神の手違い

目を開けると端が見えないほど遠くまで続いている白い空間にいた。


え??俺死んだんじゃないの??


自分の体を見るとまるで事故なんて起きていないかのような綺麗な体のままだった。混乱しながら立ち上がると目の前に突然タッチパネルのようなものが出てくる。そこには、


「突然の事で混乱していると思うがどうか冷静にこの文を読んで欲しい。君はこの世界を管理する神々のシステムによって誤って殺されてしまった。」


この世界の神??誤って??状況が全く分からないがとりあえず読み進める。


「原因は、人間としてはありえないほどの魂の強大さでシステムが狂ってしまい管理できないと自動処理されることで起きてしまう。なので数は限りなく少ないが今まででも何回かはこのような事が起きてしまっている。」


間違いなく死んでしまうほどの重傷だった体が無事なのと、この有り得ない現象によって書いてあることが本当なのだと信じ始めるのと同時にやっと生きたいように生きれそうだった人生を狂わされた怒りがふつふつと湧いてくる。


「ここでこのような事を起こしてしまった人には全員に提案している事だがファンタジーが溢れる剣と魔法の世界へ転生してみないか?」


沸騰しそうになっていた頭がサッと冷めた。

剣と魔法??ファンタジー??本当にそんな最高な世界があったのか!?


実は友人には隠していたが生きていた頃は大のラノベ好きであり数少ないオフは全てラノベを読むことに費やしていた。

本当にそんな世界に行けるのなら建築士になることよりも何倍も魅力的に思えた。


「普通の人間だと界渡りは、魂がすり減ってしまい耐えきれないのだがこの現象が起きてしまう人間は1人残らず強大な魂を持っていていわゆるチートと呼べるようなものを持ちながら転生することが出来る。なので向こうに渡った人間は全員英雄となり世界に名を轟かせている。」


もはや手違いで殺された事など頭から吹き飛ぶほど興奮し文を読み進めていた。


「最後に今回の事を踏まえてもう二度とこのようなことが起きないようにシステムを大きく見直していきたいと思っている。本当に申し訳なかった。君がどんな選択をするかは自由だがもし転生しないとしてもこの世界で生まれ変わることは出来る。ただし記憶は全て消えてしまう条件付きだが。しかし異世界に転生するというのなら記憶はそのままで存分に自分の人生を満喫して欲しい。それでは君の新しい人生に幸運が溢れることを願っている。」


読み終えたところで画面が切り替わり転生するの文字と転生しないの文字がでてきた。

迷うことなく転生するを押すとゲームの設定画面のようなものがでてきた。

ワクワクしながら画面を見る。

まず種族を選ぶらしい。大きな項目が三つあり人間、亜人、魔物と別れておりそれぞれの説明がある。


人間

もっとも個体数が多い種族である。様々な国を作り争い協力し合いながら生きている。魔物よりも進化がかなりしずらい上に超人、神人と2段階しか進化できないが進化した時の能力の上がり幅は魔物よりもかなり大きい。



魔物

鬼系、獣系、不死系、虫系、悪魔系、巨人系など他にも沢山の種族あり姿形は多種多様であるが全ての魔物に共通する点は人間よりも進化が起こりやすいという点である。魔物が進化を繰り返し重ねていくと”王”と呼ばれる強大な種族になることができる。この王級まで達すると人間の大国が全戦力をかけなければ討伐できないと言われるレベルまで達する。

王級のさらに上には”現神”と呼ばれる種族があり、この種族は人類が全戦力をかけてようやく討伐可能なレベルと言われておりほぼ討伐不可能と言ってもいい。

ただ現神級は今までの歴史では一体しか出現しておらずその一体の討伐に人類は生存圏を九割奪われ人口のおよそ八割を失ったと言われている。


亜人

人間と同じような体の構造をしているが所々に魔物のような特徴を持った部分がある。人間と比べると身体能力や魔力がかなり優れており、魔物と人間の良いところを取り二で割ったような進化をする。進化の頻度は魔物に近く力の上がり幅は人間に近いと言われている。魔物と同じように王級にも現神級にも至ることができ、一体だけ至ったと言われる現神級も亜人であったと言われている。しかし魔物や人間と大きく違う点は繁殖力が低く個体数が少ないというところである。現在世界を見渡しても亜人の人口比はかなり少なくなっている。


