゅーの女神様

北野滝

第1話 女神との出会い

俺の名前は神宮寺真じんぐうじまこと。現在18歳。


いきなりこんなことを言うのも変かもしれないが俺は超幸運体質なのだ。


初めて自分の体質に気付いたのは小学校の時。それまでは普通の子供だったのだがある日から俺は給食のおかわりじゃんけんで1度も負けなくなった。


それ以降も地元の商店街の福引で1等を当てたりテスト勉強の山勘が全て当たったり中学、高校でもいい思いをたくさんした。極めつけは大学受験もマーク問題の勘で埋めたところが全問正解で国内でも有名な大学への進学が決まった。


今日は大学の入学式だ。スーツに身を包み学校へと向かう。


「大学でも俺の幸運で楽に生きていくぜ」


頭の中でオープニングの曲をかけながら新たな門出を盛り上げる。ノリノリで信号を渡ろうとした時、




「ファァァァァァァァ」


「ドンッ!!」



暴走したトラックに跳ねられて俺の人生はエンディングを迎えた。




気が付くと不思議な空間にいた。まるで星空の中にいるような美しい場所だ。さっき俺はトラックに跳ねられたからここが死後の世界というやつだろうか。


「お待たせしました」


突如目の前に桃色ロングヘアに赤い瞳の美女が現れた。


「初めまして、私の名前はユニ。炎の女神と呼ばれています」


女神? 信じがたい話だかこんな空間にいる以上信じるしかあるまい。


「俺は神宮寺真です。ここって死後の世界ですか?」


「その通りです、お気づきかと思いますがあなたは先程トラックに跳ねられ死亡しました」


やっぱりか。超幸運の俺でも死ぬことがあるんだな。


「ようやくこの時が来た。待ちに待ってましたよ」


「え?」


「いえ、何でもありません」


何かヤバいことを言われた気がしたが、きっと気のせいだろう。


「本来であれば死んだ人間は天国か地獄に行くのですが、あなたには私と異世界に行って魔王の手から世界を救ってもらいます」


「い、異世界ですか」


そんなものはゲームやフィクションの世界にしか存在してないと思ったんだが、、、


「もしかして俺って異世界を救う選ばれた勇者だったりするんですか?」


女神と異世界に行くというのならそれぐらいのステータスがあってもいいはずだ。


「は?何言ってるんですか。バカなんですか」


どうやら違ったらしい・・・


「ま、まあ俺は運がいいので異世界行ってサクッと救ってあげますよ」


そう、俺は運がいいのだ。きっと異世界だって簡単に攻略できる。


「ああ、もちろんあなたの幸運は封印しましたよ」


「え、今なんて?」


「ですからあなたには今までみたいな幸運は起こらないということです。そもそも何故あなたがそれほどに幸運なのかご存じですか?」


「いえ、分かりません」


幸運になり始めたのは小学校の時からだが思い当たることがない。確かに途中から幸運体質になったのは不自然だとは思っていたが。


「こちらを覚えていますか」


見せられたのは星形のアクセサリー。


「あ、そういえば小学生の時にそんな感じのアクセサリーを拾ったような、、、」


「これはただのアクセサリーではありません。第1級特定神器〈超幸運星ラッキーハッピースター〉と呼ばれる物なのです」


「それってすごいやつなんですか?」


第1級とか言われてもいまいちピンとこないんだが。


「もちろん!現世で言うところの国宝に当たるものです」


え、めっちゃすごいじゃん。


「そんなに貴重なものなんですね」


「それをよりによって人間なんかに拾われてしまうとは・・・」


「でも俺はもう死んだわけですし回収すればいいだけでは」


「それはできません。超幸運星はあなたを主として認めているのであなたが死んだ時に超幸運星のアクセサリーも消えあなたの精神に宿っています」


そんなすごい物が俺の精神に宿っているのか。


「ですので今は封印という形であなたの幸運を抑えるしかありません」


「確かにそんな大事なものを俺が持っていたのは申し訳ないですけど、そもそも何で現世にそれが落ちてたんですか?」



「ギクッ」



まさかこの女神・・・落としたとか言わないだろうな。


「お、落としちゃったんですよ」


よし、この女神はポンコツだ!


「俺が拾ったのが分かったいたのなら生きているうちに回収しに来れば良かったのでは?」


「もちろんそうしようとしましたけど、その神器は持ち主が幸運になるように運命すら変えてしまう能力があります。仮に私があなたから神器を奪えは今までの様な幸運を得られなくなるので結果的に現在より不幸になります。それを察知した神器は取り返そうとする私をありとあらゆる手で拒んだのです」


うぅぅぅぅぅとついに泣き出してしまった。何があったかは聞くまいがきっとたくさん不幸な目にあったのだろう。


「あ、あのなんかすいませんでした」


とりあえずこの可哀想な女神に謝っておこう。


「まあ過ぎたことを言っても仕方ありません。それにあなたを異世界に連れて行くのには別の理由があります」


「別の理由?てっきり私怨かと思いましたけど」


「もちろんそれもありますが、あなたは運に頼りきった生活をしてしまっているので天国か地獄のどちらかに送るのか判断しかねるのです」


なるほど・・・てか私怨も入ってるのかよ。


「異世界も救えて、あなたの行く末も決まる。一石二鳥です」


名案だと言わんばかりにドヤっている。もう異世界行きは断れないだろう。


「分かりました、行きますよ行けばいいんでしょ」


「物分かりがいいですね、まあ私もいるので安心していいですよ」


ニコニコしてるけどこの女神は本当に味方なのだろうか。


「因みに私の運は超幸運星を持ってて普通の人と同じぐらいです。その超幸運星を持たない私があなたの傍に居たらどうなるんでしょうね」


よし、こいつは敵だ!!


「それじゃあ早速行きましょう」


そう言って女神が持っていた杖を天にかざすと空が光り吸い込まれるぅぅぅぅぅ


これじゃまるで天国に行くみたいだ・・・





こうして幸運を奪われた俺と私怨たっぷりの不幸女神の異世界冒険は幕を開ける。

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