51.勇者と英雄と魔王

 天に掲げられた聖剣アークは、眩いまばゆいほどの光を放つ。


聖剣アークよ。

 俺はこの場でなんとしてもあの邪神を討たなければならない。

 この場は魔王を手を組む……、おまえの力を貸してくれ」


 アイオンが聖剣アークにそう告げると、さらに強い光を放った。


「ありがとうな」


 アイオンが礼を言うと、聖剣アークが放つ光はフェリシアの持つ大鎌デスサイズに吸い込まれていった。


勇者アイオンよ、わらわの手を取ってくれてありがとなのじゃ。

 もちろん、クラウスもな」


 フェリシアが満面の笑みを二人に向ける。

そして、笑みが真剣なまなざしに変わると共に、大鎌デスサイズに自身の魔力を込め始めた。


「おぬしらから預かった神器の力を今から増幅させるのじゃが、わらわもこれほどの大きな力を増幅させるのは初めてなのじゃ。

 ……うまくゆくことを祈っておくれ」


 フェリシアの優しい魔力が大鎌デスサイズを包み込む。

そして、あふれ出す3つの神器の力がそれと混ざり合い始めた。


 あふれ出した3色の光は、フェリシアの魔力と混ざり合うことで色を徐々に変えてゆく。

赤、青、黄、緑……

大鎌デスサイズを包み込む色が1つづつ増えてゆき、やがて7色の虹色の光へと変わっていった。


「ふぇ、フェリシア?

 これが……

 神器の力を増幅させたもの……なのか??」


「わらわにもわからぬ……

 このようなことは初めてなのじゃから」


 目の前の光景に戸惑う2人。

しかし大鎌デスサイズが放つ神々しいこうごうしい7色の光は、神器の力が増幅されたことを物語っていた。

そして、3人の目がその光に奪われていると、爆音が響き渡る。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 激しい邪神の咆哮とともに、ここまで邪神を抑えて時間稼ぎをしていた4人が吹き飛ばされてきたのだった。

満身創痍の4人は最早立ち上がるのがやっとといった感じであった。


「『すまぬ、そろそろ限界だ……

  あとは……

  おまえたち任せたぞ……』」


「師匠!!!」


 マサラの元に駆け寄るアイオン。

駆け寄った時にはマサラは気を失っていた。


「フェリシアさま……

 すいません、私たちもここが限界のようです……」


「ヤツの力はドンドン強まっております……

 我らでは時間稼ぎも最早限界……」


「フェリさま、あとはお任せします……」


 そして、3人も気を失った。


「「「……」」」


 アイオンたちは無言で頷き合うと、邪神に向かって飛び出した。

正面より飛び込んでくる邪魔者を迎撃せんと邪神が右腕を振るう。

その時、3人は息の合った連携を見せた。


 まったく同じタイミングで邪神の右腕をそれぞれの武器で真上に弾き飛ばす。

それにより一瞬の硬直をする邪神。

アイオンとクラウスは左右に回り込み、フェリシアはそのまま懐へと向かう。

 

「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」


 3人の行動を不快に思った邪神は再び咆哮を放つと共に、打ち上げられた右腕をフェリシアに向って振り下ろした。

フェリシアが粉砕されるかに見えた刹那、その右腕は宙を舞った。


「「させるわけないだろ!!!」」


 邪神の右腕の左右から放たれた一閃。

聖剣アーク聖槍デュナミスが、それぞれ強き光の尾を引きながら邪神の右腕を切り裂いたのだ。


「フェリシア!!」


 クラウスの言葉に呼応するようにフェリシアはさらに懐に入り込む。

そして、ついに邪神インペリオの眼前まで到達した。


「フェリシア!」

「魔王!!」


「「やれ!!!」」


 勇者と英雄の叫びを受けた魔王は、神器の力を宿した愛鎌デスサイズを一気に振り下ろした。

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