第7話 スカーレットパーティ


 ヘリから勧告が降ってくる。


「お前らは完全に包囲されている! 速やかにエネルギーコアを返還せよ!」

「あいつら、ウチのアカリをエネルギーコア呼ばわりか」

「……アリアだってあたしを利用しようとしてた」

「それはそれだ、アンタだって分かって参加した口だろ?」

「……それはそう」


 アカリとアリアの間にはただならぬ仲があるらしい。リーチはそれが気になってそんな状況じゃないのに、シームレスに事情を聞いた。シームレスは上を警戒しながら、世界掌握ワールドハックを発動させ緑のホログラムPCで辺りを精査している。


「なぁシームレス、決起集会って、スカーレットパーティってなんだ?」

「それ今聞く事か!? そこに光学迷彩ヘリが迫ってるのに! 全くどこから照らしてるのかわかりゃしねぇ! 複数いやがるんだ! ……でなんだっけ? スカーレットパーティだっけ? ああそれね、俺らが――ってそれはいいや、とにかくヤバいテロ集団だよ。強力な異能力者を集めてガブリエル中央委員会に反旗を翻した。レッドリスト……その主犯があのアリア・キングストンなんだよ」

「……アカリもそのテロ集団に参加していた?」

「話を鵜呑みにするならな」


 そこで話は打ち切られた。シームレスが敵のヘリを発見したのだ。ホログラムに映し出された光点は三つ。三角の形で四人を取り囲んでいた。


「ソコにいるんだな?」

「おい、レッドリスト。まさかとは思うが」

「墜としてくる」


 物陰から飛び出すアリア。三人が止める間も無かった。すると空中から声が聞こえる。


『そこの女! 止まれ! 止まらないと撃つぞ!』

「やってみなァ!」


 空中に飛び上がるアリア、ヘリの機関銃が火を噴いた。それを全て。


「ちょれぇ!」


 空中で止めた。ピタッと動きを止める機関銃の弾。まるでピンで留められた標本のように停止している。


『馬鹿な!?』


 強烈なデジャヴがリーチを襲う。頭痛――それはきっと別の誰かが言っていた――そんな事を頭を抱えながらリーチは思う。そんな頭をさする少女が一人。アカリだった。


「大丈夫だよ、あなたは大丈夫」

「アカリ……」

「りいち、だったよね? あなたはあたしを知ってる?」

「ごめん、名前だけ」

「今はそれでいい、けどいつか思い出して、私を、助けて」


 心に、響いた。

 その言葉は確かにリーチの心に響いた。

 すると、突如、聞こえる爆発音。

 それはアリアがヘリを撃墜した音だった。

 爆炎と共に、アリアが落ちて来る。


「まずは一機」

『よくも仲間を!!』

「仕掛けて来たのはそっちだろ」


 今、人が死んだのか? リーチはそんな事を考える。止めなくてはこの戦いを、でもどうすればいい。アカリに袖を掴まれた。


「行っちゃだめ」

「……はい」


 ヘリの撃墜音が続く、三回目でダストゾーンを照らすサーチライトが消えた。

 アリアが全てのヘリを撃墜したのだ。人が死んだ。その事がリーチはとても悲しかった。相手はこちらに機関銃を向けて来た相手だというのに。


「なぁ、今のも風紀委員なのか?」

「いや、今のは軍部科だ。風紀委員の命令で動いてんだろう」

「軍部科ってこの制服の?」


 己の制服を指さすリーチ。シームレスは首肯して。


「お前は記憶無くしてるようだが、その勲章の数、相当エリートだぞ。なにか覚えてないのか」

「……さっぱりだ。この服も他人のモノなんじゃないかって気もしてくる」

「……そうか、まあいい、記憶喪失くんには期待してないよ。レッドリスト、お前はなんか知ってるか?」

「へー、そいつ記憶喪失なのか――ん? あたし? 脱走して来たばっかなんで世間の事はさっぱり」

「脱走ってまさか、ウリエル反省所からか!?」

 

 リーチが首を傾げる。


「ウリエル反省所?」

「要は刑務所だよ。異能力者専用のな……そこを脱獄? 化け物か」

「誰が化け物だ」


 アリアがシームレスにチョップを喰らわす。いてぇと頭をさするシームレス。

 いつの間に三人の傍に近づいて来たのか。全く音がしなかった。


「殺したのか?」

「ん? ヘリのパイロットの事かい? 案外お優しいんだね軍部科の仲間意識かい?」

「そんなんじゃない、俺の信条に反しているだけだ」

「信条って?」

「『必勝不殺』」

「あはははは! 矛盾してる!」


 むっとするリーチ、シームレスはやれやれと首を振る。アカリはリーチを見つめている。

 とりあえずは窮地を脱した。しかし、第二波は必ず来る。しかし、リーチには『ピースは揃った』そんな気持ちが広がっていた。

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