15話.謁見②

 聞き覚えのある声の主は、今回の謁見をお膳立てしたレムリア・オルレアンであった。

その声で若干の落ち着きを取り戻した3人が、ゆっくりと謁見の間へとを進めると、足が軽く沈むレッドカーペットが敷かれていた。


 その両側には数多くの騎士や貴族たちが整列しており、好奇に満ちた視線をアイオンたちに向けるのであった。

その中をゆっくりとした足取りで歩いた3人が王座の前で立ち止まっていると、一人の騎士が声をかけた。


「ルイン陛下の御前である、膝を突け!」


その声にはっとした3人は慌てて膝を突き、頭を下げた。


「本日は謁見の機会を頂きありがとうございます。」


「頭をあげよ。

 改めて名乗ろう、ワシが国王のルイン・シトラスじゃ。

 レムリアより多大な功績をあげた優秀な若者がいると聞いてな、興味が沸いて会ってみたくなったわけじゃ。

 そなたらがユグドラシル様の使いであると聞いておるが、それはまことか?」


 ルイン王の言葉は、謁見の間をザワつかせるには十分すぎる内容であった。

それまで以上に好奇に満ちた視線が注がれる中、3人はそれを証明する方法に迷っていた。


「お三方、緊張されるのはわかりますが落ち着いてください。

 先日私にしてくださったように、陛下にもあの武器をお見せください」


 普段とは違う丁重な口調のレムリアに不気味さを感じながらも、その言葉に促されるうながされるまま3人は、聖なる武器を顕現させた。

突然目の前に現れたことやそれらが放つ神々しさに、その場に居合わせた全ての者が目を奪われ、そして先ほどまで以上にザワつくのだった。


「静粛に!」


 レムリアの声が謁見の間に響き渡ると、ザワついていた声も静まり、みなの視線が集中した。


「陛下、彼らはユグドラシル様より聖なる武器を賜りたまわり、その時に授かったさずかった神託を達成するために王都まで来たそうです。

 その道中で、難解な事件を2件も立て続けに解決しております。

 わたくし、レムリア・オルレアンはこの場で陛下に進言致します。

 この勇敢なる若者たちに勇者の称号をお与えになっては如何でしょうか?」


 レムリアの進言は、謁見の間をさらにザワつかせた。

何故ならシトラス王国にとって、勇者という称号は王国を建国した初代の王のみが名乗ったとされている特別なものであったからである。


「うむ……

 ユグドラシル様から神託を授かり、そのために行動している。

 さらに、難解な事件を解決したという3名に称号を与えるのは問題ない。

 しかし、勇者が3人もいるというのは問題じゃな」


「では、高貴な雰囲気をまとうアイオン殿が勇者。

 荒々しい力強さをまとうクラウス殿が英雄。

 多数の大魔術を操るファウスト殿が大魔術師。

 3人にそれぞれに違う称号を授けては如何でしょうか?」


「うむ、良き案であるな。

 シトラス王国国王ルイン・シトラスの名のもとに、この3名に称号を与える。

 勇者アイオン。

 英雄クラウス。

 大魔術師ファウスト。

 これより我が王国はおぬしら3名をユグドラシル様の御使いみつかいとして認定し、それぞれに称号を授ける。

 今後我が王国は3名への支援を惜しまないことを約束しよう。

 それでは謁見はこれまでじゃ、解散せよ」


 謁見の間のザワつきは一層増し、軽い混乱状態になっていた。


「まさか勇者の称号だけではなく……」

「英雄の称号だと?!」

「ユグドラシル様の使いとはいえそんなっ!」

「英雄や大魔術師も……」


 勇者だけでなく、王国にとって特別な称号である英雄と大魔術師も彼らに授けられることが驚きであった。

その昔、勇者が王国を建国する際に彼を支えた二人が英雄と大魔術師と呼ばれていたからである。


 現在の国王が初代国王とその仲間が持っていた称号を与えた若者たち。

この場にいる者たちで彼らに関心を持たないものはいなかった。

いつ誰から声をかけるべきかを牽制し合っている中、レムリアがアイオンたちをこっそりと応接室へと連れ出した。


「彼らに捕まると君たちも色々面倒だろう。

 そこの裏口から出て一旦うちの屋敷に避難するといい」


 レムリアはそれだけを言い残すと、応接室を後にした。

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