今、君たちに告白を

放課後、いつものカラオケで、私は決心した。全部打ち明けよう……隠してたこと、全部。全部隠してたなんて知ったらどんなふうに思うんだろう。…いや、どんな風に思われたっていい。それが私なりの覚悟だから。

「ねぇみんな。話したいことがあるの。」

指先まで体が震える。でも、言わなきゃ。

「どうしたの?まーちゃん」

「麻紀?」

「深瀬チャン…。」

「深瀬。」

「私、歌えるよ。本当は、音痴なんかじゃない。」

自分でも、何を言っているのか分からない。何も知らない椿と美澪は唖然としている。

「どういうこと?」

動揺をしているようだが、椿は冷静だ。

「あのね、わざとなの。音痴なの…わざとなの!」

「わざとって何?みれい、全然わかんないよ。」

「そのまんまの意味だよ。」

「……どうして?」

椿は、どこか悲しそうな、寂しそうな顔をしている。

「なんで!?みれいたち…必死に特訓して、それなのに、まーちゃんは全部わざとだったの!?……嘘、だったの?」

美澪の目は心無しか冷たい。いや、冷たいというより、これは怒りかな。……当然の反応だよね。あんだけ親友なんて言っておきながら、ホントのことを話してないなんて。

ごめんね、今から全部話すからね。

「ごめんね……裏切ったって思われてもしょうがないよね。実は……」

私は、全てを話した。2人は、反応はそんなになかったけれど、真剣に話を聞いてくれた。……別に軽蔑されたっていい。心が私から離れてしまってもいい。それが私に出来る最大限だ。

「……ねぇまーちゃん。」

「何?美澪。」

「……なんで、それ、今まで言ってくれなかったの?」

「だってさ、気にするじゃん。椿と美澪、優しいからさ。2人に負担かけたくなかったんだよ。」

ちゃんと笑えてるかな。きっと不器用な笑顔になってるんだろうな。

「……ない。」

椿が何かを訴えている……?上手く聞こえない、その瞬間

「負担なわけない!」

椿の声とは思えないほど大きな声だった。

「どうして…どうしてよ。私たちは親友。助け合わなきゃダメなのよ?ずっと……ずっとそんなこと抱え込んで。麻紀が辛い思いする方がよっぽど悲しいし、苦しいわよ。」

「そうだよ、まーちゃん。みれい、いっつも思ってた。まーちゃんって辛いこと隠したがるでしょ?それで、みれい、何の役にも立てないんだって悲しかった。」

「頼ってよ…麻紀。」

「なんでも話してよ、まーちゃん。」

2人の目は涙で潤んでいた。すると、私も頬に温かいものを感じた。

「……2人とも、ごめんね…ありがと……ありがとう!」

気づけば私たちは抱き合っていた。大好きだよ。2人とも。

「ええ話やー……」

佐々木が、呻いている。そうだ、こいつにも世話になったんだ。

「佐々木。ありがとう。」

「俺はなんもー?」

とぼけているようだ。椿にいい所見せなくてもいいのか?いや、こいつは部活といい、人の見てないところで努力とかをするやつなんだろう。椿はそこにひかれたんだもんな。

ふと、横を見ると、矢沢が呆然とたっていた。相変わらず無愛想な顔をして、でも、優しい目だ。いつもこの目で支えててくれたんだよな、こいつは。

「矢沢。」

「ん?なんだ?」

「……無愛想。」

「はぁぁぁぁ?」

「うそうそ、ありがとう。」

「ん。」

気のせいだろうか、少しだけ矢沢の顔が赤くなった気がした。途端、佐々木が矢沢の方を見つめているのが目に入った。

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