第13話 再会

 お互い、相手の姿で、三日間過ごした。


 夜八時、事故にあって入院していた病院の前に、二人は誰にも気づかれないように向かった。


 「久しぶり!」


 先に病院前に到着していた、こずえの姿をしたこずえが、こずえの姿をした梢に手を振ってむかえた。


 「よっ! ・・・・・・てか、ウチの普段着姿ふだんぎすがたって、こんなに真っ赤やったんや。」と、梢は、信じられない、というふうに言った。


 「そうやで! 何着ても絶対赤が入るから、毎日同じ服来てる気分やったわ[毎日同じ服を着ている気分だった]!」


 こずえは、文句をぶつけた。


 「すまん、すまん。それより、どうやった? ウチの姿で過ごしてみて。」


 こずえは、最初は梢の姿での生活が楽しみだった。だが、色々なことを体験していくごとにイヤになっていき、最終的には、苦痛くつうに感じるほどになっていた。


 しかし、正直にそれを梢に伝えなかった。


 もし、それを話してしまうと、私生活や人間関係が否定されているととらえてしまい、梢の心が傷ついてしまうかもしれないと危惧きぐしたからだった。


 だから、こずえは質問を質問で返した。


 「梢こそどうやった? 私の姿で過ごしてみて。」


 どうゆう答えが返ってくるのか、緊張して、心臓がドクドクしているのがわかる。


 「いやぁ、まぁ、そうやな・・・・・・。」


 どうやら、答えをはぐらかしているみたいだ。


 梢は、こずえと目を合わせずに、頭をポリポリかいている。


 「・・・・・・もしかして、つらかった。」


 「・・・・・・うん。」


 梢は、ゆっくりとうなずいた。


 それを見て、こずえは安心した。


 (梢も私と同じ気持ちやったんや[梢も私と同じ気持ちだったんだ]!)


 「実は・・・・・・私も梢の姿での生活が辛かった。」


 正直に答えてくれた梢に対して、正直に答えないのは失礼だと思い、こずえは、正直な気持ちを打ち明けた。


 「じゃあ、考えてる事は同じやな!」


 「うん! 早く自分の姿に戻りたい!」


 「「・・・・・・。」」


 「「ていうか、どうやって元の姿に戻ればいいんや!?」」


 二人はそのことを、失念しつねんしてしまっていた。


 「なんで、ウチより頭のいいこずえが、そんな大事なこと忘れてんねん!」


 梢は、こずえの肩をガッシリつかみ、体をブンブン揺らしながら抗議した。


 しかし、残念ながらこずえの体。梢の体のこずえを、力いっぱい揺らしたところで、ビクともしない。


 こずえは、あまりにも理不尽な抗議をされたので、そのお返しにと、同じように肩を掴み揺らしてやった。


 すると、強風に吹かれているかのように、梢は揺れに体をもっていかれた。


 予想以上に激しく揺れてしまったので、すぐに手を止めた。


 「ごめん! やりすぎた!」


 梢は、大丈夫、というように、手を目の前に出した。


 「それより、なんかいい方法思いつかんか?」


 こずえは、う〜ん、とうなりながら頭をひねって考えたが、全く何も思い浮かばなかった。


 「あ! ウチ、アホやから、なんぼ考えてもいい方法なんか思いつかんわ。」


 こずえは、今、自分が梢の体であることを、すっかり忘れていた。


 「ホンマや! 梢はアホやから、私がなんぼ考えても意味ないわ!」


 「誰がアホや!」


 梢は、こずえの頭を軽く叩いて、ツッコミをいれた。


 「さっき、自分で言うたやん!」

 

 「そうやったな。」


 「「ハッハハハハ!」」


 そんな、関西人らしいやり取りをした二人は、息が合いすぎているのが可笑おかしくて、可笑しくて、たまらなかった。


 二人は、涙が出るほど笑い合った。


 「打つ手なしやから、とりあえず、明日、どうやったら、元の体に戻れるか、図書館にでも、調べに行こか。」


 梢は、笑うのを我慢しながら言った。


 「そう、やな。」


 二人は、何とか笑うのを我慢していたが、とうとう、それにも限界がやってきた。


 「「ハッハハハハ!」」


 二人の笑い声は、夜空に消えていった。

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