このような説明がありそれぞれの文字を押すとさらに細かく選べるようだった。

超王道であるスライムに転生して配下を作り無双する小説が一番好きな俺にとって人間は既に選択肢からはずされ亜人か魔物の2択になっていた。


どうしよう…大好きな小説をリスペクトするなら魔物だけど生活のしやすさとかを考えると亜人もいいなぁ〜


悩むこと数十分。

強くなりやすさと生きやすさ的に亜人にすることに決めた。

亜人の文字を押して種族を選ぶ作業に入る。

文字を押すと、獣人、魚人、魔人など様々な種類の亜人が出てくる中、鬼人という種族が目に止まる。

説明を見てみると


鬼人

人間を遥かに超えた身体能力と体内魔力量を持っており、太古の戦では有名な戦闘種族として名を馳せた。


これを見た瞬間ビビっときた。

鬼人なら大きく人間の姿から変わることなんてないだろうししかもめちゃめちゃ強そう…最高だ…鬼人愛してる!!

超興奮しながら鬼人を押すと

次は属性設定の画面が写った。

基本属性として

火 水 風 地の四属性があり、

その上に上位属性として

闇 光の二属性があるらしい。

その他には派生属性として

雷や氷などラノベでよく見る属性が並べられていた。

5属性まで選べるようだがもう既に何にするかは決めている。ラノベを読み漁っていた頃から風と雷を自由自在に操り”天災”や”神の代行者”などと呼ばれたい欲があった俺にとってこの属性選びは何も考える必要がなかった。

別に厨二という訳ではなくラノベ好きな人なら絶対にしてしまう妄想だろう。多分。おそらく。

迷うことなく風と雷を押して次に進むと次は転生する場所が出てきた。


たくさんの国や場所が出てきて色々悩んだ結果、


シセルギア帝国

大陸の東に位置しており大陸の中でも1、2位を争う大国である。完全実力主義大国であり身分のないものでも成り上がれる国として有名である。現帝王のクリス・シセルギア帝王は「賢王」という二つ名で知れ渡っている。


この国にすることに決めた。ここならラノベのありきたりな亜人差別も少ないだろうし、かなり生きやすいだろう。他にも良さそうな大国や明らかに危なそうな神聖国家などもあった。さらに原初の森や空島という強大な魔物や亜人が住んでおり空気中の魔力の濃度が高すぎて普通の人間では生きていけないような危険地帯もあった。のちのちこういうところには行くとしてまずは生きやすい国で生きていこうと思う。


シセルギア帝国を押して設定を終了するを押すと上から光が降ってくる。目の前のパネルには


《種族変更………成功》

《属性付与………成功》

《転生場所………エラー発生。エラー発生。》


「え?何?!急にエラー音鳴りだしたぞ?!」

焦って1人なのに大声を出してしまう。


《転生機器の魂の許容範囲を上回ってしまったため途中で経路を変更します》


「はーー?!何勝手に変えてんの?!てか地球のシステム直す前に先にこっち直せ!!」


経路を変更したまま転生機器が起動する。どんどん体が上へ浮いていき加速していく。


「ちょっと1回待って!!どこ飛ばされるかわかんないの怖すぎるから!!あー!!覚えてろよ!地球の神ー!!」


残されたタッチパネルには


(。>﹏<。)💦💦


焦っている絵文字が残されていた。






_______________________


地球の神が言うには今までの転生者の中でも飛び抜けて規格外で魂が大きく強いので本来壊れるはずのない転生機器まで壊れたらしいです…




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