お嬢とギャルとヤンキーと

あんぶろうず

第1話 仲良し3人組

6月10日 7時50分

気候は程よく涼しい。

夏よりの春。といった感じだ。


歩道には、友人と登校している学生や、

散歩をしている老人、

談笑している主婦達など様々な人がいる。


そんな中を、

とある男子高校生3人組が登校していた。



『あー。

やっぱ学校が近いっていいなぁー!!』


そう大声で言ったのは、

にのまえ 戀丸れんまる

3人の中ではムードメーカー的な存在。

少し、鬱陶しい時もあるが、

どんな時も笑わせてくれて

一緒にいるだけで楽しい。

そんな奴だ。



『相変わらず朝から元気だな。

どっから沸いてんだよ、そのエネルギー』


半笑いでツッコんだのは、

尾熊おぐま 彗也けいや

背が高くてイケメンで、

おまけに勉強も運動もできるすごい奴。

小学生の頃からモテまくっていたが、

なぜか、女性に対して免疫が弱い為

未だ、彼女ができた事がないばかりか、

話す事もままならない。



『だってさー!俺、高校始まってから

毎日8時間寝れてるんだぜ!?

普通にヤバくない?

お陰でゲームのイベントは進むし、

授業中も眠くならないし、

何しろ朝からお目目パッチリなんだよ!!』


興奮気味かつ やや早口で、

しかも、

先ほどよりも無駄に大きい声で戀丸は言う。

それを聞いて彗也は笑う。


『学校近いから今までよりは

長く起きてても平気だけど、

結局、その分遊んでばっかで

学力は上がってないけどね。』


戀丸に対して的確な言葉をしたのは

六葉むつば のぞみ

どんな時も冷静で、

行動する前にまず一息ついて考えるタイプ。

冷たい言葉を吐く事が多いが

思いやりのある、根本的には良い奴。

本人はそんなつもりはないが、

目つきが悪い為か、

色々と誤解される事が多い。


『ぐっ…。相変わらず確信的発言…。』


戀丸も図星だったらしく、

精神に少しばかりのダメージを負った。


『まぁでもさ、なんか良いよな。

高校生になってもこうやって、

この3人で仲良くできるのって。』


彗也が少し微笑みながら2人に向かって話す。


『俺さ、高校生になったら

お前らは、俺とは別の学校に行くとばかり

思ってたんだよね。

ほら。俺が1番勉強できるから。』


確かに学力の違いなどから

それぞれ別の高校に行くと

常々思っていたが、最後の一言が

気に入らなかったのか、望と戀丸は

少しばかり反撃する。


『でも、彗也が候補に挙げてた高校

全部共学だったよね〜?

そしたらまた、

女子にチヤホヤされちゃうよ〜?』


戀丸は、なんとも腹立つ顔で彗也に言う。


『バレンタインにチョコもらって

顔真っ赤にしたら、また男子に

変なあだ名つけられるよ。』


馬鹿にした笑みを浮かべながら

望も彗也に言う。


『うっ…、うっせぇよ。

て、ていうか、も、もう女子とも

普通に話せるしっ!』


少し顔を赤らめながら、彗也は反論する。


『じゃあ試しに前にいる女子に

話しかけてみてよぉ〜』


戀丸は煽り口調で

前を歩く女子2人組を指差しながら言った。


『はぁ?!んでそんな事しないと…』


そう言う彗也に

食い気味で戀丸は更に煽る。


『あれぇ?できないの〜?』


彗也は少しムッとした顔をしながら


『できるしっ!やってやるよ。

話しかければ良いんだろ?

そっ、それぐらい…、ら、楽勝だしっ!』


実行する前から明らかに動揺しているが

彗也は一歩一歩、前を歩く女子に

近づいていく。

戀丸は、ニヤニヤしながらその様子を

見ている。

一方、望は 面白い事が起きるだろうと

持っていた携帯で動画を撮り始めた。


そして、


『あ、あの…』


彗也は見ず知らずの女子に

何とも弱々しく声をかけると

女子が彗也の方に振り返った。


『えぇっと、、その…』


彗也は言葉に詰まり、望達の方をチラチラ

見ている。

その横顔から確認できたのは

すでに

顔を赤らめて涙目になっているという事。

女子達も用件も何も言わない彗也に

戸惑っている様子だ。


『あ、あのっ………』


『おはようございます!!!!』


彗也は一際大きな声で言うと

かなりの早歩きでこちらに戻ってくる。

望と戀丸は爆笑。


『お前ら……、あとで覚えとけよ!』

先ほどよりも更に顔を赤くしながら

彗也は言った。


『いやぁ。傑作だな〜。

まさかの挨拶だもんね。

わざわざ声かけてから言う事じゃないし。

ほら、涙拭きなって。』


望は終始 笑いながらそう言うと

カバンからタオルを取り出し彗也に渡す。


『その顔の赤さ、ヤバいよ。

相当恥ずかしかったんだねぇ。

彗也くん 頑張ったから

戀丸パパが よしよし してあげまちゅよ〜』


戀丸はまたまた彗也を煽る。


『テメェ、調子乗んなっ!』


怒りが頂点に達した彗也は

戀丸の喉元めがけて渾身の逆水平チョップを

かましたのだった。

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